クラス準備
学園祭を数日後に控えた今日このごろ。
達也たちのクラスでは喫茶店の準備が始まっていた。
「その飾りは向こう持っていってー!」
こういうのはあまり得意じゃないが実行委員としての務めは果たさなければ……
「小泉くん!これどこに持っていけばいいかな?」
「小泉〜!こっちの材料が少し足りないかも」
「それは優の方に持っていってくれ。材料は今から買い出し班に連絡すればまだ間に合うからリストアップして電話で伝えてくれ」
次から次へと質問が飛んでくる。
慣れないことだが優も長谷川も積極的にサポートしてくれてなんとか上手くいっている状態だ。
いつも一人でクラスをまとめ上げている長谷川の凄さを痛感した。
「みんな!昼まであと少しだからきりのいいところまで仕上げてくれ!終わり次第昼休憩に入ってくれて構わない!」
予定通り当日までには余裕を持って準備が完了しそうだ。
みんなのやる気も充分だし積極的に参加してくれてるおかげで順調だ。
15分後にはもうみんなそれぞれ弁当を広げ準備中とはまた違った喧騒に満ちていた。
それを見届けて俺たちもいつもの四人で机を囲み弁当を広げる。
「やっぱり学園祭の準備って楽しいよね〜!」
「それな。当日より準備のほうが楽しいかもしれない」
「まぁそれは人によるんじゃないかな」
話題もタイムリーに学園祭のことばかりだ。
……実行委員が二人いるというのも影響しているのかもしれないが。
とりとめのない話をしながら弁当を食べていると突然クラスの女子から話しかけられる。
「小泉くん、榎本さん。例のあれ、届いたみたいだよ」
「あー届いたのか。教えてくれてありがとう」
「う……私から言ったはずなのになんか恥ずかしくなってきたかも……」
例の、とは俺と綾香が着る予定のあれだ。
レンタルショップに頼んでいたのが届いたらしい。
後ろで男子が二人ダンボールを1つずつ抱えて立っていた。
そのダンボールを受け取り礼を言う。
「なぁ、せっかくだしここで着てみろよ」
「え?」
「いいね〜!面白そう」
優と長谷川にもうここで着ろと言われる。
確かに多少のチェックは必要かもしれないが今クラスメイトの視線が集まるなか着るなんて拷問の一種なのかな?
「いや、流石にそれは遠慮したいかな……」
「私も達也くんの執事姿を見るのは当日までとっておきたいかな」
なにその可愛らしい理由。
でも俺も楽しみは後に残しておきたいかも。
綾香のメイド服姿なんて絶対に似合うに決まってる。
どんな仕上がりになるのか楽しみでしょうがない。
「なら俺だけ見せてくれよ」
「お前ってそういう趣味だっけ?」
「違うわ!いいから服持って着いてこいって!」
優に引っ張られいつも体育などで使っている更衣室まで連れて行かれる。
「随分無理やりだなぁ。俺にどうしろと?」
「いいから着てみろって」
優に言われ渋々着替え始める。
借りたものなのでそう簡単に壊れないと分かっていても慎重に着る。
着替え終わったので鏡で自分の格好を確認するとよく漫画やアニメで出てくるようなイメージの服そのままだった。
「へぇ、似合ってんじゃん。これなら榎本さんも喜んでくれるよ」
「その感想はありがたいけどまさかそのためだけに連れてきたの?」
「んなわけないだろ。その服装に似合う髪型を考えてやるって話だ」
優の口から出たのは本当にありがたい提案だった。
俺は服装には多少だけ知識があるものの髪は寝癖がついていたり不潔でなければなんでもいいと思っているタイプだ。
しかし優はその点も抜かり無くよく知っているし告白を考えているのだから本当にありがたい。
「ありがとう。頼むよ」
「任せとけって」
優は俺の周りをくるくる回っては考え込み回っては考え込みを繰り返す。
真剣に考えてくれているということが分かって嬉しくなる。
「まぁなんとなくは決まったよ。当日の朝にセットしてやるから朝早めに着替えてくれ」
「分かった」
「それで話は変わるが……ちゃんと榎本さん誘えたか?」
その言葉にはっとなる。
しまった……
今まで実行委員の仕事が忙しすぎてすっかり忘れてた……
「はぁ……なにやってんだか。ちゃんと誘っとけよ」
「ああ。すぐにでも誘ってみせるさ」
達也は綾香を誘い忘れるという痛恨のミスを優のお陰でギリギリ思い出したのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます