第三章: 秘密の書物
ケイとリア、仲間たちは、図書館の奥深くに進んだ。そこには、時代に埋もれた、埃まみれの書物が山のように積み上げられていた。彼らは、その中から、彼が残したという秘密の書物を探し出そうとしていた。
彼らは、この世に災厄をもたらしたとされる、科学者たちの子孫であった。
「反逆の科学者」
その名で呼ばれ、追われ、殺され、焼かれ、切り裂かれた。家や、研究所は火の海に沈み、灰となり、彼らは、処刑され、根絶やしにされた。反逆の科学者達は、歴史上の異端者だったとして、人々は、悪魔の象徴のように恐れられていた。
「我々は、誰一人として生き残れないかもしれない。」
科学者たちは、隠れ家である洞窟に集まっていた。
ランプの灯りが、彼らの顔を照らしていた。その中には、赤ん坊を抱いた女性もいた。
言葉を発したのは、科学者たちのリーダー的存在である、ゼンと呼ばれる人物であった。
ゼンは、科学者たちの中でも一目置かれる存在で、知識、発想力、技術力は、他の誰よりも、秀でていて、他の科学者達が、悩んだりしていると、ゼンに聞けばすべて解決すると、アドバイスを求めるような存在だった。
「みな、我々が、絶えたとしても、いつか、我々の研究の成果を、一冊の書にして、後世へと、託そうじゃないか」ゼンの言葉は、洞窟内に反響した。
「で、どうする、ゼンさん、ここが見つかるのも、時間の問題だ、こんな、みんなの知識を、書にまとめるなんて、時間が掛かりすぎるのではないかな。」
「問題ない、私が、皆の知識を吸収して、一冊の書にまとめる。皆のやってきた研究は、大体、把握している。だが、少しわからない事があるから、これから、皆に質問していく。それで、私は、一冊の書物にまとめる事は、一日あればできる。」
皆、いくら何でも、そんな事出来るわけないと思ったが、いや、ゼンさんなら出来るなと、思い返した。
ゼンは、それぞれに、質問した。
ゼンは、科学者たちの知識を、一人づつ、淡々と、聞いていった。全員聞き終えると、彼は目を閉じて深呼吸をした。そして、万年筆を胸のポケットから取り出すと、既に用意していた山積みの紙に、一字一句、抜かりなく書き綴っていった。そして、一冊の書物が完成した。
「これかな?」リアがささやいた。彼女は、本の山から、一冊を引っ張り出した。彼女は、その本を開いてみた。中身は教会の宣伝が、びっしり書かれていた。彼女は、見るやいなや、その本を放り投げた。
「分からない。でも、絶対に目立たない場所にあるはずだ。教会に見つからないように隠したはずだからな」ケイが答えた。彼は、山のように積み重なった本の中に手を伸ばした。それは、詩集のような本だった。彼は、その本を開いてみたが、中身は教会の讃美歌を讃えたような本だった。彼は、本を閉じ、ため息をついた。
彼らは一冊一冊、埃を払い、表紙を確認し、ページをめくり、丹念に調べていった。しかし、どれもが、歴史書や文学書、哲学書のようだった。時間が経つにつれて、不安が彼らを襲ってきた。もしかしたら、本はすでに教会に持ち去られてしまったのかもしれない。あるいは、書物なんて最初から存在しなかったのかもしれない。
「諦めないで。絶対にあるはずだよ。彼は科学の真実を伝えたかったんだから。」リアはケイに励ましの言葉をかけた。彼女は、ケイの手を握り、彼の目を見つめた。彼女の瞳には、熱い思いが宿っていた。彼女は、科学の真実を知りたいという、強い願望を持っていた。彼女は、科学の真実を知れば、魔法に苦しむ人々を救えると信じていた。
ケイは、リアの燃えるような眼差しを見て、力が湧いてきた。彼は、もう一度、書物を探し始めた。そして、ふと、一冊の本が目に留まった。それは、表紙もタイトルもなく、ただ黒い布で覆われた本だった。ケイは、その本を手に取り、布をめくってみた。すると、彼の先祖の名前と、彼の書いた科学の公式が刻まれていた。
「リア、見ろ。これだ。これがその書物だ」ケイが声を上げた。
「本当?。本当に見つけたの?」リアが驚きと興奮で駆け寄ってきた。
「うん、これだ。これが、我々が求めていた科学の真実なんだ」ケイが嬉しそうに言った。
彼は、本を開き、中身を見た。そこには、彼が知らなかった科学の法則や秘密が書かれていた。重力の法則や電気の原理、化学の反応や生物の進化、そして宇宙の構造や時間の性質に関する驚くべき事実が、彼の独自の言葉で語られていた。彼は、目を輝かせて、その本を読み始めた。それは、彼らにとって、新しい世界への扉だった。
ケイは、本の中の公式を見て、心の中で唱えた。
F=ma
それは、物体の質量と加速度に比例する力の大きさを表す公式だった。しかし、彼は、この公式が現実のものとは違っていることに気づいた。なぜなら、この公式には、もう一つの項が加えられていたからだ。彼は、この公式がどのように物体の運動を説明するのか、理解しようとした。
リアは、本の中の図を見て、感嘆した。それは、電気が流れる回路の模式図だった。しかし、彼女は、この回路が現実のものとは違っていることに気づいた。なぜなら、この回路には、特殊な装置むことによって、膨大なエネルギーを発生させられるからだ。彼女は、この回路がどのように電気を生成するのか、想像しようとした。
彼らは、本の中の科学の真実に触れ、その真実を受け入れる決意を固めた。科学者の子孫として、彼らはその遺志を継ぐと誓った。教会の支配に立ち向かうと。
反逆の科学者 星の知識戦 藍春希 @hisyoukei
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