城門前に雪崩れ出た汚物
大規模便所というよりも、持ち込まれるだけの汚物収集処理しない施設といった街の門には長蛇の列が出来ている。
パッと見城塞都市ぽいから、おそらく門は南北に配置されているのだろう。
なんか東西だと太陽が眩しいからダメとかいう理由を聞いたことがある。
頭おかしいのか・・・
なんかこっち側のカベって終日太陽が当たらないのでは?て感じに城壁は苔むしていて、門の両脇にはゴミや廃材が処理もされずに積みあがっている。
とりあえずイベントこなさねばという高邁な使命感により、クサ汚いおっさんの後ろに並んだ。
列が遅々と流れ、だんだん近づいてくる汚物を憂鬱に眺める。
なんで燃やさねーんだよ・・・ん?
ゴミと廃材じゃねーわ、人と家屋だよwwwww
「なぁ、ねーちゃんお貴族様とかじゃねーのか?」
前のクサ親父が話しかけてきた。
いきなり叫びながら突き入れてくる男ばっかだったからなんとなく新鮮。
しかし、皮脂をぶら下げたヒゲの間から覗く黄色い歯クソだらけの口臭は激烈で、匂いに慣れかけてきた今に置いてもあたしの鼻腔は刺殺死寸前のダメージを受けた。
「ごめん、ちょっと口の臭いがキツいの・・・魔法で奇麗にしていい?」
ひー、今までの無敵感から衛生観念方面からの人格を否定するような強気発言をしてしまった!!
「え?そんなひどいか?」
男は特に気を悪くする風でもなく、口をすぼめ長い鼻に向かって器用に息を送り始めた。
「そんなヒドくは・・・痛えっ!」
突然眉間を押さえ、呻く。
「こりゃひでえ、目に刺さったぞ・・・匂い消せるってなら魔法でもなんでもやってくれや」
あー、よかった。
「キレイになれ~・・・」
パタパタパタ
あっつーまにシュウッ!と白い(亜麻色?)トガとマントを頭巾のようにした黒くつややかなヒゲを伸ばした某創世記救世主伝説の主役ぽいイケメンが姿を現した。
おもわずカクーンとアゴが落ちる。
「ん?なんだよ・・・お、なんか全身が清々しいな。服まで新しくなってやがる」
うしろに並んだお姉さま方を向く。
お姉さま方も全員が全白眼で凝視している。
(ちょっと、この人めちゃかっこいいけどダレなの?偉い人?知ってる??)
(こんなイイ男しらないわよ、司祭様かしら?)
(いやー、こんなおっきな街じゃ司祭なんてあたしらみたいな老人だけさね)
(じゃあお貴族様?)
(あっ、そいえばあたし貴族かどうか聞かれた!)
(やっぱり・・・どーみてもそっちのお人だよねえ・・・ホウッ)
(あたし聞いてみる!)
「・・・あんたってここの貴族とか教会の偉い人だったりしない?」
「はっは、ンなワケねーだろw俺はとなりの街の服屋だよ。パドヴァの親戚に会いにきたんだ」
「フーン・・・いきなり臭いだなんて言ってごめんね?気ぃ悪くしてない??」
(まぁ、イケメンだったからって現金!)
(うっさいわね、女の性でしょ!)
(むべなるかな、というとこではある)
「ん?ああ、へヘッ・・・美女からいわれたんじゃ気になんねーよwクソガキに言われちゃ拳骨くらいはおとしたかもな」
「ウフ、そんじゃ今カガミあったらあたし殴られるかもしんないわねww」
後ろのお姉さま方と顔を目を合わせて笑いあう。
美男美女など相対的なもので、基準は自分の顔。
そして大概において自分顔の評価は割増どころか少なくとも3以上の整数倍である。
そんな自分の顔の社会的評価が上昇したと知れば、相対的に美は並に、ナミは醜に・・・とスライドしてゆく。
特に化粧しないであろう男は・・・いや、なにも言うまい。
ウチの息子も眉毛すら抜かないクセにテレビ内の女に言いたい放題だったしな・・・
「なんだよ、気になるな・・・カガミなんかなくても・・・おおい!衛兵さん!」
とつぜんデカい声で衛兵呼んでビビる。
なに?!やっぱ被害届出すの?!?!
がちゃがちゃと衛兵が走り寄って敬礼する。
「はっ!何用でありますか」
突然ハキハキと敬意を向けられた臭男あらため救世主おじがのけぞる。
「よ、よしてくれって冗談キツイぜ衛兵さん!」
「は。何処の御方でしょうか、身分をお示しください」
「隣町の服屋だよ!何回も来てんだろっ!」
衛兵のおにーさんは目を眇める。
「ん・・・おまえジェジェじゃねーか!なに小綺麗になってんだよ」
ジェジェ・・・んんん?????
ジョセフジョースターがジョジョ、ジューダスプリーストがジェップ、ジーザスクライストが・・・・・ジェイクか、全然関係なかったわ。
「ちょっと剣見せてくれよ、おれ今どーなってんのかわかんなくてさ」
「ばっかおめ、装備渡したりしたらクビだろ!抜いてやるから勝手に見ろよ」
金属がなめらかに滑る音を立て、おにーさんが抜剣する。
「んー・・・白くなっただけじゃね?別になんも・・・」
「あー・・・奥様の苦労が偲ばれるわね」
「俺は独身だぞ」
「ああ、なんとなく察したわ・・・」
清潔感無いといくら顔よくてもね、と共感をもとめ振り返った。
「ひいっ」
そこには獣じみた数十もの双眸がギラギラと情欲を滾せ、性のハンターと化した女達が犇めいて居た。
「あっ、お姉さま方、どうぞお先へ~・・・」
スルスルと列の後ろへと回る。
欲望に我を忘れたお姉さま方は
うーむ、無敵パワーは男の取り合いにはなんの役にもたたん・・・
いや、恋愛政治的に直接的な抹殺を決定されたときソレ全部潰せるんはすんごい大きいよやっぱ!
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