冒ギル4

奥さん大切にするダンナていいよね~・・・いや、子供生んだ後が本番だから。

この男と妻はまだ試されてはいないのよ・・・愛のエントロピーを。


「ここだ!この中で我妻は苦しんでおるのだ!」


扉の中からはたしかに、女の苦しむ声と励ます声が聞こえるが、これは・・・


「分娩・・・出産中じゃないの?」


「そうだ!こんなに苦しそうだというのに、我は何も・・・」


就いてきた二人のガーズに視線を送る。


「・・・ま、男はなんもできねーよな」


「痛みを止めるなどはできんのか?」


「いや・・・できるけど死ぬよ。赤んぼが出掛かったまま寝ちゃったり、たぶん心停止したりあるとおもうし」


たけし生んだ時に助産婦だか看護師さんだかに脅されたことそのまま言う。

ほんとは全然大丈夫なんじゃないのぉ~?

死ぬとかどーでもいいから楽にしてくれ、と心底思ったが助産婦だか看護師さんだかが怖くて言えなかった・・・・・懐いすぎるw


「まーうんこ・・・邪魔はしない程度に付き合ってくるよ、それでいい?」


「ついていきたいが」


「衛生的理由で遠慮してほしい・・・お腹に刃物はいると、たいてい死ぬでしょ?産褥の病とかこっちにもあるんじゃないの」


「どうしますか、マスター」


「ああ、僅かなりとて力になってやってくれ・・・たのむ!」


「はじめにいっとくけど、女のシゴトだからね。恩にはきせないわ」


取っ手を引き、ソッと入る。


「誰だい!」


「邪魔はしないわ。お湯と空気のタオル出すから使って。出るモノは全部まかせて」


水蒸気で色を付けた圧縮空気の帯を亜麻布が入ったバスケットの横に積む。

タライの汚れたお湯を手で扇ぎ、洗浄しつつ温度を上げる。


既に頭が出かけている産道の下の汚物を扇いで消滅させ、吹き出す度に続ける。


魔法便利すぎじゃん!!!!!!!!!


妊婦さんは痩せすぎでも太りすぎでもなく、顔色もいい。


出産は滞りなく終わり、産湯に漬かり洗われ清潔な亜麻布でくるまれギャン泣きが落ち着いた赤児を抱く新生母親を眺めながらあと片付けに勤しむ。


股の間を念入りに浄化し、死の魔法()で完全殺菌した亜麻布をあてがい下半身をシーツで覆うと、父親を入室させガーズにも開放する。


洗い物を扇いで浄化する。


「えー、それ便利ねえ。あたしにも教えてよ」


「んー、奇麗になれ~てパタパタ扇ぐだけなんだけど教えられんのかしらコレ・・・」


「こう?きれいになれ~パタパタ・・・まあ、無理だよねえ」


んー?なんか手のカタチがちがう・・・

お姉さまの手をとり、指導する。


「そうそう、はいどうぞー」


「キレイになれ~~・・・おおー!」


お姉さまだけでも、血や糞尿に汚れた布が真っ白になった。


うーん、すごい。


「じゃあ次はお姉さまからお姉さまへ技術の継承が可能か確認するわよ!」


「どんとこい!」



そして十数分後にはその場に居る全員が洗浄魔法を習得した。

更に、その汚れを消滅させる技術を体得した後に目指すものといえば。


そう、自分の体への発動と省力化、発動方式の長期継続・簡素化である。


そしてそれはなされた。

もちろん、誰もが継承可能な技術として。


今日という日はこの城の女たち、ゆくゆくはこの町の女たちから女の煩わしさの一部が恒久的に解消された記念すべき日となった。


その後はガーズ達とハンドサインだけで離脱の意と許可を確認し城を出た。


城門を誰何も無く(いいの?)抜け、街へと下りてゆく坂を見てめんどくさくなり水素浮輪で飛ぶ。


うおおおお!!!!!!


浮輪だと重いアタマが下になってしまう!


ぶら下がるように持ち替え、それっぽい建物を目指して降りてゆく。


署の前に降り、中へ入る。


「はろはろ~~~」


相変わらず死んだように座っている受付。


通り過ぎ、左手の端にいるDへ向かう。

Dもこちらに気づき、手をふる。


「やあ。査定は終わったよ。マジックバッグはあるよね・・・はいコレ」


めたくそでかい、五キロのお米袋くらいの頭陀袋が五つカウンターへドン置きされた。


ひとつの袋を開くと、めたくそ金貨が入っている。


えええ・・・ひょっとして金てそんな価値ないのかな?


だったらぱんつ買ったとこ追い金もって行かんとやばいな。


「ありがと」


礼をいって胸に下がったポーチへポイポイ放り込んだ。


「欲しい部位とかはなかったのかい?」


「うん、よくわかんないし」


「そうか。あと、うちのギルマスが会いたいと言ってたから、もしヒマだったらそこの階段の上の突き当りにある部屋行ってみてよ」


んー・・・行っといたほうがいいかなあ。


「まぁヒマだし・・・いってくる」


なんか別れ際に手を振るのはみんなやってるので使う。


ギシる階段を上り、窓から差し込む明かりにホコリがチラチラ立ち上る廊下を歩いて突き当りのドアをノックする。


あ、ノックの文化(?)てあんのか?


「入れ」


おkらしい。


ん?あれ、押すのか・・・入る。

廊下とは違って、窓も大きく室内は明るい。

絨毯やタペストリー、革は張ってあるが固そうなソファ。

その前の重厚なテーブルと比し、ギルマスらしき男が座るデスクは大きいだけの質素な実用本位といったものだ。


「ふん、美女だな・・・エルフか、何用だ」


「下のヒトから呼んでた、て聞いたんだけど・・・昨日ドラゴン?持ち込んだもんです」


マスターの眉間のシワが深くなる。

うーん、イケオジ。


「赤の古龍を・・・おまえが?」


「古龍だかしんないけど赤い奴ね、カワラみたいな鱗の」


あっ、カワラ通じんのかコレ。


「・・・とりあえず報酬は金貨五袋を用意したが・・・足りるのか?」


「あたしここの国て初めてだから価値とかわかんないし、緊急にお金が欲しいからアレでいいわよ?」


・・・なんだ?

値切ろうとすんなら兎も角、乗せて良いようなハナシ振ってくんのおかしくね?

やっぱ金てあんま価値ないんか???


「後から別の相場を知って、奴を倒せる戦力をもって恫喝されても困るのだが」


ああ、そゆこと・・・そんじゃ上乗せしてもらおっかな。

グフフ・・・


「恫喝なんてしないわ。それに、報酬にうしろめたいところがあるのなら・・・」


机の上に尻を乗せ・・・うっ、高い。

剣帯を解く。


「美女だ、って言ってくれたわよね」


髪を片側にすいて垂らし、ワンピから剥きだした肩を抜く。

行為とは裏腹に、おぼこい感じで自信無さげ~に顔を寄せる。


「ウソじゃないなら、証明して」


「いいだろう」


男があたしの唇を吸い、脱がしながら圧し掛かってくる。




机の高さは丁度良かった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る