冒ギル2

そう、あたしは美少女。


カウンターの向こうで倒れ、おそらく痙攣しているであろう(見えないから)女性職員がめたくそ発狂するくらいの。


それはまあとにかく、ドラゴンの死体を換金しなきゃ。


この騒ぎにも微動だにせず、カウンターにヒジをつき芋虫のような手でありあまる頬の肉をぶちゅっとつぶし吹きさらしの屋外に視線を投げている。


通りを歩く人々を目で追っているようだ。



うーん、話しかけたくない・・・



もちろん差別感情だ。


霊長目て感情あたりの薬理制御バグってんじゃないの?てくらい敵対感情を発動させまくる気がする。サルでヒトでも・・・て、猿てヒト科だからカタカナでヒトて・・・



もちろん個人の感想です。

えいじろんぶんwとか探せばぼろぼろ出てくる気がするけど(無論ポリコレバイアスが強烈にかかっ・・・



「買取してくれる?」


うわ、固い声のヤな感じで切り出してしまった・・・


「ん?・・・ああ、可愛いお嬢さん。ここで出せる?」


うわー胴間声くぐもりつつも無駄にダンディバリトンだ・・・やばい。


「この建物三個分よりおおきいかも・・・さっ、ささささささささささ誘ってんじゃないのよ!ほんとにおっきいんだから!!」


自分で言っときながらおっきいと誘ってるの行間が不明すぎんだろ・・・どうしたの?!


膨張したカオ肉で中央に集められたパーツがおや?て感じに疑問を表情した後、ファニーな笑みに咲き誇る。


「はは、もちろんだとも。こんな体だからね、不相応な期待はしないよ」


ぐは!いま胸というか胃というか、てあたりがときゅん☆てきた!


どれ、と男はカウンターを軋ませながら立ち上がり、奥へ向かう隙間・・・対比でわからなかったが、奥の部屋の入口だ・・・へ身を捻じ込む。


「そこから出・・・入ってきてくれ」


切れたカウンターを指し、奥へと消えて行った。



くっ・・・スケコマのオーラを感じる・・・デ・・・D型のクセに!



Dの後を追うと、倉庫ぽい部屋だ。

書類・・・紙があんの?え??ハイテクじゃね???

でも平積みだし・・・下のってもう読めなくね??


Dは更に奥の部屋の出口へと身を押し込んでいる。

ずぼん、と音を立て抜けると、光が差し込んできた。


続いて抜けると、そこは吹きさらしの広大な更地だった。


は??


地平の向こうに山並みが見える。

関東平野か・・・


「おーい!ここで、むこーの方に出してくれ!」



Dが50メートルくらい向こうで叫んでいる。


向かいつつ、後ろを見ると入口・・・出口?の枠だけが立っていた。



「あの、ここってなんなんです?」


「ん?ああ、初めて見るのかな。うーん・・・マジックバックの家版、てところかな。入口にフダがかかってたろう」


「えー見て無かった・・・暗かったし」


「ほぉ、闇に強いと聞くけどな。そういうエルフもいるのか」


嫌味が無いなー・・・・・

あたしにというよりも、世界に対してのゆるやかで暖かい好意を感じる。


「まあ、出しちゃってよ」


「はーい」


胸に下げたポーチに手を入れ、しっぽ感のあるものを掴み、引く。


にんじんぽい何かが出た、と思ったら全身が現れるにつれそれは小さくなってゆき、恐竜の玩具的な大きさになってしまった・・・あれれ~?


「うわ、これは相当だね・・・置いたらすぐに退避しなきゃ」


「え?」


「投げて、走るよ!」


めたくそ必死に駆け去ってゆく。


ぽいっ、と放り、え~まじで?こんなんおもちゃから必死に逃げるてバカっぽくない?と不真面目に振り返り振り返りながら逃げてると、もりもりもり~~とデカいドラゴンが出現し、壁のように迫って来た。


「うわああああ!!!!!」


逃げる必要も無い気がするんだけど、追われると逃げちゃうじゃんね。


前を行く風船みたいなDを拾い持ち上げ、飛ぶように走る。


ドアの近くで振り返る。


巨大化はとまったようだ。


「あーーーびっくりしたあ・・・」


「いや、こちらこそびっくりしたよ。おろしてくれる?」


「あ、ごめん」


わすれてた。

風船(肉塊)を下ろすと、こちらを笑顔で振り返る。


「ふふ、ありがとう。親に肩車してもらった頃を思い出したよ」


うーん、いいなあ。

脳みその中で飛躍した妄想が始まる。


肉に埋まってご満悦のあたし。

おおらかに抱擁してくれるカレ。

(気持ちいいかい?)

(うん、あったかい・・・)

(そうかい。ふふ・・・じゃあ、そのうちにぼくも挟んでくれるかい?)

(え?・・・ああ、脚?)

(おっぱいさ。エルフだし、魔法でおっきくできるんだろう?)

(えっ・・・豊胸魔法・・・あ、あるかも・・・だけど)


「ふふ、期待してるよハニー。あせらなくてもいいんだk・・・」


「ああ、これは大きいね!さっそく査定しよう・・・どうしたんだい?」


いかん、妄想が脳漏れしてた。


「なんでもない、いってらっしゃい」


悲しみの作り笑顔で小首を傾げ、小さく両手を振る。

やべえ妄想の続きでぞっこんカレシに可愛く見せたいソーシャルモーションパッケージ(ながい)が自動発動してしまった・・・


「うん。けっこうかかると思うから、署の向かいにあるカフェ・・・なんて無いか、昼でも開いてる酒場があるから其処や宿で休んでくれてていいよ」


やべーそういやジェスチャー封印してたじゃん日常に悪意をばらまく政治的慣習を警戒する!なんつって・・・


「どれくらいかかりそう?」


聞くと、Dは妙な腕組み・・・あたしの背だと顔を隠したように見える・・・ちょっと間を開けて言った。





「明日また来てくれる?」


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