ショッピングモールでの出来事(榎本綾香視点)
「男子と仲良くなりたい?」
「うん……やっぱりこのままじゃだめだって思って……」
ある日私は昔からの幼馴染である仁美に相談をしていた。
私が人生において苦手なものでランキングをつけたらトップ3に入るであろう存在、それが男性。
「そんな感じで自然体でいたら良いと思うよ?だっていつもの綾はすっごく可愛いもの!何もしなくても向こうからたくさん寄ってきてくれるよ!」
「う……それはちょっと難しいかも……」
「じゃあ焦らないでいいからゆっくり慣れていこ?それにきっと綾も好きな人ができたら変われるよ!」
「そんなこと言われても……」
……本当にそんな日なんて来るのかな。
いくらか時が過ぎたある週末のこと。
私と仁美はショッピングモールで買い物をする約束をしていた。
「やっほー綾〜待った?」
「ううん。私も今来たとこ」
「それは良かった!じゃあ早速お昼食べてお洋服を見に行こう!」
「うん」
私達が集合してお昼ご飯を食べようと移動したとき騒動は起こった。
「ねえねえお姉ちゃん達可愛いね〜」
「ちょっと俺たちとお茶しない?」
二人の大学生くらいの男の人達が私達に話しかけてきた。
え………?
仁美が男の人達となにか話してるけど全然頭に入ってこない。
怖い怖い怖い怖い怖い
幼い頃の嫌な記憶が蘇ってくる。
恐怖で体が震え、つい仁美の後ろに隠れてしまう。
そんなときだった。
「すみません。俺達の連れに何か用ですか?ごめん、綾香、仁美、待った?」
小泉さん……?
なんでここに?
「遅れちゃってごめんよ〜そんな訳で二人は俺達の連れなのでここは引き下がってくださいね?」
「え!?小泉くんと服部くん!?なんで……?」
仁美も二人の突然の登場に驚いていた。
服部さんが男の人達を挑発して小泉さん達に掴みかかった時はどうなるかと思ったけど二人共男の人達をあっさりと返り討ちにしてしまっていた。
二人が警備員さんに注意を受けてこっちに戻ってきてお礼を伝えたとき私は内心ビクビクしていた。
これを恩に着せて来るんじゃないかって。
……でもそんなことはなかった。
「あんまり長谷川さん達の邪魔をするのも良くない。優、飯食いに行こうぜ」
小泉さんはいつもは学校でたくさん話しかけてくるのにさっきナンパ達に絡まれたのを配慮してくれたのかは分からないけど全然下心を出さず服部さんを連れて立ち去ろうとした。
これで一息つける……
そう安心したのも束の間。
「小泉くん達お昼ご飯?私達もお腹空いてきたからせっかく会ったんだし四人で食べない?」
仁美の爆弾発言に思わず目を丸くしてしまう。
ど、どういうこと!?
服部さんはあっという間に了承してしまった。
ここで止めないと!
「ちょっと仁美!」
「え〜綾はそんなにやだ?さっきのナンパの人達と違って二人はクラスメイトだしさ」
ニコッと仁美が笑いかけてくる。
これは男の子と仲良くなりたいって前に私が仁美に相談したからその場を作ってくれたのかな……
「それは……わかった。いいよ」
私達はフードコートで食事をすることにし早速移動するのだが……
うぅ……視線がすごいよ……
今までも浴びてきたいやらしい男性の視線だけでもいやなのに女性の嫉妬の視線がすごい向けられる。
仁美も同じことを思ったみたいで小泉さん達と談笑していた。
私も何か喋らなきゃって思ったけどいつの間にかフードコートに到着していた。
席を見つけ全員で座ると仁美が口を開く。
「さーて、昼食取りに行きたいところだけど荷物番を決めないとね?」
「じゃあ俺と優で待ってるから二人は先に取ってきていいよ」
「いやいや小泉くん。さっきみたいにナンパされたら嫌だし小泉くん達だって逆ナンされるかもしれないでしょ?だからここは私と服部くんで先に取ってくるよ〜」
………え?
私と小泉さんで荷物番!?
「え!?ちょっと仁美!?」
止める間もなく二人は行ってしまった。
私はいきなり男の人と二人きりにされてしまい、若干の怯えと緊張で話せなくなってしまう。
それでも……さっきの感謝は改めて伝えないと……
勇気を振り絞って小泉さんに話しかけてみる。
「あの……さっきはありがとうございました」
すると小泉さんは少し驚いた様子を見せたけど普通に返してくれたし気まずい雰囲気にならないように色々話題を振ってくれて思ったより楽しくお話できた。
小泉さんの印象は一言で言うなら『不思議な人』だった。
仲良くなりたいっていう下心は感じるのにいやらしさを感じない。
その後私達もお昼ご飯を買ってテーブルに戻り何事もなく食事をしたんだけど……
「さて、服部くん達は午後は暇?」
仁美がいきなり午後の予定について小泉さん達に聞き始めた。
嫌な予感しかしない。
微かに残る私の希望を打ち砕くように仁美が放った言葉は『午後一緒に買い物しない?』という小泉さん達へのお誘い。
流石にそれを看過できなくて止めようとしたけど仁美は好きな服を着てあげるとか言い出すし服部さんはまたしてもついてこようとするしで私はもう頭を抱えたくなった。
「仁美、流石にそれは許容できない。なんでそんなに二人を連れて行こうとしてるの?」
「だって綾いつも私と服を買ってるでしょ?同じような服ばっかりになっちゃうよ?服部くんも小泉くんも私服のセンス良さそうだし良い意見だと思ったんだけどな〜」
「う……でも……」
それにしても買い物についてきてもらったり服を選んでもらうのはちょっと……
渋る私に仁美が耳打ちしてくる。
「昼の様子を見るに小泉くんなら大丈夫って思ったんでしょ?服部くんは上手く引き付けておくからもう少しお話ししてみたら?」
う……
確かに小泉さんはいやらしい視線で私を見てこないから少し安心だけど……
でもなぁ……
散々迷った結果仁美に相談したのは私だし自分の中で折り合いをつけた。
「それは……う〜わかった。小泉さん達も来ていいですが私は絶対に変な服は着ませんから」
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