姉襲来!!
天堂高校は昨日終業式を終え今日から夏休みに突入した。
宿題は夏休みが始まる前にある程度終わらせたし、さ〜て何をしようかな?
夏休み前は色々やりたいことがあったのにいざ時間がたくさんあると何をしようか迷ってしまう。
ここは知らない店巡りでもしてみるか?
それとも一人でショッピング?
いやいや逆に遊びから目を背け勉強という手も……?
「ねえ達也」
!?
この声はまさか!
「姉さん……」
声の主は俺の姉さん、
残念ながら兄弟とは年の差がよっぽど近くない限り基本的には年上が勝つ(偏見)。
小泉姉弟は年が離れている訳ではないが幼い達也は気弱だったため昔から姉弟間には圧倒的な力の差と覆せないヒエラルキーが存在している。
くそ……なんでだ?
俺は普段から波風たたないように気をつかって過ごしていたのに!
「ど、どうしたの……?」
「ん〜ちょっと買い物に付き合って欲しくてさ。あんた暇そうだったしちょうど荷物持ちが欲しかったのよ」
ここは断りたい……!が!
姉さんに逆らったらどうなるか……
熟考に熟考を重ねた結果────
「分かった。ついていくよ」
達也、己の弱さに負ける。
達也の負けず嫌いも姉の前では発揮されなかった。
「ありがと、あと昼は奢ったげるから午後も付き合いなさい」
午後も買い物すんの!?
俺てっきり午前で終了だと思ってたんですけど!?
しかし了承してしまった手前もう断ることはできない……
「さぁ行くわよ」
「……はい」
小泉達也の長い一日が始まった。
◇◆◇
悲報、女性の買い物が長すぎる件について。
姉さんに連れられショッピングモールに来ていた俺はもうかれこれ二時間くらいは姉さんのファッションショーを強制的に見させられ感想を言わされている。
姉さんは確かに美人だ。
それは認めよう。
しかし血を分けた姉弟である以上特殊な性癖でも持ってない限り姉のファッションショーは見てて全然楽しくもない(個人の感想です)。
榎本たちの買い物を見てる分には楽しかったのに今楽しくないということは俺は特殊な性癖は持ってないということだ。
「これとかどう?」
「ん?良いと思うよー」
「これは?」
「良いと思うー」
「あんたね、もうちょっと顔に出さないでつまんないって雰囲気をしまいなさいよ」
確かにいくら姉弟といえどこの態度は失礼かもしれない。
けどな!
二時間だぞ!?
俺だって最初は真面目に感想を言ったさ!
でも十着を超えたらファッションデザイナーじゃないんだからもう感想が出てこないんだよ!
「……スイマセンデシタ」
「ああもう!じゃあとりあえずこれだけ買ってくるからお昼でも食べに行きましょ!」
助かった……
俺はその言葉に安堵し会計から帰ってきた姉さんから荷物を持たされMのマークでおなじみのハンバーガーショップに入る。
今日は姉さんの奢りって言ってたし大量に頼んでやろうかな。
俺は(結局姉さんが怖くなって一人前)注文したものを受け取って席に戻る。
ジャンクフードってたまに食べると本当に美味いよな。
「達也ありがとね。これで彼氏に喜んでもらえそう」
「そっか!それは良かった!じゃあ俺はこれを頂いたら失礼……」
「させないわよ?まだ靴とか小物とか見てないし」
逃げられなかった。
あの苦行を午後もやるとなるとゲンナリしてくる。
「てかさぁ。あんた彼女とかいないの?お母さんが心配だぁとかいつもぼやいてるけど」
「……余計なお世話だ」
「ふーん。悲しい高校生活ね。気になってる人とかもいないわけ?」
そう言われて頭に浮かんできたのは一人の少女。
好きか嫌いかと聞かれたら好きだと断言できるけど恋愛的な意味で好きかと聞かれれば正直答えに窮する。
「まぁ気になってる人くらいならいなくもないけど……」
「へ〜以外。あんたそういうの言わないのかと思ってた。どんな子?」
「う〜ん姉さんよりきれいな人かな。それに努力家な人だよ」
「あーはいはい。よくわかったわ。あんたもうその子と付き合っちゃいなさい」
「なんでそうなるんだよ」
それに相手は男嫌いで有名な子だから無理だよ、とは心が痛くてなぜか言いたくなかった。
そして俺は午後も買い物に付き合わされ夏休み初日はいつの間にか溶けていった。
気になっている少女に姉との買い物を見られていたことにも気づかずに……
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