第15話 ハピバな日

家に戻ると置きっぱにしていた携帯にミサトから着信が数件溜まっていた。

何かあったのかと思い僕は初めて自分から電話をかけた。

電話の着信音と共に『はい、もしもし』というミサトの声がした。

僕は話し方がわからず黙っていたら、向こうから声と共に大きく倒れる音がした。


ドスン。


『おい、ミサト何寝ぼけてる。数学の時間に何携帯いじってる。数学は大切なんだから、携帯しまいなさい』

『あっ、はい。えっと、切るボタンはえっと...切りました。すいません』


電話は切れていなかった。


切れていないまま机の中へ入れられた携帯から、僕はずっとその日の数学を携帯リモート風で聞いていた。

数学の時間が終わった後にミサトは携帯を見ると携帯電話が切れていないことに慌てふためき僕に言った。

『あっ、和馬だよね。数学の時間聞いてたよね。ごめん、切るつもりがスピーカーになってた。それで、どうしたの?』

僕は彼に病院に行ったことや久しぶりに外に出たことや母さんと仲直りできたことを話した。

すると、ミサトは暖かい口調で言った。

『なんだよ。良かったじゃん。俺、今日電話したのはさお前が今日ハピバだって、思ったからその連絡しようとしただけなんだ』

『ハピバってなに?』

『えっ? お前ハピバ知らないの? ハッピーバースデーの略だけど。俺だけが知ってる略語だよ。ハッピーバースデーは長いだろ。だから、ハピバ。ハピバな和馬に誕生日おめでとう。俺そろそろ次体育で移動しなきゃ行けないから、切るわ。帰りにケーキお前に渡すな。だから、その時は俺に顔見せてくれよ』

僕は電話口で照れ臭くなりながら言った。

『あぁ、ありがとう。ミサト。待ってるよ』

そして、電話を切った。


僕は思った。

ハピバ。

ハッピーバースデー。

ハピバな日か。


あいつらしい言葉の言い方で僕の誕生日を覚えてくれていた。

家族以外でそんな人がいることがとても嬉しかった。

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