出し物決めと服装

実行委員に選ばれてから一週間ほど経ったある日。

ついに達也と綾香は初仕事を迎えていた。

それは───クラスの出し物決めだった。


「それじゃあ今からクラスでどんな出し物をしようか決めたいと思います」

「とりあえず何でもいいのでどんどん案を出して下さい」


綾香と二人で前に立ってみんなの発案を促す。

出し物決めはこれから方針を決めていくうえで大切な柱だしクラスとしての学園祭の完成度も変わってくるから適当に選ぶことはできない。


「お化け屋敷はどうかな〜!」

「え〜食いもんのがよくね〜?」

「喫茶店とかやりたいかも〜」


思ったよりみんなやる気みたいで次々と案が飛び出す。

まとめるのは大変になるがみんなやる気がなく案が全く出ないよりは断然良い。

どう絞るか小声で綾香と相談する。


(案が結構出たからまずは大きく絞っていこうか)

(そうだね。分けられそう?)

(大丈夫だ)


「みんな!まずは大きく絞るために飲食かそれ以外がいいか聞くから自分がやりたい方に手を挙げてほしい」


交互に聞いていくと飲食系のほうが多かった。

まぁ学園祭といえばのイメージもあるしな。

話し合いはそのまま順調に進んでいき拍子抜けするほどあっさりと喫茶店に決まった。

ぶっちゃけ客に出す飲み物なんてスーパーとかに売ってるジュースに多少アレンジをする簡単なもので素人でも手を出しやすいしコスパも良いもんな。


「それじゃあ俺たちのクラスは喫茶店でいこう。何か質問がある人はいるかな?」

「ねえねえ小泉。服装とかってアレンジできないの?それこそメイド喫茶みたいにさ〜」


声の上がったほうを見ると例の小澤だった。

やけにグイグイ来るなぁ……


「服装は例年通り基本的には制服だ。あまり奇抜すぎなければ申請すれば通る可能性はあるけどメイド服は難しいかもな」

「それは分かってるって。でも少人数分だったら通る可能性あるんじゃないかな」

「む……」


小澤の言ってることは実際に前例があり何年か前にどうしても派手な衣装を着たかったらしい数人組が申請をしたところ人数制限ありで教育に悪くない格好ならと許されたことがあった。

そんなにメイドが大事なのか……?

気持ちは分からなくもないけど。


「分かった。申請するだけするけど誰が着るんだ?有志でも着たい人は少ないと思うけど」

「そうだね〜……だったらクラスの代表として実行委員の二人が着るのはどうかな?小泉が執事服で榎本さんがメイド服って感じで」

「「え?」」


……なぜそんなことになるんだ?

綾香も目を丸くして固まっている。

小澤が提案したはずなのにえげつない流れ弾が飛んできたんだが。


「そんなことできるわけないだろ。綾香だって嫌だと思うし……」


きっぱりと断ってくれることを期待して綾香を見る。

綾香はしばらく固まっていたものの頬を赤く染め口を開く。

さぁ断ってくれ……!


「私は達也くんが一緒なら……着てもいいよ(執事姿の達也くんを見たみたいし……)」


なんでそうなるんだ!?

小声で最後の方は聞き取れなかったがはっきりと着る決意表明をした。

綾香だって目立つのが好きなタイプじゃないのに着るのか!?

そしてテンパる頭にある一つの考えが浮かぶ。


ま、まさか綾香はみんなのために……?

学園祭を成功させるために頑張ろうとするなんて健気で可愛すぎるっ……!

それに比べて俺は……

綾香が着ると言ってるのに俺が断るなんてダサい真似は絶対にしたくない……!


「分かった。申請がもし仮に通ったら着るとしよう」


服装の件は解決し喫茶店の商品の話に移った。

クラスは一年ぶりの学園祭に向け熱心に話し合い盛り上がりと明るい雰囲気に包まれていた。

学園祭がどんどん現実味を帯びていった。


後日、執事服とメイド服を先生に申請したところ予想以上にあっさり通った。

冷静になった達也は綾香のメイド服見たさと自分が執事服を着なければならない羞恥に悶えまくったところ姉に『きもい』と怒られたんだとか。

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