決意

俺はどうすればいいんだ……


見知らぬ通りの人に勇気を打ち砕かれこれからどうすれば迷ってしまう。

このまま夕焼けのきれいな場所までついてきてもらうか?

それとも今日は諦めるか?

二つの気持ちが自分の中で揺れ動く。


「今日は楽しかったよ。本当にありがとね」

「え?あ、ああ。俺も楽しかったし俺に似合う服も選んでもらって本当にありがとう」

「ふふ、それを言うなら私もだよ」


そういって優しく綾香は微笑む。

もう一歩踏み込みたいと思う自分もいるしこの関係を壊したくない臆病な自分もいる。


「綾香は……どういう告白に憧れるの?」

「え!?随分急だね……うーん、そうだなぁ……ドラマチックな告白に憧れが無いとは言わないけど私は気持ちがしっかり伝わってきたらそれでもう最高の告白だと思うよ」


気持ちが伝わってきたら……か。


散々悩んだ末達也が導き出した答えは───


◇◆◇


「それで逃げ帰ってきたの?」

「う……そうだよ。好きなだけ臆病な俺を笑ってくれ」


綾香とのデートの翌日、俺はデートの結果報告するために優に呼び出されていた。

告白がこんなにも怖くて勇気がいることだったと昨日初めて知った。

世の恋人たちはこれを乗り越えてるんだと思うと素直に尊敬する。


「通りすがりの言葉ねぇ。正直告白までのデートの回数は人それぞれの価値観があるし一概に脈なしとは言えないと思うけどね」

「だからこそ余計分からなくなってるんじゃないか……」


今思うと名前呼びを許してくれたことも服を選んでくれたことも親しい友達扱いなんじゃないかと思えてくる。

……親しい友達と思われているならばそれはそれで嬉しいが。

考えれば考えるほど分からなくなってくる。

人間関係って本当に難しい……


「じゃあ達也。一つここは腹を括れ」

「……?」


優はいつになく真剣な顔つきになる。

何かやらせる気なのだろうか。


「学園祭の日に榎本さんに告れ」

「え!?」


学園祭の日に告れだって!?

なんでいきなり優がそんなことを……?


「でも綾香が俺のことをどう思ってるかなんて……」

「どんなに仲良くなろうとも言葉でお互い伝えなきゃ気持ちなんて分かりっこないんだよ。そんな中で相手と向き合っていくしかないんだ」

「でも……」

「このまま行くとズルズル毎回先延ばしにし続けて告白すらできず高校生活終了だよ。それでもいいのか?」

「…!!」


そうだ。

俺は臆病だ。

でもだからといって逃げることが許されたわけじゃない。

いつかは自分の気持ちとしっかり向き合わないといけないときが来るんだ。

それが今かどうかは俺にも分からないけど俺の中に恋心があるのは紛れもない事実だ。

なら後悔の無いようにしないと人生もったいないじゃないか。


「分かった……!やるよ」

「それでこそ達也だ」


俺という一人の人間を認めてくれた綾香に感謝も伝えたい。

元々俺は恋愛初心者なんだ。

悩んで当然。

全力を尽くしてやってやろうじゃないか。


そして告白の結果に関わらず何年後かに思い出して、笑顔でこう言うんだ。


『俺は綾香を好きになれてよかった』って。



───────

短くて本当にごめんなさい!

次から学園祭準備編に突入するつもりですのでそちらを少し長めに書いて釣り合いを取りたいと思います!

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