第42話 保留中

仕事上、日々イロイロな会社さんに電話をかける。


大抵の場合、連絡をとりたい相手がいきなり電話口に出るコトはまれで、わたしは使い慣れないビジネス口調で呼び出しをお願いする。





その時にかかる保留メロディは、当たり前のコトながら会社毎で違う。


「峠の我が家」がかかる会社もあれば、プーップーッという無粋な電子音が連続する会社もあったり。





とある会社さんに電話をかけた時にかかる保留メロディが結構気になっている。


そのメロは、保留用にしてはやけにもの悲しい旋律で、待っている間にほんのり悲しい気分になってくるの。





残念ながらわたしは知らない曲で曲名が判らない。





一人黄昏れていると電話口に相手が登場し、「どうもお疲れ様です、お待たせしました」と明るい声に取って代わる。





その声を合図にこちらも現実に引き戻されて、「お時間頂戴してすみません、実はですね…」と切り出す頃には哀メロのコトは気分の上でうやむやになっている。





時々は余韻を引きずってるけど、「ところで、御社の保留音のメロディって、なんていう曲なんですか?」とは聴けず、もやもやしたまま今に至る。





保留メロディは明るい曲にしてもらえると、その後の会話がスムーズに始められるんじゃないかなぁなんて思うのは、考え過ぎかな。





とりあえず、あのメロディはなんていう曲なのか気になるな。


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つづく

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