ご主人様とお嬢様
「小泉さんと榎本さんお疲れ様ー!そろそろあがっていいよー」
しばらく接客したあとクラスメイトに呼ばれる。
俺たちは実行委員の仕事もあるので短めにしてもらっておりこれでクラスでの仕事は終了だ。
もっとも実行委員の仕事と言っても会長に頼まれた衣装コンテストにコスプレで出るだけだ。
うん……だけとか言えるほど軽くなかったわ。
とりあえずクラスの人に接客を変わってもらい俺と綾香は下がる。
「思ったよりも楽しかったな……」
「達也くんすごく様になってたよ。お客さんも喜んでたね」
「あはは……そうだといいけど」
実は接客中に客に頼まれて何回か写真を撮られた。
コスプレを撮られるのは正直恥ずかしいけど後で大勢の晒し者になるんだからもう諦めて素直に撮られることにした。
ちなみに綾香も大人気で俺と同じような理由で諦めたのか営業スマイルで写真に撮られていた。
「それじゃあ綾香。着替えたら教室前で集合しようか」
「あ、うん。分かった」
そう約束し更衣室に向かおうとする───が
「せっかくならその格好のままでもいいかな?二人ともかっこいいし可愛いからすごく宣伝になるんだよね〜」
長谷川がとんでも発言をぶっこんできた。
流石に着ながらってのはよろしくないんじゃないですかねぇ!?
でも今なら
「それに二人とも忙しくてお互いの格好よく見れてないでしょ?一石二鳥じゃん」
た、確かに……!
この激レアで超可愛い綾香の姿を簡単に手放すのはあまりにももったいない気がする。
ならばここは一択だ──!
「分かったこのまま行くよ」
「達也くん!?」
「ごめん。お願いしてもいいかな」
「……分かった」
綾香の目に
もはやどうにでもなれってことなのだろう。
なにはともあれこれで綾香のメイド姿は守られた。
「それじゃあ行こうか」
「うん」
二人並んで生徒たちの熱気に包まれた校舎を歩き始めた───
◇◆◇
「衣装コンテストは1時間後くらいまでに体育館にいれば遅刻はしないはずだよ」
「思ったよりも時間無いんだね。お腹空いたし何か食べようか」
「いいね。私も何か食べたいかも」
ということで俺たちは近くにあったクレープを出しているクラスに行くことにした。
聞いてみたらなんとクリームを少なめでも作ってくれるそうで俺は喜んでバナナにチョコソースをかけたクレープを買った。
ちなみに綾香はいちごに生クリームをたっぷりかけたクレープを満面の笑顔で注文していた。
本当にスイーツが好きなんだな。
「それじゃあ食べようか」
「賛成!」
いただきますと言ってから早速一口。
やはりチョコとバナナの相性は非常に良いし抑えられた生クリームも良い感じに甘みを足してくれている。
端的に言うなら美味い。
「ん〜!美味しい〜!」
綾香も大満足のようだ。
緩みきった口が言葉以上に幸せを物語っている。
しばらく美味しそうに食べている綾香を見ているとふと目が合う。
すると綾香は少しだけ顔を俯け遠慮がちにクレープを差し出してくる。
「ひ、一口食べる?」
「!?」
そ、それって間接キスってやつなんじゃ……
だけど相当勇気を振り絞って言ってくれてるだろうから簡単にいりませんなんてことは言えない。
「そ、それじゃあいただくよ……」
「あーやっぱりちょっと待って!」
食べようとした瞬間綾香の手が引っ込められる。
え?
これ俺はからかわれた感じなのかな?
俺が勘違い野郎でないことを祈ってると綾香は顔を真っ赤にして再びクレープを差し出してきた。
「く、クレープはいかがですか?ご主人様……」
言ってて途中で恥ずかしくなったのか最後の方はあまり聞き取れなかった。
けど!
めちゃくちゃ良かった……!
綾香の口からご主人様なんて破壊力が高すぎる!
「お、おう……」
一口貰ったけど心臓がバクバクしすぎて味は全く分からなかった。
ただ綾香がやってくれたんだから俺もやらない手はないよな?
「それでは私のも一口どうぞ。綾香お嬢様」
自分の持ってるバナナクレープを恭しく差し出す。
綾香も目に見えて真っ赤になった。
俺も負けず劣らず真っ赤だろうけど……
「い、いただきます……」
意を決したように綾香は俺のクレープを一口食べる。
「ふふふ……美味しいです」
その笑顔は今日一番眩しくて三秒くらい見惚れてしまった。
それから俺たちは一時間という短い時間を楽しみ体育館へと向かった───
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『親から一軒家を貰ったので婚活を始めようとしたら幼馴染が立候補したので結婚して人生勝ち組!』
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