お祭り尾行デート(服部優視点)

「あ!金魚すくいだ〜!服部くんやりに行こう〜!」

「な、おいちょっと!?分かったから引っ張らないで!」


長谷川に無理やり金魚すくいの屋台に引っ張られていく。


「二人から離れるにしてもこんな強引じゃなくてよかったんじゃないの?」

「まぁ序盤に離脱するならこのくらいの方が自然でちょうどいいでしょ?それに私毎年こんな感じで綾を連れ回してたから絶対怪しまれない自信があるよ〜」

「榎本さん可哀想だな……」


そう、俺たちはあらかじめ達也と榎本さんが二人きりでお祭りデートができるよう裏で計画を練っていた。

最近プールデートもしたみたいだし仲良さそうだもんな。


「ほら、とりあえず金魚すくいやろうよ!」

「金魚すくいはやりたかったんだ……」

「だって私たちも祭りを楽しまないともったいないでしょ?」

「……そうだね!」


本当に長谷川はすごい人だ。

勉強もできるし明るくて周りの人も明るい気分になる。

そんな長谷川を俺は────


「どうしたの?ぼーっとしてるけど」

「ごめん、大丈夫だよ。金魚すくいやろうか」

「うん、やろう〜!」


早速ポイをもらってすくおうとするが一瞬で紙が破れてしまう。

……思ったよりも難しいんだな。


「あはは、服部くん慣れてないね〜」

「何気にやったことないんだよね。達也とはひたすら食ったり射的くらいしかやらないから」

「そうなんだね」


俺と会話しながら長谷川は正確に金魚をすくっていく。

めちゃくちゃ上手いじゃん……

7匹ほど取ったところで紙が破れる。


「そろそろ綾たちが動き出したみたいだね。追いかけよう!」

「え?」


長谷川の言葉につられて達也の方を見ると二人並んで歩き出していた。

まさか追いかけるためにわざと紙を破ったのか……?

金魚を受け取った長谷川はすぐに達也たちを追いかけ俺も慌ててついていく。


「尾行するの?二人きりにするだけでも充分俺たちは役目を果たしたんじゃ……」

「え〜でも気になるじゃん。親友であり幼馴染の恋路だよ?興味無い?」

「あるにはあるけど盗み見るのは申し訳ないというか……」


と口では言いつつもやはり気になるのでこっそり達也たちを観察する。

達也たちはそれぞれ食べ物を持って並んで腰を掛ける。


「二人の距離感も随分近くなったね〜」

「俺もこんなに短期間で一気に進展するとは思わなかったよ」

「綾は間違いなく小泉くんのことが好きだけど小泉くんはどうなの?」

「見た感じいいところまで来てるけど自分の気持ちに気づけてないんだと思うよ」


見るからに榎本さんとの距離が近い。

いつもなら他の人にここまで心を許さない達也がましてや女子となんて少なからず良い印象を榎本さんに持っている証だ。


「なるほどね……あっ……!」

「大胆なことするなぁ……」


長谷川と話して視線を達也たちに戻すとなんとお互いに食べさせあっているではないか。

ここまで見せつけられると幼馴染が自分以上の女たらしに成長しそうな気がしてきた。


「恋する綾は本当に可愛いなぁ……あんなに嬉しそうにしちゃって……」

「長谷川さんは榎本さんの保護者か何かなの?」

「だって綾は可愛いもん。あ!綾たちが移動しちゃう!電話かけなきゃ!」


そう言って長谷川は榎本さんに電話をかけはじめる。


「あ、もしもし綾?今小泉くんと一緒?……それじゃあそのまま二人で楽しんでよ……もう合流が面倒くさくなっちゃってさーそれじゃあね!」


……めっちゃ押し付けたな。

絶対に榎本さん渋ってただろ。


「いやー大成功!それじゃあ行こうか」

「え?行くってどこに?」

「決まってるじゃん!今から改めてお祭りを楽しむんだよ〜!さっきも言ったけど追いかけてばっかりはもったいないよ〜」

「……はは、そうだな。行こうか」


本当に長谷川には敵わない。

心を読んでるかの如く欲しい言葉をくれるんだ。

さて、俺もこの気合入れて頑張りますかね!

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