善女
「どうか~俺の都合を先読みして~あと腐れなく~消えてくれないかぁあああ!」
あたしは今、松任島ゆきみのヒットシングル「善女」を歌いながらシャワーを浴びている。
小学生ん時これ聴いて以降、男が歌うお別れバラード聞くとこの歌詞を連想してしまう病にかかってしまった。
それは兎も角。
ちょい前に女の子に誰がゾンビちゃんやねん、こちとらゴッ・・・ハイエルフ様やぞー!つったら大層驚かれ、なぜか馬車から薄い金属板を取り出しあたしへと向けてきた。
細かい傷が蜘蛛の巣のように日の明かりに煌めく薄曇りの貧乏くさい鏡面に映し出されたのは腐乱死体のような・・・・・いや、見たことないけど・・・・・血泥にまみれ白髪を振り乱した不潔なゴブリンゾンビという有様だった。
なので入浴できる文化的な施設への緊急避難を要請したのだがその先が件の少女では如何ともし難く、仕方なしにゴッドパワーでなんとか出来ないか苦し紛れに温水シャワー専用召喚獣「聖女のしずく君」を召喚したらできてしまったので屋外にも関わらず素っ裸になり怒涛のシャワーを浴びている。
「あー、おねえちゃんちょっと!コッチ泥流れてくるからあっちいってー!!」
少女から緊急要請。
「ごめーん」
低い方へ足元のドロをぐっちゃぐっちゃ踏み散らしながら移動する。
またひざ下泥だらけだよ~・・・でもシャワーで即キレイキレイだし。
「あんたも浴びる~?!」
見た感じ生理がくるあたりて感じだし欲しいんじゃね、と雑に提案。
「うーん、おとーさん埋めたら考えるー!」
埋めるの?
「あーちょっとまっ・・・しずく君!ここ動いちゃダメよ?ちょっとまったー!」
どたべたと走ってゆくとゴッツ美男子(ヒゲ)がぐったりと地面に横たえられていた。
穴を掘る()女の子の肩に手を置き、尋ねる。
「ねえ・・・あなたお母さん欲しくない?」
「いらなーい」
ん?お父さんのお嫁さんになりたいパターンか?
ウッフッフ、じゃあ五年後あたりから勝負かけるか。
「イケメン生き返るべし!リザリザ~~~~」
ほっぺ~~~ん、と金管なんだか木管なんだかっつーラッパの煌びやかな音色が響き渡り、天から光の柱と白い羽根が降り注いでくる。
死体がふんわりと持ち上がり、光の環が弾けるとともに体は起き上がり、大地に足を付けた。
がらん、と木のスコップが石に当たる音に生き返ったヒゲ美男子がそちらを向く。
「・・・ゼッタ!」
女の子はゼッタちゃんか。
ゼッタて愛称?ロゼット、エリーゼ、ゼナイデ・・・わからん。
「・・・おとーしゃん!」
抱きしめられた女の子は涙で鼻を詰まらせながら父を呼び、抱擁を返した。
いやーよいことをした。
うんうんと頷き、お祝いにパーマネント無敵バフセットをフタリに掛け泥でゆるんだ土に何度かズルゴケしながらしずく君へ戻る。
体のドロを洗い流し、片足を洗い靴下・・・つっても伸縮編みでもなんでもない長い袋に足を通し、サンダルで縛る。
うーむ、靴下にサンダルとは・・・サンダルつったら素足にネイルだろなんとかならんのかコレ。
ゴッドパワーにより
足づくりを整えた片足を泥に降ろす。
ぐちゃー・・・
もう片足を整え、降ろす。
ぐちゃー・・・
しずく君を送還し、雑に濯いだだけの生乾きどころか水も切ってないワンピに体を通す。
え?ドコに置いてたのか、て?空中よくーちゅー。
空気の上。
濡れた服置けるなら空中に回廊作って泥回避できるだろって?
できるよ~wwwえい!
じゅわぁ~~!!!
十万の軍勢が天ぷらでも揚げ始めたのかと吃驚するほどのけたたましいジュワ音とともに光り輝く五メートルほどの通路が出現するが、あっつーまにあたしごと水蒸気に埋もれ見えなくなる。
自分が乗れるくらい高圧にすると、光って燃え始めるんだよ空気。
やばすぎる!!!
立ち昇ってく水蒸気の温度もヤバいんじゃないかな。
蒸し物がいっぱい作れたりして。
そーして周囲の水分子だか原子だかに電子を・・・あれ?電子て渡したらやばいんだっけ??
まー熱を渡して水蒸気にした分固めた空気の温度も下がりましてよ?てワケでサンダルが燃えずに歩ける・・・三百度以下くらい??・・・程になった空中回廊に泥まみれの足跡を残しながら乾いた付近まで歩いてゆく。
煙を掻き分け馬車が停まってたあたりにゆくと、なにもかもが忽然と姿を消していた。
ええええ・・・・・ぱんつくらいは売ってもらおうと思ってたのに・・・
つーかあの謎の金属板を見て以降、なにげにカガミを見たくて仕方ない。
コンビニあったら買わなきゃいかんな・・・メモも無いから憶えとくしかないかぁ。
つーかぱんつもパンストもコンビニで・・・
あれ?コンビニなくね???
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