花火の後の公園で
花火はあっという間に終わってしまった。
最初は花火の美しさに感動したものだが途中で自分の気持ちに気づいてから花火どころではなくなってチラチラと榎本の様子を確認していた。
榎本にしては珍しく子供のような無邪気でキラキラとした目がずっと頭に残って離れない。
「いやーきれいな花火だったね〜!綾は子供のときから花火大好きだから楽しかったでしょ?」
「うん……すごく綺麗だった……」
榎本は昔から花火が好きだったのか。
来年もまた一緒に行けたらいいなぁ……
でもさっき榎本から射的の次の勝負に誘われたから来年も行けるかもしれない。
榎本をはっきりと異性と意識してしまったから行けるなら彼氏彼女で行けたらいいんだけどね。
「屋台もそろそろ撤収するだろうし私達も帰ろうか」
「そうだね……と同意したいところだけど今は祭り帰りの人で溢れかえっている。人混みは危ないし少し時間を潰してから帰らない?」
人混みは満員電車は普通に危ないし痴漢などの危険性もある。
それに俺はまだ榎本と一緒にいたい。
これは実に合理的な判断だよね?
「うーん、でもどこで時間を潰すの?多分近くのお店は埋まっちゃってるよ?」
「近くの公園とかどうかな?虫除けスプレー持ってるから虫は大丈夫だと思うけど」
「お金もかからないし少し時間を潰すくらいだからちょうどいいかもね。じゃあ公園に移動しよ〜!」
どうやら俺の提案は受け入れられたみたいでホッとする。
スマホで少し調べてみると近くに小さな公園があるみたいだ。
若干駅への道とも逸れているから人はいないと思うけど……
俺達は早速公園に移動したが先客はいなかった。
「おお〜!地図で見るよりも広いね〜!」
「本当だな……」
「あ、服部くん!久しぶりにブランコやろうよ!」
「ブランコ!?おいちょっと!」
最近見慣れたが長谷川が優を引っ張っていく。
長谷川にとって優はおもちゃみたいなものなんだろう。
俺は自販機で飲み物を2本買いベンチで座っている榎本の下へ近づき一本手渡す。
「榎本さん、今日はありがとうね」
「ありがとう。でもこの前ももらっちゃったし今日は払わせて」
「え?別にいいのに」
「金の切れ目は縁の切れ目って言うでしょ?私はまだ小泉さんと一緒にいたいから」
グハッ!
な、なんか攻撃力高くない……?
まさか俺が榎本のこと好きなのもうバレてる?
嬉しすぎるんだけど。
「そ、そっか……今日の祭りも楽しかったし俺も榎本さんと友達でいたいな」
まだこの気持ちは伝えられない。
あまりにも時期尚早だしそんな勇気は俺にはない。
「私も楽しかったよ。小泉さんがよかったら……また来年も行きたいな」
それは今俺が一番欲しかった言葉だった。
その言葉一つで簡単にドキドキして嬉しくなってしまう。
「うん、ぜひ一緒に行かせて欲しい」
「よかった……断られたらどうしようって思ってたから」
「断る理由なんてないよ」
「それでも小泉さんに彼女がいたら行けるか分からないでしょ?」
彼女なんてできるのかなぁ……
俺としては今目の前にいる人が俺のことが好きでいてくれてるならすぐにでも告白して付き合いたいんだけどなぁ。
それが分からないのも恋愛の醍醐味なのかもしれないが。
「綾ー!小泉くーん!電車何本か行ったみたいだし帰ろ〜!」
「分かったー!それじゃあ帰ろうか。小泉さん」
「そうだね」
同意して榎本についていきそうになるがふと思いとどまる。
男だろ!勇気を出せ!
榎本は同じく勇気を振り絞ってくれたんだ!
思わず榎本の手を掴んでしまう。
「え!?どうしたの?」
「あのさ……また俺と……!」
言え!
たった数言だろ!
少し言うだけなのに今までで一番緊張したかもしれない。
「デート……して欲しいんだ」
「デート?」
今まで俺にできる限りの気遣いはしたつもりだった。
これでデートは嫌だと言われたら大人しく引き下がる。
それが男が嫌いだったという理由だったとしても俺の実力不足だ。
緊張しながら榎本の答えを待つ。
「いいよ!行こうよデート」
その言葉を聞いた瞬間すごく嬉しかった。
それこそ涙が出そうになってしまうほど。
しかも榎本もデートだと認識したうえで行けるんだ。
今までになく進展を実感した。
次のデートで告白したいな……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます