深き迷宮からの帰還
じゃあ帰るか、と天使様は麾下の眷属を引き連れこの巨大なホールから出ていく。
慌てて追いかけると、給仕してくれた巻き毛山羊角オトコに抱え上げられた。
「きゃ・・・あれ??」
何故かいつのまにか黒いつややかな鬣(まきまきの縦ロールだった・・・)の黒馬に横座りしていた。
山羊の角が付いた馬てなんなの・・・
「あら、いーじゃんその馬。どこにあったの?」
「御付きの方が・・・ひゃ」
乗馬が天使様の前でゆっくりとヒザを折る。
「乗ろっか」
あたしを挟んで、黒白の美少女が座る。
え・・・やだ落ち着かない。
「で、さ。あなたお貴族サマだったりするんでしょ?それともお姫様??」
「いえ、あたしの家は…」
天使様に来歴を開陳する。
教国といわれる宗教で国を統べる国家にいたこと、エフロンという僧会に属する家のうちで中位の家の息女に生まれたこと。
パイロンという巫女系の対立閥からの姦計にかかり高位の僧の性的な暴力にびっ・・・耐えきれず殺害してしまい、家から放逐されてしまったこと・・・
「へえ~、宗教関係者ならちょっと騙すのも気拙いから言っとくケド・・・あたし、ソラリス?とやらの関係者じゃないわよ?」
「へ?」
そんな・・・まさかやっぱり、なんて疑念と確信が裏腹に合わさった混沌という不安が胸に広がってゆく。
「あたしをここに送った奴てオトコだったし・・・羽生えてたから天使ぽかった」
「羽根・・・トリスメギストス様?!」
世界・・・宇宙の創造神様じゃない!
「トリ・・・ネギスト?」
天使様がかわいらしく首を倒しながらのたまう。
なにその鍋料理みたいな名前は・・・
「天地海の三界を作られた創造神様です」
「ああ、三のトリ、ね。剣道三倍段みたいなもんかあ」
「トリスロギスパス・・・剣の術理の神、ですか」
「ちゃうちゃう、素手は剣に勝てず剣は槍に勝てない・・・みたいな話よ」
「・・・術理としては、なんか・・・不思議ですね。当然のような・・・」
「男はなんか3て数字が好きなのよ。三人そろってRGB!て崖の上に立って笑うの」
天使様の気安い感じにもなれてきて、会話を楽しめるようになってきた。
「あーる、じい、びい・・・光の神の三柱に似た名前があります。アル・コキノス、ジィ・ブレー、ビ・ブラシノス・・・グラセフ・・・どっちだったかしら」
「ふぅん・・・光のスペクトラムの三つの波長なんだけど、便宜的に可視光の原色として三つの相関と輝度で全ての色を翻訳・・・コード?してるんだって」
三つの色が重なった真ん中の白の間にある見えない色を~、とか、神て結局、便宜的な属性分けの大元なのかもね~、などと畏れを知らぬ物言いをなさる天使さま・・・否定なさってるけど・・・あれ?なんてお呼びすれば?
「あの、なんとお呼びすればよいのでしょう・・・あ、御身を、です」
「え”っ!!!!!・・・なっ、なま”え”・・・・なんでそんなこと聞くの・・・」
「いえ、聖名ではなく・・・はっ?!」
思わず黒馬より跳び降り、石や泥の上に伏し
「神の身上に触れたる無礼、何卒この身を捧げることにて懺悔致したく恐れ畏み伏して言上仕ります」
並ぶことすら畏れ多いのに御許を詮索・・・なんという不遜、死どころでは償えぬ大罪!震えるこの身へ下されたコトバは、柔らかく、暖かだった。
「よい、許す」
強い腐臭の汚泥に塗れたこのカオを、滑らかでちいさな手が優しく掬い上げる。
「キレイになれ~パタパタ。泥に顔をつっこんだらダメよ?・・・って、命がけの生業だもんね、説教なんてくちはばったいか。ごめんね?」
「そ、のような・・・畏れ多く」
「フフ、その方には直答の他、同格の物言いを許す。我が名はタ・・・タレイア?・・・アグライアのがかっこいい?よし!アグライア・グレイス。リリーと呼ぶがよい」
「リリ様・・・」
「つか神様ごっこ疲れるからフツーに話してよフツーに。まぁムリしなくてもいっけどさ」
真昼の太陽のような笑顔があたしの胸の様々な疑問、不安を吹き払ってゆく。
同世代の気の置けない友人(いないけど・・・ボーナめ!)のような、軽やかで明るい笑い。
そう、この御方・・・リリも友人を求めている。
ならば、この身程度の命捧げようと御意に沿うは信徒として当然の仕儀、いや使命であろう。
「。。。うん。じゃ、よろしくねリリ!」
「さっそく呼び捨てか無礼者がー!ズビシ!」
「痛ったッ!ちょっと、いまのフツーに痛かったよ!」
「ああ、あんたにも無敵バフセットかけとくから・・・はいパタパタ~」
マジで痛かった・・・おっぱいが。
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
こんかいの仕儀は合ってるのだろうか・・・成り行きのがいいのかな
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます