映画デート

「それで、今日はどこに行くの?」


隣にいる綾香が聞いてくる。

今日のデートプランは俺に任せてもらったため綾香は予定を知らない。


「まずは映画から行こうかなって思ってるよ」

「いいね。映画なんて久しく行ってないかも」


映画なんて王道すぎて面白くないと思われるかもしれないが俺も綾香もデート初心者なのだから男女で行き慣れているなんてことは絶対に無い。

しかもちょうどこの時期に綾香が気になっている恋愛映画が放映されており、まだ観ていないことも長谷川から聞いてある。

しかもチケットは予約してあるので確実に見れる。

我ながら完璧な計画だ。

雑談しているうちに映画館に到着する。


「何を観るの?」

「最近話題のこの恋愛映画だよ。チケット予約しておいた」

「あ、これ。この映画気になっててずっと観たかったんだ。ありがとう」

「それは良かった。じゃあ早速入ろうと言いたいところだけど綾香は何か買ってく?」


俺が指を指した先にあったのは売店。

俺はいつもジュースくらいしか買わないのだが綾香はどうするんだろうか。


「ポップコーン食べたいけどお昼ご飯が食べられなくなりそうなんだよね……そうだ!達也くんさえ良かったらシェアしない?」

「別に大丈夫だよ」


二人で売店に並びジュースとポップコーンを買う。

ポップコーンの味は綾香にお任せしたらバター醤油を頼んでいた。

綾香いわく、ジュースが甘いからしょっぱい味が食べたくない?とのこと。

全くもって同感だけど。

そして俺達はジュースとポップコーンを持って移動し映画を楽しんだ。


◇◆◇


「うっ……グスッ……」

「だ、大丈夫?ハンカチ貸そうか?」

「感動しだぁ……!」


俺は今、絶賛大号泣中だった。

女性ウケの良い映画だったから適度に映画を見ながら綾香の反応でも見ていようかなと思ったら良い話すぎて泣いてしまった。

俺こういうのに弱いんだよ……

だが今はデート中だ。

泣いてばかりではいられないので涙を自分のハンカチで拭き心の中でいつかもう一回観に行くことを決心し切り替える。


「さて、もうお昼どきを少し過ぎたくらいだし空いてると思うから昼食をとろうか」

「随分切り替えが早いね……お昼はどこで食べるの?」

「どこか食べたいものはある?無かったら良さそうな店を調べてあるから案内するけど」

「それなら達也くんが調べてくれたところに行きたいな」

「よしきた」


俺が選んだのは映画館から徒歩10分ほどの場所にあるおしゃれなカフェだ。

あまり知られていなくて穴場のカフェでこの店を知るのに調べ始めてから2時間かかった。

スマホで道を調べながら進んでいくと確かに分かりづらい場所にカフェがあった。


「わぁ……!すごくおしゃれで可愛いお店だね」

「そう言ってくれると調べた甲斐があるよ。外と中があるけどどっちで食べる?」

「うーん、じゃあ店内で」


俺達は店内に入っていき二人席を確保し向かい合って座る。

俺はコーヒーとたまごサンドを、綾香はコーヒーとフルーツサンドを注文した。


「綾香は甘いもの好きなの?」


祭りのときも綿あめを美味しそうに食べていたし気になって聞いてみた。

すると綾香は恥ずかしそうに少し目を伏せる。


「うん……休日とかは話題のスイーツ巡りとかしてるんだ」

「それはすごく楽しそうだね。あ、おすすめのコーヒーとか知らない?綾香がおすすめするお店行ってみたいかも」

「分かった。口だと説明しづらいから後でメールで送っておくね」

「ありがとう!」


話が一段落したちょうどいいタイミングで注文したものが届いた。

写真よりも美味そうだな……


「「いただきます」」


早速一口いただく。

これめっちゃ美味しい!

綾香の方を見ると目を輝かせてフルーツサンドを食べていた。

……可愛い。


◇◆◇


「美味しかった!良いお店に連れて行ってくれてありがとう。達也くん!」


食べ終わって店を出る頃には綾香はすっかり上機嫌だ。

笑顔も増えてすごく可愛い。


「綾香はすごく美味しそうに食べるよね」

「え?そうかな……?」


まさかの自覚なし……?

あんなにニッコニコの笑顔で食べてるのに。


「うん。見ている方も幸せになってくるよ」

「ふふ、ありがとう。それで午後はどこに行くの?」

「午後は買い物とかどうかなって思うんだけど……」


優からあらかじめ言われていた。

買い物嫌いの女子は少ないから気力があるならプランに入れておけ、と。

榎本もプライベートで初めて出会った場所がショッピングモールであった以上買い物が嫌いということはないはず……!


「いいね。達也くんと一緒にお買い物なんて楽しそう」


よかった……

そう安堵したその時───


「あれ?達也じゃない」


やけに聞き馴染みのある声が後ろから聞こえてきた。

正体は分かっていて恐る恐る振り返る。


「姉さん……」

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