強力なアドバイザー
そして一週間はあっという間に過ぎ時は今。
「進展が無さすぎる……」
俺は今絶賛撃沈中。
「まぁそう焦るなって。まだ一週間だろ?」
「そう言われてもな……」
優からかけられた慰めも全然慰めになってない。
俺は所詮女子と会話することも許されない人間だったのか……
「うーん。そんなに落ち込まなくてもいいのに……そうだ!長谷川さんに相談してみれば?」
「長谷川さんに……?」
確かに長谷川は榎本といつも仲が良さそうだ。
しかも榎本と違って長谷川は気さくで話しやすい。
まさにこの案件の相談にうってつけの人材じゃないか。
「なるほど……その考えは無かったな。焦って視野が狭くなってたのかもしれない。ちょっと聞いてくる!」
さっと教室を見渡し長谷川を探す。
長谷川はロッカーの近くで榎本と一緒に1限目の準備をしていた。
善は急げだ。もうホームルームまであまり時間がない。
「長谷川さん!ちょっといいかな?」
「え?私?」
長谷川は驚いたようにこちらを見てくる。
「小泉くんどうしたの?」
「長谷川さんと話したいことがあるんだ。放課後屋上に来て欲しい」
「えっ!?」
俺がそれを言った瞬間教室がシーンと静まり返る。
「小泉くん榎本さんを狙ってると思ったら長谷川さんまで……?」
「放課後屋上って告白か?」
「そんな……長谷川さんを小泉にとられたら……」
あ……やらかした。
焦ってめっちゃ告白っぽい言い方になっちまった!
「あ、あの……長谷川さん」
「わかった。いいよ」
まずい!告白という誤解を解かなくては!
しかし運悪くチャイムが鳴りホームルームが始まってしまう。
誤解を解くのを諦め自分の席に戻る。
「お前どんな言い方してんだよ。もっと言い方ってもんがあるだろ」
隣の席の優が話しかけてくる。
くじ引きで席替えをしたはずなのに優がたまたま隣になったのだ。
「う……じゃああの場面はなんて言うのが正解だったんだ?」
「わざわざ屋上に呼び出す必要もないし聞きたい事があるって言っとけばよかっただろ」
な、なるほど……
「誤解を解かなくて大丈夫かな……」
「大丈夫だと思うよ〜」
「なんでそんな事言い切れるんだ?」
「見てたら分かるけど長谷川さんは別にお前のこと恋愛的に好きって訳じゃなさそうだったから」
よく分かるな……
俺はどう考えても俺じゃなくて俺の容姿が好きで寄ってきた女子しか分からん。
あの人たち目が捕食者みたいで怖いんだよ。
「よく見てるんだな」
「まぁ人間観察は趣味みたいなもんだからね。慣れると色々見えてくるものがあるよ」
「将来観察からストーカーに変わっていないことを祈るよ。それよりお前に頼みたいことがある」
「なんだよ改まって」
「俺と一緒に屋上に来て欲しい」
どんな情報が有益とか分からないし何よりもこいつが一緒にいると心強い。
ほら、信頼できる人が近くにいると安心するだろ?
「なんで俺がフラれた相手をオトす為の情報を聞きに行かないといけないの?」
「おい!お前がそれを言うんかい!」
自分がフラれた相手を幼馴染に惚れさせろって言ってきた奴のセリフとは思えないぞ!?
「はは、冗談。別にいいよ〜お前一人で行かせたら少し不安だし」
「どういう意味だよ?」
「ただ榎本さんについて聞くだけでクラスメイトに長谷川さんに告白するって誤解された奴になんで不安にならないの?」
「すみませんでした」
そして時間は過ぎ放課後。
俺は優と一緒に屋上で長谷川を待つ。
「小泉くんおまたせ!あれ?服部くんもいるの?」
そんなに待たずして長谷川が現れる。
「ああ、同席してもらった」
「こいつが長谷川さんに榎本さんについて聞きたいんだって。こいつを一人にすると不安だから俺はただの付き添い」
「あ~綾について聞きたかったんだね!それだったら屋上じゃなくても良かったんじゃ……」
「その件はごめん」
確かに今思えば屋上に呼び出す意味は全くなかった。
「別に大丈夫だよ!それで綾について聞きたいんだよね?あの子は男の子があんまり得意じゃないからガツガツ行くのは得策じゃないかもね。少しずつ信頼を得ていくのが大切だと思うよ」
その後も榎本の好きな事だったり食べ物だったり色んな使えそうな有益な情報を貰えた。
「こんなものかな?」
「ああ、ありがとう。助かったよ」
「小泉くん……綾を傷つけなかったら私は何も言わない……だから、それだけはよろしくね!」
長谷川はそれだけ言い残し走り去る。
「俺がわざわざついてきたんだ。この情報絶対に活かせよ」
「ああ、ガツガツ行くなって言われたし焦らずゆっくりやることにするよ」
そう決意した達也だったがすぐにその決意と裏腹に榎本綾香と急接近することになる。
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