男嫌いの少女の悩み(榎本綾香視点)
ゴールデンウィークも終盤に差し掛かった頃。
榎本綾香は自宅で悩みに悩んでいた。
おかしい。
ゴールデンウィークに四人で集まってから何故か小泉さんのことが気になるようになった。
ボウリングのときは思わずハイタッチをしてしまったがあんなに自然に男性に触れたのなんていつぶりだろう。
……小学生のとき以来かもしれない。
男性は苦手なはずなのに小泉さんだけは特に苦じゃない……
思い当たる理由がないか必死に考えていたところふと頭に仁美の言葉が蘇る。
『きっと綾も好きな人ができたら変われるよ!』
好きな人……?私が?
小泉さんに恋い焦がれる自分を想像して思わず顔が熱くなる。
ほんとに私は小泉さんが好きなんじゃないかと恥ずかしくなって少し焦ったが小泉さんのことを考えても特にドキドキしなかったから思わずホッとしてしまった。
「そ、そうだよね。私が男の人を好きになるなんてないもんね」
自分に言い聞かせるように心を落ち着かせる。
これは……そう興味だ。
なんで小泉さんなら大丈夫なのか、それが気になるだけであって決して恋心なんかじゃないよね。
どんなに悩んでも解決しなかったので私は仁美に相談に乗ってもらうことにした。
仁美に連絡したところ暇だったらしいのですぐに私の家に来れるらしい。
私は今事情があって一人暮らしなので仁美とお金が無いときは大体私の家で集まっている。
私と仁美はご近所さんなので5分ほど待っているとすぐに仁美がやってきた。
「やっほー綾!お邪魔しまーす」
「今日はありがとね。わざわざ来てくれて……」
「いいのいいの!はいこれ!」
仁美はもう何回も家に来ているので私にお土産のお菓子を渡し特にためらいなく私の部屋に移動する。
私もジュースや飲み物を持って部屋に向かう。
「それでー?相談したいことがあるって言ってたけど何かあったの?」
「それがね……」
思い切って全て仁美に話してみた。
仁美なら他の人に言いふらしたりなんてしないし。
「小泉くんのことが気になる?」
「うん……好きとかじゃないんだけど……なんかこう、問題の答えが分からなくてモヤモヤしてるみたいな?」
「綾がそんなことを言い出すようになるなんてねー」
仁美がからかうように言ってくるので思わずムッとしてしまう。
「だから好きじゃないって言ってるでしょ」
「そうだとしてもさ。あんなに男の子のこと嫌がってた綾が男の子が気になるとか言い出すんだよ。成長を感じるじゃん?」
「う……」
確かに数ヶ月前の私がこの事を知っても信じなかったであろうことだから否定できない……
「まぁでも私も多分綾と同じくらいしか小泉くんのこと知らないからな〜」
「そうだよね……」
仁美だって私と同じく今年始めて小泉さんと同じクラスになったのだから。
「だから服部くんに少し話を聞きに行かない?」
「え……?」
服部さんは今年同じクラスになってから告白してきた人で正直少し苦手だ。
でも確かに小泉さんと仲良さそうだし幼馴染って言ってたからいろんな話が聞けるかもしれない。
「分かった」
「おっけー!じゃあ早速連絡してみるね!」
え!?今日聞くの!?
てっきり学校が始まってからだと思ってた……
どうしよう!?まだ心の準備が……
「あ、もしもし服部くん?今なにしてる?………うん。ちょっとさ〜話したいことあるんだけど◯◯駅のファミレスまで来れない?………あー小泉くんは今日は呼ばないでおいて………分かった。じゃあまた後でね」
そう言って仁美は電話を切ってしまった。
「電話で聞くんじゃないの?」
「直接のほうが色々聞きやすいでしょ?大丈夫。私も行くから」
そのあとも色々文句を言ってみたけど私から頼んだことだしもう約束もしてしまったから結局行くことになった。
ファミレスに移動し待つこと10分ほど経ったとき服部さんが現れた。
「おまたせ長谷川さん……って榎本さんもいたんだね。遅れちゃってごめん」
「こっちが呼び出しちゃったんだからこっちこそごめんね〜」
「ちょうど暇してたから大丈夫だよ」
「そう言ってくれると助かるよ。それで今日はちょっと綾が服部くんに聞きたいことがあるらしくてさ、聞いてあげてくれない?」
「聞きたいこと?」
私はここまでお膳立てしてくれた仁美に感謝して思い切って聞いてみた。
「小泉さんについて知りたいんです」
「達也について?」
「はい。優しいし面白いし何でもできるように思います。男性はみんな私を見る時は嫌そうにするかいやらしい目で見てくる人がほとんどだったのにそれもありませんでした。私にはそんな完璧な人が存在するとは思えません。何が彼をそこまで駆り立てているのですか?」
「綾……」
私の言葉に服部さんは今まで見たことが無いほど真面目な顔になる。
「……なるほど。榎本さんが聞きたいことはそれだけ?」
「はい」
「それを説明するなら達也の過去を話さないといけない。話してもいいけど絶対に誰にも言わないことは約束してほしい」
「わかりました」
私が了承すると服部さんはゆっくりと語りだした
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