思わぬ浴衣

昨日私のミスで2話放出してしまって本気で焦りましたがなんとか間に合いました!(^_^;)

これからも楽しんでいただければ幸いです!

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八月某日。

前々から優と約束していた夏祭りの日がやって来た。

祭りの会場は六つほど離れた駅なので電車で20分程で到着する。

俺と優は駅前で待ち合わせをしていた。


「おっ、来たか達也。榎本さん達と待ち合わせをした時は30分前に来てたのに俺の時は時間ギリギリなんて薄情な奴だな」

「お前なら許してくれると思ってな。まぁそれはいいとしてこれは何なんだ?」


俺がと言ったのは俺達の服装のことである。

俺達は今浴衣なのだ。


「突然借りてきてどうしたんだ?今まで浴衣なんて着て夏祭りなんか行ったこと無かっただろう」


前日に満面の笑みで『親から借りてきた』の一言と共にこの浴衣を渡された。

絶対に着てこいとの圧がすごかったので別に無理して私服で行きたい理由もないし浴衣を着てきた。


「たまにはこういうのもいいでしょ?別に金取るわけじゃないんだからさ」

「そうは言われても突然だったからなー……」


優に言われてから母さんに教えてもらいながら最低限着る練習をした。

何かしらのハプニングがあって浴衣を直せませんなんて全く笑えないからな。


「急に言ったのは悪かったって。ほら行こうぜ?」

「はいはい」


電車は祭りの影響で人が多い。

浴衣を着ている人もちらちら見える。

家族連れで来ている人達も多いみたいで家族で仲睦ましげに話している様子も見えた。

ああいうのを見ているとこちらまでほっこりしてくる。

会場の最寄り駅に到着すると人が波のように押し寄せ流れに任せ会場へ向かう。


「何から食う?」

「そう食い意地を張るな。待ち合わせがあるからそっちへ向かおう」


人を食いしん坊みたいに言わないで欲しい。

それに食い物は大きな祭りの醍醐味だろうが。

ん?というか待ち合わせ?

そんなものは一切聞いていなかったんだが……


「おい、待ち合わせっていったい誰と……」

「まぁ来たら分かるから」


来たら分かるって……

勿体ぶらずに説明して欲しいんだが。


「こ、小泉さん?お二人共浴衣なんですか?」

「二人ともこんにちは〜」


後ろから聞き覚えしかない声。

待ち合わせってまさか……


「榎本さん、長谷川さん」


俺が最も親しいと言っても過言ではない二人の女友達だった。


◇◆◇


「そういうわけでまたこの四人で集まることになったんだよ」

「そういうわけでじゃねえよ。初めから教えてくれれば良かったのに」

「でもせっかくならサプライズしたいじゃん」


話を聞くと四人で集まるのを知らなかったのは俺だけらしい。

別に断らないんだから初めから伝えておいて欲しかった。

それにしても榎本も長谷川も浴衣か……

これを見越して優は浴衣を貸して来たのか。


「その浴衣榎本さんに似合ってるよ。すごくきれいだよ」

「!!ありがとう……」

「長谷川さんもとても似合っているよ。とても可愛いと思う」

「むぅ……」

「あはは、ありがと〜小泉くん。でも誰でも彼でもやったらだめだよ〜?」


二人とも似合っていたから褒めたのに榎本は不機嫌になり長谷川には釘を刺されてしまった。

榎本は髪色に合わせ落ち着いた紫色の浴衣を着ていて長谷川は白の生地にピンクのあじさいがデザインされた浴衣を着ていた。


「それにしてもまさか二人も浴衣で来るとはね〜」

「達也だけじゃなく二人にもサプライズだよ」

「うんうん!二人ともすごく似合ってるよ!ね?綾?」

「う、うん……すごくカッコいいと思う……」

「そう言ってもらえると着た甲斐があるよ」

「な〜?着て良かっただろ?」


確かに二人も浴衣を着ているし似合っていると言われたら悪い気はしない。

貸してくれた優に感謝だな。


「さあ!どこから回る?射的?金魚掬い?焼きそば?」

「見て回りながら良さそうな店があったら寄るとかでいいんじゃないかな?」

「いいね〜!賛成!」


いつもの如く優と仁美で盛り上がり、それを苦笑しながら……それでも楽しそうに見ている達也と綾香の図は夏祭りでも健在であった。

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