倒れたカワラ屋根
清涼なそよかぜと、小鳥たちの声に目覚める。
かぐわしい森の香を胸いっぱいに吸い込み、からだを伸ばす。
「あ~~~めちゃくちゃスガスガしい!」
E型SEXは自律神経や脳内薬理作用を整頓し無敵の健康を術士に齎すというが、今極めてそんな感じってきもちよさだ。
つかやってねーよ吸われただけじゃんなんなんほんと。
前世で排卵日あたりに献血するとたまにスッキリしたし、ソレ系のアレなのだろうか。
フカフカの枯葉の吹き溜まりにうまく転がってたようで、冷えも痛みもまるで布団で寝たかのように皆無であった。
ああ、森が集めてくれたのかな。
森への感謝がじんわり体から溢れていく。
ふ、と目の前の遺物に気づく。
「・・・巾着?と・・・ポーチ??」
巾着の革ひもを開くと、金貨ぽいジャリ銭が詰まっていた。
気持ちよくしてくれた上にカネまで置いてゆくとは・・・なんという爽やかな男ぶり()だろう。
こーゆうのを
やばいな、こんな甲斐性ありすぎる男と出会ってばかりいると、前世のように「男ならもっと稼いでんだろ!カネださんかいオラオラ!!」なんて下衆な女へ増長してしまいそうで怖い。
そいや年上のおじさまとペアで食事するときのお会計二極議論、未解決問題があったけどこの異世界ではどーなんだろう。
ポーチのほうは、なんも入ってなかった。
首から下げ、谷間に降ろす。
絶壁だった・・・あとでコンビニかドラッグストア寄ってルナとか生理用品いれよ。
件の骨が坐していた木を撫でる。
「いい寝床をありがとう。またね」
ゴ・・・ハイネスなエルフらしく優雅な森の徘徊へと戻る。
しばらく歩くと2日くらいで徐々に細い木が増えてゆき杉林風の歩きやすい地形になってきた。
ただ、日の光が差し込むようにもなってきたせいが下生えもかなりうっそうとしてきている。
「しかしこんなにゅろっ、て両腕生足出してんのに葉やトゲで切ったり虫にさされたり、ての全然ないな・・・さすがゴッド系エルフ」
わさわさと草やツルを掻き分け進むようになった辺りで、赤い壁に突き当たった。
「なんだコレ・・・瓦か?」
瓦のカベとかさすが異世界、ミョーなもんがあるよ。
しかも右に向かって葺き下ろされ・・・葺き流し??ている。
・・・ああ、倒れた家の屋根か?
じゃあ逆に回れば屋根越えて迂回できるのか。
つーわけで瓦の重なりをたどってゆくと、どんどん小さく低くなってきて向こう側が覗けるようになってきた。
なんかカベというよりもトンネルのような建造物みたいだ。
天辺には鋸刃のような飾りが植えてある。
そのまま低くなる方向へと進んでゆくと、地を這うような風音が聞こえてきた。
ずぼぉ~~~~ヒュウッ・・・・・ずぼぉおおお~~~~・・・
ああ・・・これ、カワラじゃねーよ・・・
ウロコだよ鱗。
じゃあ、Uターンしよか。
ここは肚を据え撤退すべし!
五歩もあゆまぬうちに草木がまりまりと薙がれる音がし、なにか生温く生臭い息がうなじにかかってきた。
あああああ!!!うなじはダメなのおおおおおいやああああああ!!!!!!!!!
真夜中に山ン中をうるさく走り回る車がカーブの手前で立てるような音と共に大失禁しながらへたり込む。
ばちゅーん!という何かが激しく閉じたような音と共に世界が闇に閉ざされ、ちょうぬめぬめした熱い世界に閉じ込められた。
イボイボした物体が優しく股間及び全身をぬめぬめとマッサージしてくるけどエロい気分になるどころじゃあない。
食われてる、これはちょう強力にゴックン飲み込まれてしまってるよ!
ひいいいい!!!!!
あまりのパニックに手足を振り回しながら無暗矢鱈に足掻きまくる。
ぬめぬめの布団みたいのをブチブチと掻き分けるように泳ぎ、水風船みたいなデカい袋的な手応えのモノなんかもブチブチ破りながら必死に進む。
進んでんのか藻掻いてるだけなのか不安になったあたりで、パリッ!という手応えと共に明かりが見えた。
「外だぁああああ!!!ウッ・・・おろろろろ~~~~」
外に出た途端、吐いた。
竜(仮)の体液をめたくそ飲んでたぽい。
つーか振り向くと、出てきた穴からめたくそ血のようなナニカが間欠泉のように吹き出しまくっている。
体液まみれのぼったちで眺めてると、巨大なカラダは突然大きく震えて森に重低音の振動を響かせ、ピクリとも動かなくなった。
そろそろとその体が細くなっているほうへ歩いてゆく。
「・・・こ、これは・・・・・・しっぽか」
え、もうあっち行くのめんどくさーい!
尻尾の先を両手でかかえ、ひっぱってみると中身のない頭陀袋を引きずるようにずるずると動く。
が、竜(仮)の下の地面や木の根がえぐれちゃう。
ひっぱるあたしの足元は全然なんともないのに、変なの~~~~。
この屍体て、森的にどーなん?肥料になって嬉しかったりすんの??
問いかけると、ゆっくり腐れていく巨大な肉塊と、それに群がる虫や鳥獣、怪物群。
動物性たんぱく質の腐敗などで、その周囲で枯れたり腐ったりする植物たち。
そんなイメージがほわほわと浮かんできた。
うん、消したいわこの肉塊。
たしかテンプレ進行だとこれまでに四〇元ポケットのような保管アイテムをゲットしているハズ。
谷間・・・絶壁にぶら下がるポーチを開ける。
ま、コレのワケないわな・・・でもいちおう、右手でしっぽを掴み・・・触りながら入れ~、と念じると、肉塊が消えた。
一陣の風が吹く。
すんごー・・・ああ、ふわっ、と消えながら入るのね。
あんな巨大な体積のモノが一瞬で消えたらどんな爆音が出たんだろうと想像すると恐ろしい!
・・・でもゴッ・・・ハイソサイエティなエルフだし平気かな?
目に付く木々の損傷を癒しまわり一通りの掃除を終えると、森の外周、浅いエリアへむけて歩き出す。
そろそろヒトの生活圏だ。
・・・こわい!!!!
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