都督

「なーにギルガメスの酒場いかないの?」


「うん、オトコと待ち合わせ」


ユニアムは目を見開く。


「はー、親友の生還祝より男を取るなんて・・・まぁ、アンタらしいや」


「ユニアムは好みじゃないでしょ、さっきの衛士さん」


「ん・・・え?好みだったら一緒に食おうとかいう話?一本しかないのに??」


「うん」


「あんたら腰振ってる間、同じベッドであたしナニすんのよ」


「ちゃんと三人で遊べるおもちゃたくさんあるから」


うへ、と漏らしてユニアムが体を離す。


「あたしは経験もないし、夢もムードもシナリオも無いマルチプレイはおことわり。じゃね」


「うん・・・あ、都督から招聘があったよ?」


「ええ?召喚じゃなくて?あたし程度のしかもヒーラーを?今の都督て伯でもかなり高貴なお方じゃなかった?」


「いつでもいいから屋敷に来てくれってさ。いってら〜♪」


「そーね、千年後くらいに行くわ」


「あ、ユニアム〜。領主・・・じゃなくてここの都督んとこ行くよ〜」


現れた象牙色の髪の少女がユニアムの肘に腕を回す。

ボーナはほほえみながら手を振る。


「行ってらっしゃい」


ユニアムよりも象牙の髪、リリがボーナへと向き語りかけた。


「あ、リリです。ユニアムとは地下・・・の迷宮だっけ、で知り合ったの」


白い金髪碧眼の少女のボーナは長い杖を白くたっぷりと膨らみのある袖で包み抱えながら答えた。


「・・・ボーナよ。ユニアムとはこの街に来てからの付き合いなの」


「あの、警戒してる?ユニアムに悪いことはしないから」


「警戒というか・・・あたし、あの店にいたから」


リリが首を傾げる。


「あの店て・・・ああ、ゴッド属な女の子がいた宿屋ぽい食堂んトコ?・・・え???あそこに居たの!?」


すでに歩き始めて十歩ほど進んだ先からユニアムが振り返る。


「おーいリリ!はやく!」


「あっ、じゃあまたね」


困り眉に愛想の笑みを滲ませ、去りかけに手を挙げるリリ。


「うん。夜はいつもギルガメッシュの酒場・・・禿頭のマスターのいるトコにいるから」


手を振るボーナ。


「そう、きっと行くわ」


笑顔で答え、ユニアムの背に向かいかリリは駆けていった。


その小さな背を見送り、ボーナは呟く。


エーデルシー高貴な妖精族のハイジを公衆便所にした女、か・・・あのとんでもない魔法少女といい、灰燼に帰したという魔都エルグランデといい、どうなってるの?」


たしか、ヘルミーナと言ってたわね、そう呟きボーナは目を瞑り衛士の駐屯所の壁に背を預け、その少女との邂逅を思い出す。





(あれはあたしが、シュータートラップへ突き落としてしまったユニアムをなんとか救出しようとサルベージPTを組もうと奔走していた時だった・・・


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