ゴッド道をゆく

とりあえず道を歩いている。


ただひたすらに。


ノーパンで。


つつしまやかに端っこのほうを。

しゃなりしゃなり・・・というワケにはいかんけど。


はじめは交通弱者最強伝説歩行者無双を今世でも実行すべく堂々と道の真ん中を歩いてたんだが、突然後ろからどけと怒鳴られた。


意地になって「轢き殺されたらお前がわ~るいwww」つってそのまま歩いてたら突如革袋いっぱいの血を浴びせられた挙句、木造家屋が鉄柱に激突したような破壊音とともに馬車が縦回転しながら前方へ墜落してくるを目撃するに至った。


その惨劇を前に、これはもう端歩くくらいはしょうがないかも・・・と譲歩を決めたのであった。


あ、どけつってきたおっさんは自分の馬車に潰されて少し変なカタチになっていた。


ザマァwww


しかし、温水シャワー聖女のしずく君でもなかなか血・・・よりもうんこ臭というか消化排泄物や消化酵素、尿の激臭などがまったく落ちず、これはもうすいませんでした堪忍してくださいと地球の裏側へ抜けるくらいまで深く反省したので端の端をあるくことにいくばくもの不満も皆無なのであった。


あ、初めにぶっかけられた血の詰まった革袋は激突させられた馬だったよ。



ちょっとかわいそうだったなと思わんでもなかったが、前世のパート歴に精肉工場があったりすんので心は岩盤の如く動かない。


いまあたしがこうしてノーパンで歩いてる間も、前世では食いもしない肉として縊られ、精肉された命がトン単位で次々と捨てられている。


あたしらがフッ、と気が向いたときにいつでも肉が安く食えるようにと、ただそれだけの為に。


感傷どころか、世の中の構造の恐ろしさに身が震えた。

ちな精肉なんでめたくそ寒かったし冷たい肉に体温を奪われ手は痛いくらいかじかみまくってた(軍手二枚+ビニール)。


期限切れだからとルビーのように美しく熟成された肉の塊がスライサーで雑に切られ、ポリバケツへと詰め込まれ廃棄されていく。

あの姿はいつでも、自分や家族へと差し替えられるものなのだ。


事実、死ぬ前に勃発した隣の大陸の戦争では両軍山のように人が死に続けていた。


プレスだけ追いかけ加算し続けてたいくつかのサイトだと、あたしが死ぬ前日あたりには両軍とも20万を超えてたし。


そいやアニメのバズーカ砲みたいなの持って集まった画像見て息子が戦慄してたな。


なんでも昔の戦争で懲罰大隊?とかいう死刑同然の罰ゲームみたいな兵科に与えられてた装備なんだそうな。


たけし・・・J( 'ー`)し


「はぁ、あの子野菜食わんからすぐ死ぬだろうな・・・」


最近はラーメン屋のタンメンも茹でっぱなしの野菜置くだけだし・・・


ん?古い皮脂でべったりと汚れた臭い人間の匂いが流れてきたぞ。



「ヒャッハー!女だァ!死ねっ!!」



え?


あたしのクビを薙ぐように振るわれた長刀は澄んだ高い音と共に停止し、振るった男は太い手首から妙な音を立て、刀を離して転んだ。


「ギャアアアア!!!痛ええぇえええ!!!!!」


あたしのクビの横で刀は止まったままだ。


え?なにコレ・・・


刃をつまんで引っ張ると、めたくそ耳にゾワゾワくる甲高い音を立てながらフツーに取れた。


なんだコレ・・・刀身の一部が何かに食いちぎられたようになってる。


髪の毛を撫でると、なんか付いてる。

やわらかい。


うわ、さっきのウマのうんこか?


ソーッと髪の毛を引き抜くと、さっきのキュイィイイイ~~~~~~~~!!!!!ていうゾワ音がする。


ああ、鉄・・・刀身かコレ・・・髪の毛に切断されたのか。


「返すわ」


ハナクソのように刀ごとクルクルと丸めて、男に投げる。


「熱ちぃいいいいい!!!!!!ぎゃああああああ!!!!!!!」


ああ、そうだった。

金属は危険なんだった・・・


丸めた刀を取り落とし、臭い男は腕を押さえ逃げ出す。


「だから女突いて逃げんなよ・・・」


追いすがり、蹴倒し、両大腿を踏み砕く。


男の絶叫が上がる。


「初産の痛みと同じらしいよwww」


グリグリと挫滅するほどに踏みにじる。


「あんた生まれたときかーちゃんに与えた痛みだ。よかったね味わえてさぁ」


・・・あ、失敗した。

コレ片足だけのが痛いんだよね・・・


男が自分の吐いたゲロに窒息しそうになりながら咽せ藻掻いている。


うーん、善き哉。


「美少女なんかに生まれ変わられたらムカつくし、首だけになっても死ねない魔法かけとくねwww」


白目剥いて痙攣する男を見ながら、気持ちよさそうだな・・・失敗かもなどと悩みつつ惜しみ惜しみその場を離れる。


しばらく歩くと、さっきの男と同じような匂いがふわぁ~と前方から漂ってきた。


ひょっとしてさっきの奴がたくさん集まって謝肉祭でもやっているのだろうか?


でも血の臭いは無いし・・・


特に脅威は感じないけど風呂入ってない人間にはあんま近寄りたくないんだよ。


想像に反し、前方からはフツーに人・旅人風て感じのやつらがぽつぽつ歩いてくるだけだった。

あと馬車。


なぜかみなあたしの顔をガン見してすれ違っていく。


鼻毛でも出てるのだろうか・・・


でも髪の毛とかクリーム色だし体毛は無色だろほとんど。


しかしどんどん匂いが強くなっていく。


河原や裏路地で浮浪者の寝床を発見してしまったような臭気。


すれ違う人間も増える。


みんな臭いww


小さな林を回り込んだ先に、突然城壁が現れた。


「げえー・・・ここが臭気の発生源か・・・・・・・」




垢じみた布と腐った小便のような暗黒の臭い。


「なにこの地獄のような大規模便所・・・」


それがこの世に暮らす人の巣穴だった。

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