金貨シンドローム

「もう、酒の飲み方がなってないわね~!いい?!こういうキンキンに冷えたのはガンガンいくの!のど越し!肉のアブラとうま味をホップのフルーティな苦みでスキッ!と一気に臓腑へ流し込む!飽きたら肉!失くなったら、常温系のエールとか黒にチェンジ、液体のごはんを味わうような感謝の気持ちでゆっくりと頂くのよ・・・つまみ?はぁ?ビールへの誠意が足りないねえあんた!」


「うあああ!俺は、こんな素晴らしい酒を知らずにいままで・・・今までの人生はクソだ!ほんとうに、真実の生ってのがナニかなんてわかっちゃあいなかったっ!!人生とは信仰とは神とは宇宙とはナニか?!それはただ、全てこの酒の中にあったのに・・・俺はッ―――――!ぐびびびびび~~~~~」



周囲の生温い視線が酔ったあたしらと増え続けるシルバーに輝く空き缶に注がれているのに気づいたのは、ちょっと酔い覚ましにとウーロンハイを飲んだ時だった。


いつの間にか静かになった横を向くと、救世主は椅子から落ちて死んでいた。


・・・いや、心臓は鼓動している。


寝てるだけか・・・



空き缶片すか・・・ええ、十何本あんのかコレ、飲みすぎだろ・・・


キレイになれ~~~~パタパタパタ・・・



「消えぬッ!」



アルミて原子だよね~たしか結晶化すっと宝石(天然結晶が宝石なだけで結晶ブツは普通に金属的なスペクトラム(使ってみたかった)を持つ)になるから鉱石(有るが抽出がめんどいせいなのか勃起斎とと呼ばれてる)はないんだっけか・・・


宝石か・・・



「結晶化しろ~」パタパタパタ


空き缶の山が消え、小指の先くらいの青く澄んだ石が出てきた。


「地味ね~・・・研磨もカットもされてないからか・・・」


お土産に置いてくか。


「ああ、勘定わすれてた・・・おかみさ~ん」


救世主を椅子へ乗せ、店に入る。


「あ、これはいらせられませ」


金貨の問題はおくびにも出さず優雅にヒザを折って迎えてくれる。


うれしい・・・


「先日はごめんね、さっき店主から使えないって聞いて・・・はい!コレ、代わりの金貨・・・あ、あそこのティーテーブルでいいかしら?」


重いと思う・・・風船くらいにしか感じんけど。


「ありがとう存じます。・・・お逃げください!」


え?


お姉さまの首が落ちる。


あれ?人形?


一回だけ吹き上がった血の柱を見て、慌てて落ちた頭を拾いあげて、切断面にくっつける。


なんか左右の虫がうるさい・・・お姉さまの周囲の時間をちょっとだけ遅くする。


「ギャアッ!」


虫の一匹が半身をもがれ、切断面から血を吹き出しながら倒れる。


え?なに??自爆??!?!


だが、半身が中空に縫い留められたかのように浮かんでいる・・・お姉さまの周りの時間を止めた、僅かに暗くなっている空間の中で。


あぁ、時間の境界に立ってるとそうなんのか・・・こわすぎだろ!ヤバイ時間魔法やばいよ!


お姉さまの周りの時間・・・僅かに暗くなった空間には、その倒れた男の半身ともう一人の男の腕があった。


「なんで取れちゃうんだろ・・・ねえ、あんたわかる?」


右手でやさしく掴んでいる男を向いて尋ねる。


男は口から何かを飛ばすが、あたしのまつ毛で弾かれる。


「お姉さまにしたことは許さないけど、あなたには一応の評価はあるのよ?」


虫のようにうるさく手足を動かしまくっているので、全部捥いで傷をふさいだ。


男は一言も苦痛を漏らさず、口を固く結ぶとガクリ、と頭を落とす。


「治れ~ぱたぱた・・・」


死んだふりかw


「あなた、お酒は好き?」


男の脳内の電磁気的な流れを自分の脳モデルでコンバート、デコードしイメージ化する。


手の酒をぶちまけてきた女の顔と、国章か・・・ドラゴンぽい横顔に北斗七星の並びで四つ角の星が配置されている。


「その女の名前は?プッ、ピチピチハニー三世www」


さすが刺客だ、すかさずに別の名前を思い浮かべたのだろう。

凄腕、てヤツ?


「くっ、頼む、忘れてくれ・・・」


「マジでそんな名の女がいんのかよ・・・」


ピー・チピーチらしいが、英語だとおしっこのあとに舌打ちの間にまたおしっこ入る感じで・・・意訳するとおしっこじょわじょわ~~~wwwみたいな感じになんのか?


そいや昔のカレがバイク乗るときへんな上着に背負ってた看板がピーストーマーズで意味を利いたらおしっこ旋風団や!てすげえドヤ顔で・・・昔話はいーのよ。



「じゃあまず、何しに来たの?」


「・・・・・」


「その女が金貨欲し―つて皇帝が・・・あー、え?お后さんじゃなくて妾、側室・・・ああ、傾城て奴かwわかってんなら・・・ああ、そこまで・・・」


とりあえず出血多量だかショック死かで死んでた男をリザリザ~☆で復活させお姉さまも解放蘇生させ汚いもん全部キレイキレイで消し飛ばし掴んでた男の四肢を生やす。


魔法凄すぎなのでは?


「お姉さまにへんな傷もないし脅しはスマートに、殺害はほんと見事一刀で済ませてるし、上からの目線で悪いけどめたくそ評価してんのよあたしは」


ほら、正座しろ正座。

とりあえず叩いたり蹴ったりして二人を座らせる。


「殺されるなら、さっきのお姉さまみたいになーんもわからずサクッと奇麗に殺されたい。でもこんな世の中だし、つかこの町にくるまえにあたしも遊んだ・・・遊ばれたように、涙や痛み、苦痛の最後の一滴までクズどもの感興を昂らされるおもちゃにされてみんな死んでゆくのよ・・・そんな世の中で、尊厳を守りつつ速やかに死を与える心と技術を持つアナタは貴重な存在なのよ。わかる?」


いや、あたしは自分でナニ言ってっかわかんないけどね。


多分酒抜けて無い。


「人の頂点にある身で堕した屑に、あなたの忠誠は過ぎた輝石よ」


腰の細剣を抜く。


「豚に真珠の価値はわからない」


えーと・・・肩を叩くんだよな。ひっく・・・


カツーン!


やべ、全白眼で見上げられてたからか脳天に打ち下ろしちゃったよ・・・死んでないしいいわもう。


「お前のワザ、心、その二つを駆動する忠誠の有り所はこの我にこそ相応しい!この世でもっとも美しく、もっとも強い、神の座を冠する名の種に生まれしこの我にこそ!」


ちょうど剣が当たってるので、そこにどっぴゅんどっぴゅん流す。

何を?なんだろう・・・ウフフ、魔力?


「フフ・・・人だ国だ、魔物だ魔王だ、全てを些事に過ぎんと片手で掃える力をおまえに授けた。今より我が犬と成れ。我が意を忠実に、千も万もの距離が開こうとも僅かにも漏らさず完璧に実行する犬に・・・征け!」


「ハハァー!」


消えた。


・・・いいか。


「あの、私は・・・」


ああ、半身ヤツいたわ。


「え?部下とかじゃないの?」


「はあ、相棒というかそんな感じです」


「じゃーあんたにも無敵パワーあげよっか?」


「ええ・・・あの、あいつと同じかっこいい感じでおねがいします」




プレイかよ!!!!!!!!!

カネ払えやぁあああああああああああ!!!!!!!!

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