突然のプールデート(両視点)
夏休みが始まって一週間ほど経ったとき一つの電話が達也にかかってきた。
『も、もしもし』
「あ、もしもし?榎本さんが電話をくれるなんて珍しいね」
珍しいとは言ったものの榎本から電話がかかってくるなんて初めてだしそもそも一対一で電話すらしたことがない。
何かあったのだろうか。
『突然電話してごめんね。それであの……』
「あ、もしかしてまた集まるとか?」
でもそれなら電話じゃなくてもグループチャットに一言書き込めばいいだけの話だ。
きっと長谷川辺りがふざねて榎本が俺に電話するように言ったとかそんなところだろう。
『私と二人で……!プールに行ってくれない!?』
「へ?」
◇◆◇
どうしてこうなった?
俺は今水着やタオルなどを持って榎本と一緒にこの地域で一番大きい市民プールに来ていた。
榎本とは友達だとは思っていたが一緒にプールに来るほどの仲でもないと思っていた。
俺は健全な男子高校生だから普通に女子とのプールなんてウェルカムだけどまさか榎本から誘われるとは……
「それじゃあ着替えて向こうで合流しようよ。私も急いで着替えるけど多分小泉さんの方が早いから」
「わ、分かった。それと急がなくてもゆっくりでいいよ」
あれ?
榎本動揺少なくない?
俺は女子と二人きりのプールというシチュエーションに少なからず理性をフル稼働させようとしてるんだけど……
自分には男としての魅力が無いのかとしょぼくれながら着替える達也であった。
一方そのころの榎本は───
「危なかった……顔とかに出ちゃってなかったよね……?」
達也よりも動揺していた。
「仁美にこれが良いよって言われたけど
仁美にはこれを着て小泉さんと二人っきりでプールに行って少しくらいは意識させて来いって言われたけど……
男子のクラスメイトにに水着なんて恥ずかしいよ……
とはいえこの前は自分が逃げてたせいで痛い目を見たのだから今回は泣き言を言ってられない。
絶対に小泉さんに私を意識させてやるんだ……!
そして髪をまとめて着替えたら水着に身だしなみもなにも無い気がするが一応鏡で自分の姿を確認する。
そして意を決してプールに行く。
小泉さんは入口の近くで待ってくれていたのですぐに見つけることができた。
そして一番に私が思ったことは────
(か、かっこいい……)
小泉さんはすごい筋肉質な体をしていることが一目で分かった。
自分が筋肉を見てドキドキするなんて初めて知ったのでそんな自分にも少し驚いてしまう。
とはいえ小泉さんを待たせてしまってるから早く声をかけないと……!
「お、おまたせ……!」
「ああ、榎本さん。大丈夫だよ全然待ってな───」
「どうしたの?」
小泉さんが固まってしまった。
やっぱりちょっと大胆すぎたかな……?
一方榎本を見た達也はというと────
(え、榎本の水着の破壊力が……!)
ただただ悶え苦しんでいた。
別に榎本が着ている水着が特別エ◯いわけではなく至って一般的なサイズではある。
問題はそれを着る人だ。
ちょっと気になってる女の子、しかも顔も抜群に整っててスタイルも良い。
そんな相手に恋愛初心者の達也が平常心でいるという方が難しい。
「すごく可愛いよ。その髪型も似合ってる」
「あ、ありがとう」
「とりあえず何からする?」
「うーん、ウォータースライダーはやってみたいけど楽しみは後に残しておきたいかも」
「じゃあ初めは浮き輪を借りるなりゆっくり泳ぐなりしようか」
俺の提案に異論はなかったみたいで榎本は浮き輪を借りてきていた。
流れるプールで二人でのんびりと流れていく。
ゆったりと談笑していたが不思議と会話が止まってしまっても気まずくはならず居心地が良かった。
「そろそろウォータースライダーに行こうか」
二周ほど流れるプールを回ったときずっと流れているわけにもいかないから提案してみる。
すると榎本も同じようなことを考えていたみたいですぐに了承し先程浮き輪を返却しに行った。
「はぁ……今日の榎本、すっげぇ可愛いな……」
本人がいないことを確認し独りごちる。
クラスメイトの男子は絶対に見たことが無いであろう榎本のお団子に結んだ髪型はすごく可愛かったし優越感もあった。
水に濡れた姿は色気がすごすぎて理性との戦いでもあった。
それなのに近くにいると居心地が良いし落ち着くのだ。
ドキドキしているのに落ち着くという矛盾した気持ちに戸惑ってしまう。
「なんか調子狂うけど……」
少し離れたところで浮き輪を返却している途中の榎本を見る。
「すごい楽しいな……」
────────────
『自由をご所望の王女殿下と幼馴染な専属従者の亡命(駆け落ち)スローライフ』の連載スタートしました!
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