おかね
「闇の深さを知らぬものに光は救いとはならぬ・・・征け」
「承知したァ―――――ッ!」
やっと消えた・・・
「おかみさん、ごめーん・・・金貨受け取って」
疲れた・・・
「あの、わたくしにも御身の奇跡を賜りとうござます・・・」
そんな!お姉さままでオトコ劇場の精神汚染に・・・
「あ!そーだ、実は洗浄魔法で・・・」
数分かけ、お姉さまを皆伝の高きへと押し上げた。
「これは、すごい魔法です!世の中を変えますね・・・」
「でしょー、あとはナイロンと自動織機開発したらもう前世霞むわマジで」
「このワザは継承可能なのですか?」
「たぶん、城の子供も使えたしイケるとおもう。教え方は~」
伝承シーケンスを事細かに教える。
やはり生活が激変するからか知識と技術の伝播はスムーズに完了した。
仕上げにいろんな加護系のエンチャントをパーマネントで掛けた。
「なんかごめんね、変な金貨わたしちゃって」
「ウフ、貴重な体験をさせていただきました」
「あ、あと空き缶結晶化したら青い石できたからあげる。磨いたりカットしたりして使って~」
「こっ、これは・・・」
お姉さまが硬直してしまった。
え?いいモノとかだったの??
なんか惜しくなってきちゃったから早く帰ろう・・・手を振って別れる。
しかし他人の頭覗くとか短時間で百年分くらいのドラマ見た気がするわもうやりたくねえ・・・
というわけで謎の金貨を回収しギルドで受け取った袋を置いて出る。
救世主はまだ寝てた。
「あーあ、気持ちよさそーにいびきかいちゃって・・・」
かおぺちぺち叩く。
「ん~・・ん?おう・・・寝ちまってたのか」
「(お姉さま慰めてあげて)」
「え?・・・ああ、なんかわからんがわかったぜ」
いちおお姉さまと同じ加護系バフパッケージを掛けて店を離れる。
え、何処行けばいんだろ・・・宿?
とりあえず大通りに面してるあのデカい飯屋みたいなとこで訊くか・・・
西部劇みたいな高床へ木の階段を数段踏んで上がる。
ギシギシ。
吹きさらしの食堂?にテーブルが五卓。全部埋まってるわ・・・
ウェイトレスの素朴な美少女が一生懸命て感じに給仕してる。
今もデカい盛り付けの皿をわたわたと運んでいた。
「おいおせーぞ!はやくもってこい!」
「はーい!ただいまあああああ!!!!!!」
ウェイトレスねーちゃんはビタ!と止まると、テーブル叩きながらはよはよ!と怒鳴る大男に大皿を投げた。
ばちゃーん!と音を立てテーブルに落ち、跳ね返った皿が男の眉間に当たる。
幾つかの笑い声が上がっったが、店内の騒音に変わりはない。
飛散した食い物に塗れた男が立ち上がると、ウェイトレスは軽い足取りで近づいて行った。
「お帰りですか?!お勘定まだですよ!」
手近まできたウェイトレスの首を、男が掴む。
男はそのままなぜか膝を付き、空いた手でゴスゴス殴るが、肉が潰れるような音と共に止めてしまう。
ウェイトレスの首を握ったウデをぷるぷるさせながら。
少女は殴られている間、男の体をまさぐっていたのか布の包みと巾着を取り出すと、叫んだ。
「五名様お帰りでーす!」
自分の首を掴んでる男を同じサイズの風船がごとく軽々と持ち上げ、吹きさらしの柱の間から大通りに投げ、テーブルの残り四人を向いてテーブル・・・大男が五人着いてもまだ余裕がある・・・をパタパタを扇ぎながらつま先を床に鳴らしている。
三人は両手を上げ、静かに退店していった。
一人は高初速で打ち上げられたテーブルにアゴをヒットされてしまっていたのか、首を変な形に曲げて床で死んでいた。
テーブルを静かにおろし、溜息をつきながら屍体へと歩むウェイトレスを慌てて止める。
「ちょちょちょっ!あたしもってく!それあたしもってくから!!」
「ひゃっ!」
女の子が尻もちをつく。
あれ?
「ご、ごめん思わず重機レベルかと・・・」
縋ってみたらふつうな女の子の感じだった。
「一名様ですか?」
「え?・・・あ、はい一名様です!」
なんで敬語なんですか?!あたし。
「ここ開いてますのでどーぞー!お酒もってきますね。食事は?」
全然にけなげで明るい笑顔が怖い><;
「あっ、つまみになるもん適当にお願いします!これで」
ビクビクしながら金貨を一枚渡す。
「はーいw十人分くらい出せますけど・・・」
「あ!じゃあ十人分で!あたし大食いだから!!!!!」
めたくそ必死に自虐アピールしてしまった・・・
ウェイトレスは健気感を振りまきながら走ってった。
「はぁ・・・」
倒れてた椅子を二脚起こし、倒れていた男を治癒魔法・・・まだ生きてたのか?・・・で復活させ座らせ、隣に座る。
「ん・・?あぁ、なんだ・・・お?ねえちゃん美人じゃねえか」
目覚めた男はあたしの肩を掴み、突然倒れ掛かってくる。
接近する顔を優しくとどめ、椅子に座らせなおす。
・・・・・うん、やっぱあの娘、あたしと同じゴッド属なんだ。
「んん・・・なんか力が出ね・・・え・・・いや、そんなことねえな」
男は拾った剣を妙な音立てて曲げた。
「あー、ちょっと!曲げちゃだめでしょ・・・」
酔っパはコレだから。
取り上げて曲げなおす・・・ダメだ、真っすぐにはなおらないよ。。。
「はいおまちどーです!あとからどんどん来ますからねー」
ウェイトレスが酒ゴブ(レット)とつま皿ドン置きして去ってゆく。
その皿からサカナ(川魚?・・・いや、川あったか?)ぽい何かを掴み口に放りながら男がコッチを見る。
「あんた随分チカラあんな・・・ゴリアテか?」
「ゴリ・・・え、そんなコトないわよ。酔ってるんじゃない?」
ヒゲでわからんかったけど、やっぱこの男もかなり渋顔のイケメンである。
マジ顔で見つめてきて照れる。
「あ!おまえあんときの・・・ギルドの案内エサに俺らを食おうとしたエルフ!」
殺すか?
目で素早く食堂の気配を探る。
気配どころじゃねーよ・・・みんなめたくそガン見してきてる。
・・・え?なんでみんな注目してんの??
あたしはゆっくりと、テーブルの上に両腕を組んで、そこに顔をうずめた。
「うっ・・・あたし、なんでそんなコトいわれなきゃ・・・ひどぃ・・・」
バンシーもかくや、てくらいの
「ちっ、酒が不味くなっ・・・あ、ちげーよ!おまえ潜らねえか?」
ふてくされて酒に戻ろうとした男が突然あたしに向き直り後頭部に手をおくと椅子から転げ落ちた。
「だあっ!・・・鉄の置物かよおまえは・・・」
椅子に座る男を何の気なしに観察する。
「手、ダイジョブそうね・・・」
「ん?・・・あ、ああ!・・・肉まではいってねーな」
手を矯めつ眇めつし、再び酒とつまみに戻る。
あたしの髪の毛、カミソリの束みたいなもんだからな・・・このおじ結構強いのかな。
あたしもツマミに手を伸ばす。
・・・なんだこれ、ああ・・・・・とかげ?
トカゲの姿焼き、て感じだがなんかもう自分が最強すぎてこういうものに全然忌避感がわかない・・・うーん、
もしゃもしゃ食ってしまった・・・まあ、うまい。
油で揚げて欲しい。
酒はぬるいがほどほど芳醇。
つかホップあんのかこの世界。
目の前に絶世の美少女エルフが座る。
店の奥へ手を振り、指を一本立てている。
「はーい!ただいまあ!」
顔をこちらにむけた。
うーん、あたしの顔もこんな感じなんかな。
ウェイトレス少女がドン置きした酒を取りあたしのツマミに手を突っ込みながら、薄いピンクの唇を開いた。
「この町にも、おさるさんがいたのねえ」
ふーん。
猿かあ、危険なヤツ等よね・・・あ、でもいまゴッドだし平気じゃん。
「あなたのことなんだけど、おさるさん?」
あたしにツマミのトカゲを投げつける。
カラリと焼かれたトカゲが、あたしのアタマにサクッ!と刺さった。
「まあ、似合うわ」
エルフ女はめたくそ笑い始めた。
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