遺骨との遭遇

閉じなくなった脚でひーこら足元の悪い森を歩きつつ、10回くらい転んでからようやく回復魔法をつかうことを思いついた。


以後快調に道なき道を歩んでゆくと、枝の一つがあたしの頬をなぜた。

左奥の方の木が呼んでいる。


う~ん、スピリチュアル。


つーか、木からしたらあたしらのほうこそスピリチュアル生物だとか笑ってんじゃないの?


感情て、生き延びる動機みたいなもんだし木やウィルスにもあんじゃないかな。


もちろん薬理的な反応で化学的に感情を構築操作してゆく人間とは違う形だろうけど。


・・・あれ?したら感情じゃないじゃん。


つまり感情は植物によって実装された。


日の光と水と空気だけでは宇宙へと生命の枝を伸ばせない。

そんな理由で植物たちが作った分子ロボットの一番イマ~イ(西暦2024年において5~60代の死語彙)奴がアタシたちにんげ・・・あ、エルフじゃったわい。


そんな妄想はともかく、あたしを呼んだ木の根元に身元不明の人骨一そろいがキレイに座っていた。


うおーミステリアス!

盛り上がる謎と好奇心!!!!!


・・・ここにいるのが自分じゃなけりゃあ、ね。


ヤンキー座り(和便に座り込むような体勢。カカトは接地させる)でため息をつく。


どくろの眼窩があたしの広げた股間を責めるように見ているような気がする。


そういや履いてなかった・・・・・


閉じる。


死体相手にナニをやってんだか・・・


つーかあんな肉食ゴリラがいる森でよくこんなキレイに骨になれたよなこいつ。


つーかつーかあたしもよくこんな人骨の前に座り込んでられるよな。

やっぱ昨晩充分に白い種族系イケオジからの愛を補給してしまったから?


テンプレスタイルを貫くなら、ここで遺骨の持ち物漁って門番へのワイロや都市の入場料、保証金とかをせしめねばならない。


・・・いやいや、今更テンプレ追従はやばいかもしんない。

男子系虚構世界のお約束、ヒロインは清楚な処女でなければならない!を秒で逸脱してしまったからな。


この約束事を破ってしまった場合、そのヒロインには無残で凄惨な陵虐による死が待ち構えているのだ。


マヂ濡れる。



なんでHしただけでそんな悲劇的最後を迎えなきゃなんないんかね~。

・・・知的財産的な価値がズコーんと落ち込んじゃうからせめて主人公の正義の怒りを燃やす動機になっとけってか??


まぁヤリマンのフィギュアとかSSSRカードだとか購買層的に需要無さそーだし、仕方ないのかな。


どーでもいいけど。



とりあえずこの骨、鑑定だけして去ろう。


「いざ鑑定!ステータスオープン!」



人骨 Lv98 吸血鬼(祖霊)神???

名 ドン・ファン・ドノヴァン


近づく森の獣を捕え、血を啜り肉を貪る。

美女が大好物。




「えええええ!!!!!!」


おもわずのけぞり尻もちをついてしまう。

モンスターなの?!怖い!!!


骨がカラカラと動き出すとか見ただけで失神する自信あるわ。


目の前のどくろが高FPSで再生されるごとく滑らかにぬるりと頭を持ち上げ、左手の骨ばった()手の甲を向けてきた。


「ひぃいいいい!!!!!!!!!!!!」


無敵パワーとかそんなん関係なしにコエーよ!助けて!!


骨は向けてきた手の甲を数回パタパタと振り、再び朽ちた擬態に戻った。


は?


「え?なに??襲ってこないの????」


人骨はふたたびあたしに虚ろな眼窩を向けると、あたしの下の地面を指さし、首を数回横に振り、行け行けとでもいうようにふたたび手をぱっぱっ、と振って再度擬態へ戻った。


差されたまたぐらの地面を覗くと、昨晩散々充填されたブツが生臭くもどっちゃりと下りていた。



ああ、歩いてる間に全部出たと思ってたらまだ残ってたのか・・・


てゆうか、回復魔法で前後の穴のシマリも回復してしまい、それが予想外の保持へと繋がっているのだろう。



・・・ん?生理きたらどーすんだコレ・・・やばい、英語でナプキンてなんて言うんだっけ、つうかねーだろよ水分子を逃さないポリマー繊維とかさああああ!!



「や、やばいクラクラしてきた・・・あ、お邪魔しましたあ」


落ちたブツに土をかけ、骨に退去の挨拶を送る。

そしてあたしはその場を離れようとしたが、再び木から不満の解消を要請される。


えー、この骨どけてほしいのか・・・どーしよ。


「・・・あのー、骨さん。徘徊タイプにチェンジしません?」


チェンジ、て悪魔合体ゲームか。


勝手なコト言ってるよなあ、と自省しながらも骨の応答を待つ。


再びしゃがみ込む。

なんかココ、居心地がいい。


木や植物や虫なんかが、あたしが心地よいように風や空気、音や香りを整えてサービスしてくれてる感じがする。


骨から暗い波動が送られてきた。

映像にすると、とにかく美しい処女を吸って揉んで貪り食いたいらしい。


処女か・・・昨日までならあたしでも仮免合格できたんだけど・・・ん?器質的になら戻れるのでは?


男性諸賢にはとてもお伝え出来ない場所にユビを入れ、キュアキュアを掛ける。


うん、ばっちり再生してる。

しかしまたあのブッツリと膜を破られる痛みを味わうのか・・・前世じゃ全然痛くなかったのになあ。


「ガイコツさんおまた・・・ぎゃあああああああ!!!!!!!!!」


髑髏が全力で食いかかってきた。

ひいいいい!マジこえええええ!!!!!!


ガチンガチン、ミョーに固い音がしばらく続いたあと、髑髏はその暗い眼窩を悲し気にこちらへと向けた。


「え。あ・・・ごめん、その、どうしよ」


どーにかできんのかコレ。


ガイコツ好きになるとかムリっしょ・・・あ、そうだ。


「なんかこう、もっとジリジリとエロくさく襲ってみてくれない?」


そう、おぞましいガイコツに襲われる自分に欲情するのだ。

これは一人遊びの基本スタイルとして前世で確立された、高度な科学文明により深化を極めた高級な精神の作用を要求される極めて高度な超絶技法である。


いわゆる・・・そう、異世界チートってヤツだ。


イケそう!


人骨がカタカタ揺れながらあたしの足首を掴み、脚に骨ばった()手をゾワゾワ這わせながら這い上がってくる。


キタ!脳と背骨の下の方で発電始まった!!!!!


「いやっ・・・おぞましい、たすけてぇ・・・」


顔にまで這い上がってきた虚ろなドクロに顔を背けながら必殺()の泣きを発声すると、空けた首筋に氷の楔が打ち込まれたような激痛が走った。


同時に大量のナニカがあたしのカラダから引き出されてゆき、怒涛の快感が襲ってくる。

その押し寄せる波にあられもなく絶叫を繰り替えし、幾度となく果てを越えた。


自分のカタチがわかんなくなるくらいにまでぐでんぐでんにされ死にかけたナメクジのように土の上に転がっていると、秋風のように涼やかなイケボが耳をくすぐってきた。


「ありがとう。美しいひと・・・」


うひぃ~!


突然の美声による賛辞の追い打ちに、既に疲労により摩滅しているはずの快感中枢が爆裂。

ぐりん、と視界が暗転し、そのまま深い暗黒へと意識が沈んでいったのであった。


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