メイドさんと執事さんの接客
いよいよ迎えた学園祭当日。
朝早くに登校して最終チェックを終えた俺たちはクラスの真ん中で全員集まっていた。
いわゆる円陣というやつで肩は組んでないけどきれいに円を作り長谷川の話を聞いている。
「あっという間だったけどいよいよ当日だね!最後の言葉は今までみんなのために頑張ってくれた綾と小泉くんに任せるね」
クラス委員長としてそのまま長谷川が締めくくるのかと思ったけど俺たちにパスが飛んできた。
アイコンタクトを交わし綾香が頷いたので最初に話すのを綾香に任せる。
「皆さんのおかげで無事に準備を終えることができました。本当にありがとうございました」
いろんなところから拍手が巻き起こる。
そしてトリだからかえげつない数の期待を込めた視線が俺に突き刺さる。
こ、これは無難で面白くないこと言ったら場がめちゃくちゃ盛り下がるタイプの空気だ……!
俺が取れる選択肢は3つ……!
1つ目は空気を恐れず真面目で面白くないことを言う。
だが俺はそんな鋼のメンタルを持ち合わせていないからこれは却下だ。
2つ目はギャグなど面白おかしく場を和ませつつ盛り上げる方法。
だが俺に人を笑わせるセンスは無いからこれも却下だ。
となれば俺に残された道は一つ!
それは───
「みんな学園祭を楽しんでいこうぜぇぇぇぇ!!!!」
熱意でゴリ押し作戦しかない!
こういうThe青春みたいな場ならこういうノリで大丈夫なはずだ!
「「「お、おぉぉぉぉ……!」」」
どちらかと言うと驚きの様子が強かった気がするが場は盛り下がっていないことは間違いない。
やっぱり俺の選択は間違ってなかったんだ!
◇◆◇
チャイムと共に始まった学園祭。
俺は更衣室にて優に髪をセットしてもらっていた。
「全く……早く着替えろって言ったのに」
「ごめんって……」
円陣のあと色々盛り上がってしまい着替えるのが遅れてしまった。
その結果学園祭の始まるタイミングに実行委員が間に合わないなんとも締まらない結果になってしまったのだ。
「さぁできたぞ。榎本さんやクラスメイトに見せつけてこい!」
「ありがとう!行ってくるよ!」
髪をセットしてもらった俺はすぐに教室へ向かう。
もう接客が始まってしまっていてもおかしくない時間帯だ。
そんな中遅刻なんて本当に申し訳ない。
「みんな遅れてごめん。俺も今から接客入るよ」
「小泉くん帰ってき……えっ!?」
近くにいた女子のクラスメイトが俺を見て固まる。
心なしか顔も赤くなっているようだ。
「えーっと……似合ってない?」
「に、似合ってるよ!それじゃあ小泉くん接客入ってくれない?」
「任せてくれ。早速行ってくるよ」
厨房係の人たちに軽く挨拶をしてから接客に向かう。
そして一番に目に飛び込んできたのは───
(か、可愛い……!)
綾香のメイド服姿だった。
コスプレなはずなのにもはやメイド服とは綾香のために存在しているのではないかと思うほど可愛らしい。
お金も払うし養うから本当にメイドになって欲しいとさえ思う。
個人的にはメイド特有のあのカチューシャのポイントが高い。
しかし綾香にしばらく夢中になっていて遅れたがここであることに気付く。
なんかめちゃくちゃ迷惑客に絡まれてね!?
どうやら何度断ってもしつこく話しかけられているようだ。
居ても立っても居られなくなった俺はすぐに近づき綾香の肩を引き寄せる。
「た、達也くん……!?」
「すみませんお客様。うちの可愛いメイドさんが嫌がってますので。よろしければ俺がお話を伺いますよ?」
綾香の肩を引き寄せたまま接客スマイルを貼り付け対応する。
相手は観念してくれたのか注文したものを食べてそそくさと出ていった。
「ふぅ……大丈夫だった?」
「え……う、うん大丈夫だよ!助けてくれてありがとう」
綾香は一瞬呆けたように口を開けていたがすぐに笑顔になってくれた。
そこで自分が綾香を抱きしめるような形になっていたことに気づき慌てて離す。
ともかく笑顔に戻ったのなら良かった。
「それじゃあ接客に戻ろうか。達也くん接客の仕方分かる?」
「まぁなんとかなると思う。頭には詰め込んである」
「そっか。じゃあ頼りにしてるね」
それからは綾香のことを気にする暇もなく働く。
コスプレが珍しいのか思ったより人が集まっていたのだ。
そして数時間後……
「小泉さんと榎本さんお疲れ様ー!そろそろあがっていいよー」
業務の終了がクラスメイトから伝えられる。
さぁ……いよいよ学園祭デートの時間だ……!
─────────
明日より新しく『親から一軒家を貰ったので婚活を始めようとしたら幼馴染が立候補したので結婚して人生勝ち組!』の連載を開始します!
よかったら読んでいただけると嬉しいです!
今後もこの作品をよろしくお願いします!
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