花火の下で輝く君

「どうしたの?何か緊急事態?」

「それが……もう集まるの面倒くさいから改めて花火のときに合流しようって……」


……え?


「ど、どうする?花火まであと二時間くらいあるけど……」

「うーん向こうがバラバラに行動すると言っている以上無理して合流する必要は無いと思う。もし榎本さんが四人で思い出作りたいとかあったら連絡をとってすぐに合流しよう」

「私は小泉さんと二人で大丈夫だよ!それにせっかくのお祭りだから合流にあまり時間をかけないで楽しみたいというか……」

「分かった。じゃあ引き続き一緒に回ろうか」

「!!うん……!」


結局俺たちは二人一組で行動することになった。

まぁぶっちゃけ今日は優と二人で回るつもりだったから人数的には気にならないし最終的に花火をみんなで一緒に見れるなら別れて行動するのも各々が行きたいところに行けていいと思う。

流石に四人ともバラバラは嫌だけどな。


「それじゃあ改めてどこから行こうか?」

「小泉さんが行きたいところはないの?さっきは私のお願い聞いてもらったし次は小泉さんが行きたいところがいいな」

「うーん俺かぁ……あ、いつも優と来る時は射的勝負とかしているよ」

「射的勝負!?楽しそうだしやろう!絶対負けないよ!」


行きたいところがぱっと浮かばなかったのでいつも優としていたことを言ってみたんだが榎本のお気に召したようで良かった。

ついでに闘争心にも火が付いたみたいだけど。

張り切っている榎本と共に射的ができる屋台を探す。

途中で少し寄り道をしながらも無事発見した。


「服部さんとはいつもどんな内容で勝負してるの?」

「その時によって適当にルールを決めてるからこれと言って無いね」

「じゃあ何個落とせたかにしよう。私からでいい?」

「分かった。横から見守っておくよ」


この屋台ではコルクを三発分くれた。

榎本の実力はどれくらいなんだろう……?

榎本は構えて早速一発撃つがぎりぎり当たらない。

構えも様になってたし正直上手そうだ。

二発目は小さなお菓子を倒し、三発目は小さなぬいぐるみに当たったが倒れなかった。


「榎本さん上手いね。結構やってた感じ?」

「ううん。これが初めてだったよ。射的ってすごく楽しいね!」

「初めて!?本当にすごいね……」

「ありがとう。さあ次は小泉さんの番だよ」


俺もお金を払って銃とコルクを受け取り早速構える。

……まずは追いついておかなくちゃな。

小さなお菓子の箱に狙いを定め引き金を引く。

しかし、奥の方へ逸れて当たらなかった。

よし、なんとなく銃の感じは分かった。

次は外さない。

二発目も箱に狙いを定め撃つと今回は命中し倒れた。


「よし」

「同点だね。最後の一発だよ」


最後の一発は何を狙うか決めていた。

しっかりと狙い引き金を引く。

そして狙い通り小さなぬいぐるみが倒れた───


◇◆◇


「小泉さん上手だったね。今回は私の完敗だよ。でも……は負けないからね!」

「来年も一緒に行ってくれるなんて嬉しいよ。あとこれ……あげる」


そう言って俺が榎本に渡したものは先程獲得した小さなぬいぐるみだった。


「え?くれるの?でも小泉さんが射的でゲットしたやつでしょ?」

「榎本さんが欲しそうにしてたから取ったんだよ。受け取ってほしいな」

「嘘!私そんなに顔に出てた!?」

「うーんまぁ割と?」

「うぅ……恥ずかしいよ……でもありがとう。大事にするね」


榎本は赤面しながらも受け取って本当に嬉しそうな顔を見せてくれた。

ぬいぐるみを大切に抱えた榎本の姿はいつもより表情が柔らかくてその表情を見るだけで心が一気に温かくなった。

それから俺たちは何個か屋台を巡り長谷川からメールで送られてきた穴場に向かった。


「あー楽しかった!」

「うぅ……」


到着すると満足げな長谷川と疲れ切った優が既に待っていた。


「遅れちゃってごめん」

「いやー全然大丈夫だよ。楽しかった?」

「それはもちろん」

「私も楽しかったよ」

「そっか!それは何より!それよりもうすぐ花火が始まるみたいだよ。ほら服部くんもそんなところに座ってないで一緒に見ようよ!」


隅で座っていた優を長谷川が引っ張ってくる。

すると……


ヒュ〜ドンドン!!!


「うわぁきれいだね……」


誰かが思わずそう漏らすほど花火は今まで見た中で一番美しかった。

……きっとこの四人で見ることができたからだろう。

しばらく花火を見ていると榎本が笑顔でこちらを見てくる。


「花火すごくきれいだね!小泉さん」


満面の笑みを浮かべて俺を見ている榎本に心臓が跳ねるようにドキドキして花火に向き直って目を輝かせているその横顔からずっと目が離せなかった。

くそ……なんでこんな……

そしてある考えが自分の中に浮かびスッと腑に落ちる。


ああ……そうか……


俺は榎本のことが好きなんだ。




──────────

ようやく達也の心情の変化も書くことができました!

ここまで読んでいただきありがとうございます!

二人の進展が気になる方、榎本のような負けず嫌いヒロインに魅力を感じてくださった方、花火の擬音が下手すぎると思った方。

☆、♡、フォロー、コメントなどよろしくお願いします!

これら一つ一つが本当に励みになっています!

これからもこの作品をよろしくお願いします!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る