名誉挽回の勉強会
いつもよりも何日も早くテスト勉強をして迎えた週末。
俺たちはテスト対策のために四人でファミレスに集まって勉強会をしている。
俺は先日犯してしまった失態(だと思い込んでる)を取り戻すためにやる気に満ち溢れていた。
とはいえこの前も暴走の結果だったし優にもやりすぎるなと釘を刺されているからそこは気をつけなくては……
でももう勉強会が始まって一時間くらい経つのに未だに俺・榎本間での会話が一個も無いんですけど……?
いくらやりすぎるなって言われたってこのまま無言で終わるわけにはいかない……!
ちょっとくらいなら話しかけても良いはずだ!
「あーえっと……榎本さんは勉強の調子どう?」
「はい。大丈夫です」
「そ、そっか。それは良かった」
………………
教科書から目を話してくれないんですけど!?
てことは俺は視界に入れることすらしたくない汚物ってこと!?
やはり体育祭の俺はキモすぎたのか……
何やらかしてくれてんだ過去の俺!
俺たちの間に気まずい空気(主に俺)が流れる。
「え、えーっと少し休憩しない?ほら、根を詰め過ぎても良くないし!」
それを見かねたのか長谷川が場を仕切り直してくれる。
欲を言うなら俺と榎本の会話をアシストして欲しいな……なんて。
とにかく俺の頼れる幼馴染に耳打ちで助けを求める。
「優……俺に挽回の余地は残されているのか……?もうゴミとしか思われてないんじゃ……」
「大丈夫だって……!とりあえず自信を持ってもう一回話しかけてみろよ」
「わ、わかった……」
これで大丈夫じゃなかったら後で覚えてろよ、と心の中で八つ当たりしつつももう一度榎本に話しかけてみる。
「榎本さん」
「は、はい」
良かった、今回は目を合わせてくれた……
と思ったらすぐに目をそらされてしまう。
あ、死んだ。
完全に嫌われてるわこれ。
とりあえず謝ろう……!
「ごめん!」
「え?」
「リレーのとき気持ち悪いこと言ってごめん!悪気はなかったんだ……」
「べ、別に怒っても引いてもいませんから気にしないでください。それに嬉しかったです……少しだけ……」
ん、ん゙ん゙っ!
榎本の言葉に他意は無いんだぞ小泉達也!
いくら少し恥ずかしそうに顔を赤らめながら結局最後に照れて『少しだけ』を付けていたとしても今度こそ本当に引かれたくないなら勘違いをするなよ俺!
これは多分……そう!榎本が男子に対して前向きな反応をした経験が少ない(失礼)からに違いない!
なんにしても嫌われてなくて本当に良かった……
ぶっちゃけ優に榎本をオトせとか言われたことだんだんどうでも良くなってきて俺の意思で友達でいたいと思い始めてたから……
「そっか……それなら良かった」
そして見ていた二人の内心は……
(達也が完全に立ち直ったのは良かったけど甘い雰囲気出しすぎじゃね?)
(まさか綾がこんな事を言うなんて……!後で詳しく聞かせてもらうからこの場は二人の世界を創造してても許してあげよう!)
「……休憩しすぎましたね。再開しませんか?」
((あ、逃げた))
「そ、そうだね!さあ勉強勉強!」
((こっちもか……))
せっかく良い雰囲気に、と思ったが既に二人が勉強を始めてしまった以上部外者が口出しする事はできない。
仕方なく二人も勉強を再開した。
◇◆◇
「うーん結構勉強したね〜」
「こんな長時間ぶっ続けで勉強したの初めてかも……」
長谷川と優の言葉に釣られて俺も勉強を中断し時計を確認する。
見ると勉強会を開始してから3時間が経過しようとしていた。
「あんまり長居するのも良くないからここらへんで解散しようか」
「そうだね〜」
「みんなお疲れ〜」
そのままの流れで解散する。
いやーそれにしても今日は良い日だった!
勉強もできたしなにより俺は榎本に嫌われていなかった!
「随分上機嫌だな。達也」
「まあな。お前の言った通り嫌われてなくて本当に安心したよ」
「言った通りだっただろー?もっと敬っても良いんだぞー」
「ははぁ。優様はさすがでございます〜」
優には色々気を使ってもらったし今度ジュースでも奢るか……
心配事が無くなって親友とふざけながら駄弁る帰り道は最高に楽しかった。
────────────────
この作品をここまで読んで下さってありがとうございます!
今まで頂いた☆や❤は本当に励みになります!
気軽にコメントとか送っていただけると嬉しいです!
ようやく榎本の心境の変化を書くことができたのでこれから少しずつ甘いシーンを増やしていけたらと思っております!
これからもどうぞこの作品をよろしくお願い致します!
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