第四話:転生者の伝承

 モンローの一言に背筋が凍るブラン、一瞬ははぐらかそうと考えたが、もう言い訳ができない状態に陥ったことに気づき、仕方なく頷いた。

「それで私をどうするの?」

 転生者である自分が異端として嫌われることを恐れたが、モンローは彼女の肩をさすり、落ち着かせた。

「どうもこうもしないさ。お主が転生者だろうと、儂の孫であり、イルガの娘であることは代わりない。じゃが、少し気を付けなければいけないことがある。話をするから卓の前に座りなさい。」

 ブランとハンヌの二人はモンローたちと共に食卓を囲んだ。卓の上にはあらかじめ取っておいた宴の料理が備えてある。

「まず、お主から見てこの世界の在り方を教えてくれるかの。」

「中世の西洋…魔法や魔物という魔力の概念があって、魔導師や騎士、冒険者が職業として成り立って、私たちの村々は自然と隣り合わせで、帝国などの都会の文化は全体的に見ても私の前世よりも低いというか。」

「そうじゃな。お主から見ればそうじゃ。故にここに呼ばれたのかもしれぬな。」

「えっ? 呼ばれたって、理由があるの?」

 ブランの質問にモンローは深々と説明する。

 第一に、ブラン以外の転生者の存在はあらゆる口伝や文献にも存在している。

 中には魔王や邪神などの脅威に対抗する為に勇者や聖女として召喚される御伽噺が存在するが、それらより多いのは時代の転換点に現れ、知識を与える者として歴史に刻まれることだった。

 ある者は優れた技術を継承させ、文化を発展させた技術者や商人として、

 ある者は弱き小国を強き大国に導いた軍師や為政者として、

 この世界にとって、転生者の知識は莫大な恵みを齎すものだった。

 しかし、その知識を巡り、国同士の奪い合いに発展し、ある転生者は知識を引き出そうと拷問の末に衰弱したり、ある転生者は誰にも奪われないという野心を持つ王に飼い殺され、自由を奪われたという言い伝えもある。

 第二に、逆に転生者の知識は自身やその周りにも災いを齎すとされている。

 銃火器・細菌や劇薬などの自然外の毒・排他的危険思想は聖神教によって三代禁忌として指定封印され、転生者を見つけ次第、監禁や暗殺を辞さない一派がいるとされる。

 第一の前者はアダルマ帝國に、第二の後者はミスル聖王国によって狙われる可能性があるらしく、モンローやブランの両親はそのことを恐れ、我が子に対して心配をしたらしい。

「いいか、ブランよ。おぬしの叡智は周りに見せてはならぬぞ。」

「分かったわ、お婆ちゃん。」

 彼らが安堵すると、ブランは両親から抱き合われ、モンローは彼女の頭を撫でる。

「たとえあなたが遠き異世界の魂を持っても、マロンと同じく私たちの子供であることに変わりはないのよ。」

「むしろ、感謝してるんだ。自分の娘がこんなにも賢く、村のみんなの為に叡智を振るっているなんて、自慢の娘だ。」

「おぬしが村の為にしていることは素晴らしいことじゃ、そんなおぬしを帝國や聖王国に追い出す真似はせん。」

「お母さん、お父さん、お婆ちゃん。」

 ブランは涙目を浮かべながら、頬を赤くし、この世界に生まれたことを再び嬉しさを感じ、ハンヌも彼女に釣られて、微笑み返す。


 

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