ゴッデス
「・・・一瞬オトコになれたのかと期待しちゃったじゃん」
ムネは無いが、ついてもいない。
スベスベの肌の手足が草色のワンピから長く伸びている。
「うーん、すごい・・・全身内股並みのスベスベもちもち質感!極上の玉肌じゃん。つかこんなぱんつ迫りすぎのミニはくなんて三十有余年ぶりか」
こどもみたいに華奢なスラリと伸びた手足。
細いけど、ふとももとかプリプリしてておいしそう。
「うへへへ・・・」
自分の脚ながらよだれが垂れてしまう。
視界のスミを、デカいゲジゲジがゾワゾワと通り過ぎて行った。
全身も背筋からゾワゾワ~~~っと冷える。
恐る恐る周囲を見回す。
森だ。
めっちゃ森。
しかも暗い。
つか、明かりが無い。
でも見えまくる。なんなんコレ・・・
自分がぼおっと明るくて、周囲がなんとなくフワッと照らされる感じか。
手を伸ばすと、時間差でその周囲がもや~んと明るくなる。
ほんとなんなんなんなんなんコレ・・・
木が腐ったような匂いに包まれてるけど、特に不快感はない。
日が射さないのか、下生えはキノコっぽいやつくらいしかないけど、大木の根が波のように盛り上がりまくってて土が見えない。
「エルフだけに森スタートかぁ」
声もいいわ~儚げな透明感のある細い声に薄い衣擦れのような歪が掛ってて、マジ自分で耳にしても即自分で自分を押し倒してあんあんひぃひぃ泣かせたくなる欲求がムラムラしてきてヤバイ。
松任島ゆきみでも歌うか!
月明りがステージライトのように降りている太い切り株へ飛び乗り、くるりと回ってからゆっくりと歌い出す。
男女の妙を冶金になぞらえた詞の「鋼」という歌謡曲を、適当にカワイコぶった棒声で紡いでゆく。
「てっこーせきはあなた~♪こーくすはあたし~♪」
ヤバイ、つべでみた自分とは何の関係も無い結婚式の新婦のおやじが歌ってる映像が浮かんできて泣けてきてしまった。
ちなワシの結婚式んときは英語の歌のデュエットやったっけか懐い。
タイトルわからんけど北米のダンスミュージックでなぜか日本ではユーロビートつわれてたジャンルのやつだった。
突然、すう~~~っ、と景色が上昇する。
「うひ」
目の前で巨大な緑色のゴリラが口を開けていた。
夜目にもぬらりと光る黄色い犬歯があたしに迫ってくる。
ガチン☆ゴリュッ・・・「ブゥエアァアアア!!!」
突然のゴリラの絶叫の後、再び視界がヒュッ!と流れ、いつのまにかデカい木の幹に抱き着いていた。
「な、なななな」
なんなんほんと。
両手は手話のiLoveYouのカタチで前に伸ばしながらウタってた時のままだ。
カクカクと首を回して後ろを振り返ると、鮮血が噴き出る口を押えながらゴリラ氏が狂い悶えていた。
ひー
恐怖に腰が砕ける。
首だけじゃなく全身をカクカクさせながらなんとか木から離れ、逃げ出そうと後退った。
ゴリラと目が合うと、ヤツはゴアー!とか叫びながら怒涛の地響きを立て襲い掛かってきた。
ひー、走り方ゴリラじゃなくって人間みたいじゃん怖い!!!
めちゃくちゃデカい手がアタシに向かって振り降ろされる。
たぶん、落ちてくるコンテナとかに潰される瞬間てこんなんだろな・・・
ズバーーーーーん!
初めのズはいらなかったかもしれない。
バーンだよBANG。
かよわい女子に転生してしまったあたしだけじゃなく、たぶんプロレスラーなんかも硬直しちゃうくらいの爆音が森に轟いた。
足元の接地感が消え、フラッとへたり込んでしまう。
強い土の匂い。
ん??
ゴリラは確かにあたしのアタマに打ち下ろしたであろう握りしめた自分の手を、土や木の根の残骸をぼろぼろとこぼしながら見つめていた。
え?外れたの?
周囲を確認すると、何故かあたしはえぐられた地面に座り込んでいた。
あたしをすり抜けて地面だけえぐったの??
ゴリラの手を見る。
よく見ると、土や根の残骸がこぼれてるのは握りしめたコブシの甲からだった。
濡れたように白く光るのは、折れた中手骨か。
またも目が合ってしまう。
「えへへ・・・」
卑屈気に笑みを漏らしてしまうことを許して欲しい。いや、許されるだろうこんなん絶対。
しかしゴリラはくるり背を向けると、音を立てずにすいっ、と木立へと闇へ溶けるように消えてしまった。
なんだったんだ今のゴリラパフォーマンスは・・・
脚をガクガク砕けさせながら立ち上がると、再び切り株の上へと昇り座り込んだ。
カチン、と腰に下げられた何かが音を立てる。
「ん・・・剣?」
えー、踊ってる時とか気づかんかったぞなんだコレ。
ミニのワンピに上から革のコルセット巻いてんのなんか可笑しいと思ってたけどコレ、剣帯か。
しゃりん、と涼やかな音とともに剣を抜く。
う~~~ん、ファンタジーぽくなってきたな。
細い金属でつる草が象眼された剣鍔が美しい。
でもなんか、ハタキのように細く頼りない剣だ。
重さもなんか紙より軽い感じ。
振ると、タクトかなんかを振り回したときみたいに風切り音がする。
こんなんでモノ切れるんかしら・・・
細いけど、刀身は両刃になっている。
主婦的な刃物観で言わせてもらえば・・・って人斬り包丁はまた別よね。
あたしは切り株から降りると、比較的若い木から伸びた朽ちかけの枯れ枝にむけ振ってみた。
めたくそスパスパ斬れる。
「なにこれおもろーwww」
折れたり砕けたり、ではなく、抵抗も無くちくわぶを切るようにもろいであろう枯れ枝が切れていった。
興が乗りそれなりに太い幹まで薙いでしまった。
スカッ、と。
「え?」
ズン、と幹の切り口が地に落ち、こちらへと倒れてきた。
「あああああ!!!!!」
剣を捨て反射的に抑えてしまう。ムリだろ避けろよ!
このまま潰されてしまうとかなんてマヌケな死にざまだろう・・・
・・・全然倒れてこない。
ん?地面に刺さって安定したのかな?
「うひー!」
手を離すと、倒れてくる。
慌てて押さえると、その押さえた部位を支点にしてあたしのアタマの上に幹が落ちた。
めちゃくちゃドーン!て音が森に響いた。
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クレアボワイアンスは指輪とか他なろう作家様のせっチー(https://novel18.syosetu.com/n8321do/)の描写でイメージがストックされてるんですけど赤外線視認はググってもナイトビジョンとか見えない光投げてそれをキャッチする系しか出てこないので自分や体温高い奴らが松明になる感じでいこうと思いました。つーか受光部の目が温かいんだから見えないんじゃないのかひょっとして・・・
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