ネガティブ達也(服部優視点)
体育祭が終わり一週間ほど過ぎた今日このごろ。
小泉達也は悩んでいた。
俺は幼馴染のそんな姿に苦笑交じりで話しかける。
「まーたどうしたんだ?なんか嫌なことでもあったの?」
「うう……優……助けてくれ……」
「いいから話してみろって。聞いてからじゃないと力になれるか分からないだろ」
「俺……」
「うん」
「榎本さんに嫌われたかも……」
「は?」
予想していなかった幼馴染の悩みに思わず聞き返してしまう。
「どうしてそう思うんだ?」
「体育祭の日以降喋りかけても前みたいにそっけなくなっちゃったし目すら合わせてくれないんだよ……やっぱり一緒にいたいとか言ったのがキモかったのかなぁ……」
嫌われてるってことはないと思うんだけどなぁ。
体育祭の打ち上げのときはむしろ好き避けって言ったほうが正しい雰囲気だったと思うんだけど……
まぁこいつにはわからないか。
今回の場合は達也が鈍感っていうより今まで意識的に女子を見たことがなかったから判断できないんだろうな。
まさか俺と長谷川が頑張って走ってるときに榎本さんを口説きながら青春を謳歌してるとは思わなかったけど。
「多分大丈夫だよ。俺が責任は取れないけど保証してあげる」
「責任取れないんじゃないか……」
「大体そんな不安になるならなんでそんな事を言ったんだよ」
まぁいざ達也に好きな人ができたとき苦労するるからヘタレにはなって欲しくないけど。
でも普段の達也なら絶対にそういうこと言わないと思うんだけどな。
何かあったんだろうか?
「体育祭のテンションと榎本さんの不調に気付けなかった情けなさで思考がバグってたんだよ!気持ち悪いって思われてなければいいけど……」
ネガティブ思考になってんなぁ……
確かに今まで慎重に距離を縮めてきた分今回はだいぶ暴走したと言えるかもしれないけどこいつが
でも相手はあの榎本さんだから万が一ってこともあるかもしれないし。
達也のネガティブが伝染して俺まで自信無くなってきたじゃねえか!
仕方ない、俺が親友のために一肌脱ぎますかね!
「それで私のところに来たってこと?」
「まぁそういうわけだね」
そして今、俺は人気のない廊下で榎本さんの幼馴染である長谷川に達也の事を話していた。
今は達也と榎本さんも含めて四人で遊んでいることが多いがそれ以前に俺と長谷川は割と仲が良かった。
「それでぶっちゃけどうなの?」
「うーん少なくとも気持ち悪いとは思ってないと思うよー好きかどうかまではちょっとわからないかな」
「まぁ引かれてないならいいか……」
これで少しは達也が元に戻ってくれると願おう。
「綾に聞いてみようか?」
「いや、これは当人たちの問題だし過干渉になりすぎても良くないと思う。すでにアウトな気がしなくもないけど」
「そっかぁ……じゃあもう一回みんなで集まってみる?」
「その前回の集まりである打ち上げにうちの達也は心折られてるんだけど」
「でも放置じゃ何も解決しないでしょ?」
「あーわかったわかった。でも少し前に集まったばかりだけどどうするの?」
俺の言葉に長谷川はドヤ顔になる。
そのドヤ顔は不快というよりも可愛いと思ってしまい普段榎本さんの影に隠れているだけで長谷川も相当の美少女であることを改めて認識させられた。
「ふっふっふーそれはね。勉強会をすればいいんだよ〜!」
「なるほど……定期考査か」
「そういうことー」
俺たちの学校は六月末に定期考査がある。
そのための勉強会なら何も不自然ではないし勉強を教えるという過程で会話も生まれる上に学力向上という実利まである。
なかなか名案だと思う。
「わかった。達也には俺から伝えておく」
「綾には私から伝えておくよ〜来週末にファミレスでいいよね?」
「それでいいよ」
◇◆◇
「というわけで来週末勉強会することになったけどどうだ?」
「俺は別にいいけど榎本さんは嫌がらないかな……?」
「そうネガティブになるなって!ちゃんと榎本さん(を一番理解している長谷川)に気持ち悪くないってお言葉をもらってきたからさ」
「本当か……?」
「嘘ついてもしょうがないだろ?」
嘘はついてない。
若干言葉が足りないだけだ。
なんにしてもこれで達也が立ち直ってくれれば……!
「今回の勉強会で頼りがいを見せれば株が上がるかもしれないよ?やり過ぎは逆効果だけどね」
「……そうだな。ありがとう優!俺頑張ってみるよ!」
「ああ。俺も負けないけどね」
これ以上この親友に努力させるのは心苦しいが勉強はやって損はないしこれ以上落ち込んでる達也は見たくない。
しっかりと後でフォローもしないとな。
かくして定期考査対策のための勉強会実施が決定した─────
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