伯ギル2

リリとユニアムが美味しい茶とあまい茶菓子を黙々と頂いていると唐突に部屋の扉が開き、女が現れた。


「待たせましたね」


黒髪、赤い眼の美女と抜けた様に白い少女が数名の侍従を引き連れて入室してきた。


ユニアムが立ち上がり、口を開いた。


「ユニアムです。先ずはお招きありがとう。こっちはリリ、地下迷宮で縁あって一緒に行動してます」


象牙の髪のエルフの少女、リリがゆるく膝を折る。


黒髪の女はリリに目をやり軽くうなづくと二人の向かいへと腰を下ろす。


ユニアムが腰を下ろし、リリがその後ろへと控えようと長椅子を回り込もうとする。


「リリ、あなたも椅子を使って。都衛から報告は受けてます」


「あ、それじゃ・・・」


ユニアムの横にリリが腰を下ろす。


二人を見据え、女が口を開いた。


「私はギルキスのマグラレーテ、この都市の督に任じられています」


ユニアムとリリ、二人のアゴがかくーんと落ちる。


「ユニアム。あなたには、この子の専属治癒術士となって欲しい。期間は三年、トリエステル魔法学園の就学期間ということになる」


自分の隣に座った白い少女のうなじをなぜ、眠そうにとろんと落ちた目をしばたたかせている頬をぺちぺちと軽くたたくと、横の侍従を向いた。


「条件他は我が家宰と詰めて欲しい。・・・そしてリリ、この通りうちの子は快癒しています。ご苦労でした」


瞑目し軽く頭を下げる二人に笑むと、女主人は退出していった。


その場に残った執事風の男がリリの前に巾着を置く。


「お足代です。どうぞお受け取りを」


「あ、ありがとう・・・先帰ったほうがイイ?」


執事が青紫の巻き髪の少女を向く。


「ユニアム様との交渉になりますので、当人が差し支えなければ・・・」


「い、いてもいいのよ」


「じゃあ、お茶もおいしいしお邪魔してよっかな」


二人は互いにぴったりと身を寄せ座りなおした。


家宰といわれた執事風の男は眉をよせ言った。


「警戒するな。別に先程の無礼はとがめだてせぬ」


安堵するように息を吐いたユニアムにリリが問う。


「無礼・・・なんてあった?」


「爵もってるヒトにあたしらいっぱんぴぽーはクチきいちゃいけないのよ・・・しかも顔合わせ一番、目もコトバもタメ・・・同格の物言いだったでしょ・・・ああ、死にタヒ・・・」


「・・・ああ!跪いて顔を伏せる場面だったのね!・・・ユニアム、終わったわねあなた」


「ああ、いいとこのお妾さんになるために守り続けてきた処女が・・・」


「どうせだし散らしとく?マルコシ(なりゆき闇の眷属)とか可愛い系てユニアムの好みそうだし」


タンタン、とテーブルに良い音が立ち二人の女はとりとめのないダベりを止めた。


「話を聞け」


「はい」


「誠に申し訳ございませ」


静かな執事の声に二人の女は悄然とし頷いたのであった。


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