ダブルデート……ではないな
「小泉くん達お昼ご飯?私達もお腹空いてきたからせっかく会ったんだし四人で食べない?」
え………?
でも優は榎本にフラれたんだろ?
流石にお互い気まずいんじゃ……
「いいよ〜行こう」
いいんかい!
そんな即答せんでいいわ!
「ちょっと仁美!」
「え〜綾はそんなにやだ?さっきのナンパの人達と違って二人はクラスメイトだしさ」
「それは……わかった。いいよ」
まじか!
ダブルデートとも呼べないものだけどこれは大きな一歩じゃないか?
「俺と優はフードコートに行こうと思ってたけど榎本さんと長谷川さんはどこに行く予定だったの?」
「私はいいよ〜綾はどう?」
「私もフードコートで大丈夫です」
「決まりだね〜早速移動しようか」
視線が集まるのはそこそこ慣れてると思ってたけど榎本と長谷川がいると男性陣の視線が凄かった。
女性怖いとか思ってたけど男性も怖えわ。
「なんて言うか……二人共すごいね?なんか私達二人でいたときより視線の数が尋常じゃないよ……」
「長谷川さんも同じこと思ってたんだね〜俺達も同じこと考えてたよ。な?達也」
「ああ、二人共美人だからな。視線を集めるのも仕方ないのかもしれないけど……」
「あはは、達也はストレートに言うねぇ〜」
そんなことを話していたらフードコートに到着した。
週末のお昼時だから流石に人が多い。
歩き回っているとちょうど空いている四人席を見つけた。
「さーて、昼食取りに行きたいところだけど荷物番を決めないとね?」
「じゃあ俺と優で待ってるから二人は先に取ってきていいよ」
「いやいや小泉くん。さっきみたいにナンパされたら嫌だし小泉くん達だって逆ナンされるかもしれないでしょ?だからここは私と服部くんで先に取ってくるよ〜」
「え!?ちょっと仁美!?」
え……!?
まさか俺と榎本を二人きりにするつもりか!?
何話していいか分からないしさっきからほとんど喋ってないしナンパ達のせいで不機嫌になってるんじゃ……
「じゃあ行ってくるね〜」
「じゃあな達也。頑張れよ?」
長谷川と優はささ〜っと行ってしまった。
俺達の間に沈黙が流れる。
うん……気まずい……
なんとか喋ろうと俺が頭を回していると榎本が口を開く。
「あの……さっきはありがとうございました」
「え?ああ!全然大丈夫だよ」
「仁美が追い払おうとしてくれたんですけどしつこくて……本当に助かりました」
「たまたま見かけただけだからそんなに大したことはしてないよ。それより二人は今日何しに来たの?」
このままだとずっと感謝に対して大丈夫と言い続けるだけの会話になってしまいそうだったのでとりあえず話題を変える。
あ、でも流石にプライベートの事は答えてくれないかな……
「今日は午後から服を買いに来たんです。昼前に集まって昼食を食べてから買いに行く予定でした」
答えてくれた!
このままだんまりの気まずい雰囲気に戻らなくて良かった……
「そうだったんだね。俺達も服を見に来ていてちょうどフードコートに向かおうとしたらナンパに絡まれている二人を見つけたんだ」
「小泉さん達も服を……何か買われたんですか?」
「いや、俺は優の付き添いであいつは買ってたけど俺は何も買ってないんだ」
「そうなんですね」
「ただいま〜」
「あれ?綾と小泉くん少し仲良くなってない?」
そんなことを話していたら優と長谷川が帰ってきた。
入れ替わるように俺と榎本が席を立つ。
正直ナンパの件もあるし榎本に何を食べたいか聞いて一緒に取りに行きたかったがさっきも二人きりで話せたしこれ以上不用意に近づくのは嫌がられる気がしてやめておいた。
ちなみに俺はデートじゃないはずなのにビビってラーメンからうどんに変えた。
「お、達也も戻ってきたな。遅かったけどどうしたんだ?」
「悪い悪い、何を食おうか迷ってたんだ」
フードコートではナンパが多いと聞いたことがあったので少し不安になって榎本を遠くから見守っていた、とは当然言えない。
昼食は和やかな雰囲気で進んでいく。
先生のこと、成績のこと、最近起こったこと、他愛もない話をするだけでも楽しい。
榎本も最初と比べて会話に入ってきてくれたので凄く嬉しかった。
「ごちそうさまでした!美味しかった〜」
榎本も長谷川もそれだけで足りるのかっていうくらい量が少なかったけど大丈夫なのかな?
「さて、服部くん達は午後は暇?」
「俺達?もう特に予定は無いけど……」
その言葉を聞いた長谷川はニコッと笑って
「じゃあさ、私達は午後は服を買おうと思ったんだけどついてきてくれない?」
「仁美!いくらなんでもそれは……」
は…………?
なんで急にそんな話にもなったんだ!?
その言葉を聞いた優がすぐに俺に耳打ちしてくる。
「達也。お前は今日榎本さんと二人きりで話せたし得るものは得ただろ?女子の買い物は恐ろしく長い。ここは深追いせず撤退するべきだ」
な、なるほど……
榎本も嫌がってるみたいだしここは確かに断ったほうが良いかもしれない。
「いや、長谷川さん。あんまり二人の時間を邪魔しても悪いしここらで失礼するよ」
「ふふふ、今日のお礼って訳じゃないけど着て欲しい服を少しだけ着てあげるよ?」
「行きましょう。達也も行きたいって言ってました」
おい優!
さっきの頼もしいお前はどこに行ったんだ!
長谷川も屋上で俺にガツガツ行くなって言ってたのになんでこんな事してるんだ!?
「仁美、流石にそれは許容できない。なんでそんなに二人を連れて行こうとしてるの?」
ほらもう、榎本の機嫌が下振れ始めちゃったじゃん……
これはなんとしても傷が浅いうちに撤退しなくては……
「だって綾いつも私と服を買ってるでしょ?同じような服ばっかりになっちゃうよ?服部くんも小泉くんも私服のセンス良さそうだし良い意見だと思ったんだけどな〜」
「う……でも……」
負けないで榎本!
俺はもう今日お前と二人きりで話せたしこれ以上自分の好感度が下がるかもしれないことはしたくないんだ!
すると長谷川が榎本に耳打ちする。
「それは……う〜わかった。小泉さん達も来ていいですが私は絶対に変な服は着ませんから」
榎本陥落。
何言われたら俺達との買い物を了承する流れになるんだ!?
結局榎本達の買い物に付き添うことになってしまった……
優!お前後で覚えてろよ!
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