会長の本性と悪魔の誘い
何故かメイド服と執事服の申請が通った数日後。
各クラスの実行委員が集まる委員会が行われていた。
「実行委員長を務める3−1の鈴木です。皆さんこれから学園祭が終わるまでよろしくお願いします」
この学校ではクラスごとに実行委員を二名ずつ選抜するが基本的に実行委員長は生徒会長が務める。
他の生徒会メンバーは基本的に普通の実行委員と同じ扱いだ。
順々にメンバーの自己紹介が進んで行く。
「2−3の小泉達也です。至らないところもあるかと思いますがよろしくお願いします」
「同じく2−3の榎本綾香です。精一杯務めさせて頂きますのでこれからよろしくお願いします」
俺も綾香も特にスピーチが得意というわけでもないので無難な挨拶でその場をしのぐ。
三年生は慣れた様子で、一年生は高校生になったばかりだからか活きが良かった。
「さて、自己紹介はこのくらいにしておきましょう。これからの方針を説明します───」
つまらない話だが仕事なので一応頭に入れていく。
横の綾香をちらりとみると何かをメモ帳に書いていた。
(なに書いてるの?)
(これからの方針を一応ね。みんなの代表だから頑張らないと)
正直可愛らしい落書きとかも期待してたけど帰ってきたのは至って真面目な返答だった。
綾香ばかりに負担をかけるわけにはいかないので俺も心を入れ替え真剣に話を聞き始める。
話を聞き始めたらあっという間に話が終わった。
……まぁほとんど綾香を見ていたという言い方もできるが。
「これで話は終わりなので解散です。あと、二年の小泉さんと榎本さんは残って下さい」
せ、生徒会長直々に呼び出しだと……?
何も悪いことしてないんですけど!?
横にいる綾香にアイコンタクトを送るが綾香にも心当たりは無いらしく首を横に振る。
次々と生徒たちが退出し教室には鈴木先輩と俺たちだけになる。
「あのー……なぜ俺たちに残るように言ったんですか?」
「それは単純よ。あなた達に言いたいことがあるから」
言いたいこと!?
余計に怖くなってきたんですけど……!
心なしか会長の目つきも鋭くなっているような……
「まずはあなた達に聞くわ」
ごくりと唾を飲み込み会長の次の言葉を待つ。
「単刀直入に、メイド服と執事服を着るって本当?」
「「え!?」」
会長の言葉は思いもよらないことだった。
まだ数日しか経ってないのにもうバレてるんですか!?
「ほ、本当です……」
着ることは事実なので否定はしない。
でもなぜ今そんなことを聞くんだ?
「そうなのね、なら衣装コンテストに出てみない?」
「「衣装コンテスト?」」
聞き馴染みのない単語だ。
去年は少なくともそんなことはやってなかった。
「今年から家庭科部の出し物としてやりたいって申請があって開催することになったのよ」
「それはまたすごいですね……」
「で、あなた達にも出てほしいのよ」
うん、全然意味が分からないんだけど。
どうしてそこから俺たちの話になった?
「あのーなんでそれで俺たちに?」
「決まってるじゃない。コスプレ味がある人が混ざっていたほうが面白みがあるじゃない」
理由が最悪すぎる。
俺たちを生贄に会場を盛り上げようって話じゃねぇか。
「あと私個人のお願いでもあるわ」
「会長のお願い?」
「何か理由でもあるんですか?」
会長のお願いという単語に少し興味をもった。
ただそれが地雷だとも知らずに……
「だって執事×メイドのカップリングなんて最高じゃない!」
………………はい?
「あなた達は二人とも顔がいいし絶対に良い画になるわ!」
真面目そうな会長の本性を知ってしまい呆然とする。
しかもカップル設定でコンテストに出るなんて無理に決まってるだろ。
「すみません。お断りします」
「もし引き受けてくれるなら屋上をあなた達だけに開放するよう先生に頼んでもいいわ」
お、屋上だと!?
それは昔から語り継がれる伝説の告白スポットじゃねぇか!
残念ながら数年前に封鎖されてしまったらしいがそこに入っていいだって!?
猛烈にやりたい欲が湧いてきた。
「会長、俺は別に構いませんよ」
「じゃあ……」
「でも綾香の意見を聞いてからです。綾香が嫌だと言ったらお断りさせて頂きます」
「……どう?榎本さん」
会長に問いかけられ綾香は悩む素振りを見せる。
そして───
「恥ずかしいけど良いですよ。最初に着ようと達也くんを誘ったのは私なので」
その言葉に会長が喜びまくったのは言うまでもない。
徐々にえげつない方向に俺たちの学園祭が進んでいる気がしたが未来の俺に全て任せることにした。
まぁ綾香と恋人設定って嬉しいし別にいいよな!
後日、小泉家では悶える達也の姿が見られたとか。
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