冒険者ギルド

文無しになったあたしは、しかしぱんつを履き取り戻した万全の自信によりそこそこ気分よく街を歩いていた。


匂いは、まあそこそこ・・・どこ行っても小便臭いなあ・・・程度に落ち着いている。


てゆーか魔法でなんとかならないのか・・・森深部のエグ味溢れるオーガニック(渋柿っぽい・・・あれ?今は口にする機会なんてないよね・・・)臭のが全然マシやぞ。


まほー・・・まほー・・・


やっぱエルフつったら魔法やよねん(何語


てゆかあたしのこの意味不明パワーとか絶対魔法的な物理キャンセル(摩擦と重量の理論というか式というか激しく無視してたし。たぶんあたしがバイク乗ったら絶対スリップダウソ()でこけないはず!)・・・なんだろう、常に発情して・・・発動してる感じの・・・プラセボ?プラセボスキル錯覚的技能??なのよきっと。


だからなんか今あたしがいい加減な魔法っぽい演技をすれば結果はついてきてくれるとおもうのよね・・・呪文とか?


「風の乙女よ、母なる森の清浄なる息吹でわが身を包み、不浄の瘴気から護り給え」


ふんわりと快い香りに包まれる。


おおお~~~快適!


髪をすいたり、服をはたいたりして不浄なる瘴気()を払い落す。


これはイイ魔法を見つけてしまった!でも呪文が長いわ・・・風息護・・・風護でいけないのかな。


魔法の発動を止める。


止めるのはもー歩くくらいの感覚、つまり説明できないくらい当然に出来る。


「カゼゴ~」


発現した!・・・切る。


「ウィンドプロテクション!」


ちょっと高めの、薄い歪を乗せたオーガに襲われて欲しい美少女エルフ1位の人(個人の感想です)の声を真似て息子が遊んでたファミコンのゲームキャラっぽく腹式呼吸でのたまう。


発現を確認。


やっぱカゼゴーより日本語発音英語のが魔法感があるな・・・


てゆうかこんだけいい加減ならいらなくない?



・・・あ、いらないわコレ。



オンオフ繰り返していると、悪臭と森臭の間隙をついて肉を焼く匂いが漂ってきた。


通りの屋台に目を向ければ何軒かで串焼きやケバブのようなものを売っている。



そいや転生して白いイケオジとえっちして以降なんも食ってないぞ・・・

串焼きのほうは何かの黒いタレに付けながら焼いている・・・じゅるり。


上の口に分泌物をこんな貯めるなんて・・・なんてはしたない!


そう、カネも無いのに食うべからず。


ううー別におなか減ってないけどタレで焼いた香ばしく塩気の利いた肉をもしゃもしゃ食ってビール飲みたい・・・


でも金・・・股開いて稼げないのか?・・・あ、そうだ無限ポーチにあるドラゴンの死体を換金すればよかったんだった。


これは定番イベントなハズだから、冒険者ギルドって互助会に持ち込めばいいハズ。


見渡せばそれっぽく剣盾などを佩いたり背負ったりしてるイケ男たちがワラワラいるではないか。


うへへ・・・


女のいない、男だけの集団を目指し、声をかける。


「もし、お強そうな方々。お訪ねしたいのですが」


「あーん?・・・ヒュッ、美人じゃねーか!」


顔に力を入れて赤みを作る。

カマがトトから出来てるなんてあたし知らないんだから!


「仕留めたモンスターなどのそざい・・・?を買い取ってくれる、私たちの互助会のようなトコロを探しているのですが、教えていただけません?」


「ああ・・・いいぜ、ついてきなよ」


どっきーん!


「まぁ、ご親切に・・・ありがとう存じますわ」


突いてき・・・付いてきな、と言った男に追従する私を、他の四人が包囲するように歩き始める。


(え・・・こんな裏道に?)(ああ・・・ここらでいいか。グヘヘ)(行きどまりでは・・・どこにもお店なんて、はっ?!)(信じてついてくるとはバカなおじょうちゃんだ)(そんなっ、はっ、はなして!)


「ここだぜ」


「そんな、五人もなん・・・え?」


横道つってもフツーに人通りのある通りに面した建物を男が指していた。


「じゃあな」


五人の男が去ってゆく。


ええ・・・何人かはめたくそ物欲しそうにあたしの体を見てるつーのに・・・行っちゃうの?



「・・・なぁ、あいつ絶対期待してたろ・・・いいのか?」


「ああ。ちょっとあからさますぎて・・・な」


「まぁ通り過ぎる度に未練がましい視線で脇道を見つめてたからな・・・」


「でもおれ、あいつとヤれるなら死んでもいい」


「おい、せめて次のダイヴが終わる迄は我慢してくれよ・・・似た安全な女探してやるから」




「おい嬢ちゃん、邪魔」


「あ、ごめ」


避ける。


横に長い系おじ達が出てゆく。


・・・うーん、やっぱみんな顔イイし、過信しちゃだめだな。

つーかまだ自分の顔見てない・・・ハァ、やっぱ街じゃそれほどってレベルなのよねえきっと。


案内された場所は大通りから引き込んだ中ほどの側道に面した開放的な造りで、なんかツイッターで流れてくるアメリカの警察署みたい。


カウンターのむこうにやる気を無くしたゾンビのようにだらりと座ってんのもアメ・・・それっぽい。


「ポリス?・・・ああ、只でドーナツ食ってコーヒー飲む職だ。喧嘩強くないとすぐ殺されるぞ?同僚にな。殉職がおおい、てなそういうコトよlolololol」


なんてのマンガで見た気がする。


ドーナツ屋やろっかな・・・


はぁ~~~~なんか乱交スカされてなんもやる気でなくなっちゃった。


やる気ない顔でこっちみてるカウンターのお姉さんへダラダラと向かう。


「あのー、ドラゴンの死体買い取ってください」


うんともすんとも言わず、右を差す。

見ると、カウンターの一番端に太った男性が座っている。


特に礼もいわずそちらへ向かう。


「ちょっとまった!」


?チップか?ないねんよ。


「あんた・・・すっごい美少女じゃん!どうしたの?!」


どうしたの、の主語とか目的語がわからん・・・


「え?そう??やっぱり???」


「うんうんうんうん、押し倒していい?」


「暗いトコじゃなきゃ・・・イ・ヤ☆」


「ギャアアアアアアあああああ!!!!!!!」


めたくそジャンプしながら叫んでる。

すげえ・・・これたぶん、この後血塗れで人間の部品齧るオークとかゴブリンに会っても全然平常心でいられるな・・・



こんなとこまでアメリカンなのかこの星・・・じゃなかった、街は。

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