スピーチ勝負
いよいよ迎えた六限目。
学園祭の実行委員を決めるべくクラス委員の長谷川が前に出て色々な説明をしていた。
「そんなわけで実行委員の仕事は大きく言えば打ち合わせ、準備段階でのクラスのまとめ役、当日の運営って感じかな」
絶対に綾香と一緒に実行委員をやるんだ……!
それで当日には……
「立候補制にしようと思うけど誰かやりたい人いる?まずは男子から聞こうかな」
「立候補させてくれ」
すかさず挙手し立候補する。
さぁ後は誰か他に立候補するかどうか……!
「あ、はーい!じゃあ俺も立候補するわ〜!」
なん……だと?
声が上がったほうを見るとおふざけ男子の筆頭、サッカー部の小澤だった。
ま、まぁスピーチで勝てばいいだけの話だ。
「男子は二人だけみたいだね。女子は誰かやりたい人いる?」
「はい。やりたいです」
綾香が早速挙手をする。
他には誰かいるのか……?
すると意外にも女子は綾香以外に誰も手を挙げなかった。
「おっけーそれじゃあ榎本さんは決定ね。それじゃあ男子の立候補してくれた二人には意気込みをスピーチしてもらおうかな。最初は出席番号順で小澤くんからいこうか」
長谷川は人前だと綾香を榎本さんって呼ぶんだな……
緊張を紛らわすためかのようにどうでもいいことを考えながら小澤のスピーチを聞く。
小澤は真面目に意気込みを語るというよりも少しふざけて笑いを交えながらスピーチをしていた。
笑いなんて一ミリも考えていなかった俺とは真逆のスピーチだな……
「そんなわけで俺は実行委員に立候補させていただきます!ご清聴ありがとうございました!」
「小澤くんありがと〜!それじゃあ次は小泉くんだね!どうぞ〜」
長谷川に招かれみんなの前に立つ。
思ったよりも緊張するな……
ふと綾香の方を見ると目が合ってニコリと笑いかけてくれる。
すっと緊張が少し軽くなった気がした。
「学園祭実行委員に立候補する小泉です───」
自分なりに考えたスローガンを愚直に伝える。
小澤のように笑いを取るなんてことはできないからとにかく真面目に、真剣に自分の思いを話す。
「以上が僕が学園祭実行委員に立候補させていただいた理由です。ご清聴ありがとうございました」
やりきった。
自分にできる限りのことはした。
パチパチ……
見ると綾香が笑顔で拍手していた。
それに呼応するように拍手が増えていく───
どうか選ばれますように……
◇◆◇
「それじゃあ投票の結果を確認するね。選ばれたのは……小泉くん!おめでとう、榎本さんと一緒にクラスのまとめ役は頼んだよ〜」
選……ばれた?
じわじわと喜びが溢れてくる。
「小泉くんおめでと〜!」
「学園祭は頼むぞ〜」
みんな口々にお祝いの言葉を伝えてくれる。
「負けたぜ……俺の代わりに頑張ってくれよ」
「あ、ああ」
小澤も祝いの言葉を伝えてくれる。
なんかムードに酔ってないか……?
まぁ嬉しいから何でもいいか。
「達也くんおめでとう。すっごくスピーチ良かったよ」
「あ、綾香。ありがとう、本当に選ばれて安心した」
綾香も笑顔でねぎらいに来てくれた。
「これから学園祭まで一緒に頑張ろうね」
「ああ、みんなの記憶に残るような良い学園祭を作ろう」
それこそ綾香の思い出に残ってくれるような、とは言わなかった。
ここまで来たらもう後は覚悟を決めるだけだ。
俺も目一杯綾香と一緒にいられる時間を大切にして楽しもう……!
◇◆◇
「よく選ばれたな。すげーじゃん」
「まぁな。スピーチを真面目に考えた甲斐があったよ」
あれでも小澤は男子から強い支持を受けていた。
クラスの半数以上が男子なわけだから意外と厳しい勝負だったわけだ。
「相変わらず女子ウケが良かったな〜!男子の真面目な奴らもお前に入れてたみたいだし」
「クソ真面目なスピーチをしたからな」
「ははっ!!違いない」
第一関門はなんとかクリアした。
後はなんとか綾香と学園祭を一緒に回る約束を取り付けなければ……!
「その様子なら頑張れそうだね。応援してるから気張れよ」
「おう」
これから始まるであろう忙しい日々に向け気合を入れる。
学園祭……楽しみだなぁ……!
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