小泉達也と服部優の過去(服部優視点)
〜11年前〜
「今日からやっと小学生なんだな!」
「もう、優ったらはしゃぎすぎよ」
「だって楽しみじゃん!」
一昨日に入学式を終え今日からようやく登校が始まる。
早く小学校に通いたくて仕方なかった。
勉強は面倒くさそうだったしあまりやりたくなかったけどそれよりも新しい友達ができるのが楽しみでたまらなかった。
朝早くから登校して同じクラスの人に声をかけまくった。
「いやーいろんな人となかよくなれて小学校って楽しいな!ん?あいつは……」
小学校初日を大満足で過ごした俺は帰ろうと思ったとき一人の男子に目がいった。
自己紹介の声が小さすぎてよく聞き取れなかった奴だ。
今日誰とも話してなかったけどどうしたんだろう?
腹でも痛いのかな?
「よー!おまえだいじょうぶか?はらでもいたいのか?」
「え……?ぼ、ぼく?だ、だいじょうぶだよ……」
「そうなのか?おまえだれとも話してなかったからはらでもいたいのかと思った」
「ぼ、ぼくは人と話すのがにがてだから……」
「ふーん、変なやつ。おれ、まさるって言うんだ。おまえは?」
「え、えーっとぼくはたつや……こいずみたつやだよ……」
不思議な奴だと思いつつも話しかけてみたら意外と面白いやつで家に帰ってからもそいつのことが忘れられなかった。
それから俺は達也というクラスメイトとよくつるむようになった。
達也はあまり喋らない奴だったけど優しいし面白いし居心地が良くて学年が上がってクラスが変わっても俺たちはずっと仲が良かった。
そして俺たちが3年生か4年生くらいのときのこと。
達也は見えてきたイケメンの片鱗とその優しい性格も相まって女子たちの初恋を奪うようになり始めた。
そうなると面白くないのは男子だ。
まだ初恋を経験してない男子だったとしても運動も大してできない、大して喋りもしないやつがちやほやされるのは面白くない。
そんな嫉妬にまみれた理由で達也に対するいじめが始まった。
俺もすぐに親や先生に相談したりできるだけ達也と一緒にいようと思ったけど違うクラスだったのでできることにも限りがあった。
そして、達也はしばらく学校に来なくなってしまったんだ。
「うっ…うっ…おれ……友達なのに……たつやのこと助けられなかった……」
俺はとにかく泣きじゃくった。
一番辛いのは達也なのに俺も涙が止まらなかった。悔しかった。
あんなに達也は良いやつなのにいじめられるのが許せなかった。
そして気づいたら走り出して達也の家のインターホンを押していた。
「あら、優くん……」
「いま、たつやいますか」
「達也?ええ、いるけど……」
「ごめんなさい!おじゃまします!」
気が動転していておばさんの返事も聞かずに家に上がってしまった。
とにかく達也に会いたかった。
いつも二人で遊んでいた達也の部屋の扉を開ける。
「!……優くん」
「だいじょうぶ?」
大丈夫なはずがない。
達也の心は傷ついてるのにそんなことを聞いてしまった。
「もう……ぼくと仲良くしないほうが……いいよ。優くんまでみんなに嫌われちゃう……」
「そんなこと気にしなくていいんだよ!それとも……おれとなかよくするのは……嫌?」
「そんなことない!ずっとともだちでいたい!でもそしたら優くんが……」
なんで……自分が一番傷ついてるのに人に気を使えるんだよ……
なんでこんなに優しいやつが傷つけられなくちゃいけないんだよ!
俺は達也に近づきそっと手を握る。
「きにしないでよ。おれはたつやとともだちでいたいよ?」
「優くん……いいの?」
「もちろん!だって……俺たち『ともだち』でしょ?」
「優くん……うわあぁぁぁん!」
それから達也はとにかく泣いて愚痴を言って……
落ち着いた頃には少しすっきりした顔をしていた。
「ねぇたつや」
「どうしたの?」
「おれは……たつやを傷つけたやつを絶対に許せない。だから……一緒に見返そうよ!」
「見返す?」
「そう!おれたち二人で誰も馬鹿にできないようなすっげえ男になって馬鹿にしてきた奴らを見返してやろうよ!」
「優くん……うん!ぼく、いや俺頑張ってみる!絶対すごいやつになってみんなを見返してやるんだ!」
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