第13話 初めて外に出たキッカケはメンタルクリニック

『宇治峰さん、聞いてるかな?』

そう言われて顔を上げると先生がいた。

学校の先生ではなくメンタルクリニックの先生だ。

僕は今日の朝、堪えきれなくなり朝方母さんに言った。

『母さん。ぼ、ぼく病院に行きたい』

母さんは慌てた様子で、僕に言った。

『どうしたの? そんなに汗びっしょりでとりあえずシャワー浴びてきなさい。お母さんが診てくれる病院探しておくから』

それから、シャワーを浴びた後に久しぶりに大量の汗と大量の涙をシャワーと共に流れていった。

そして、帽子を深く被りイヤホンをしてマスクをして、母さんの運転で幸い診てくれるメンタルクリニックに着いた。

母さんは僕のそばにずっと居てくれた。

問診票を書こうとすると、久しぶりのライティングは指先が上手く動かせず、30分ぐらい時間がかかりやっと受付の人に問診票を渡せた。

それから、30分か1時間ほどで先生がひょっこり出てきて『宇治峰さん』と呼ばれた。

苗字で呼ばれるのは3ヶ月ぶりだろうか。

診察室では母が事情を説明してくれた。

すると、医師は僕を見て言った。


『よくがんばって外に出てこれたね。すごく頑張ったんだね。すごいよ。外に出るのは勇気がいるよね』


僕はそんな言葉を待っていたわけでもないのに、なのになんで心の中がグジュグジュグサグサ心に涙が溜まっていくみたいに心が苦しいんだろう。


そんな僕を見て先生は言った。

『宇治峰さん、聞いてるかな?』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る