第10話 言葉のトレンド
『ミサト、宇治峰さんがクラスLINE抜けたの知ってるか?』
俺は知らなくて突然すぎて大きな声で『えっ?』と出てしまった。
すると、ミサトの友人は半笑いで話し始めた。
『あいつ、元々変だったじゃん。この前っていうか突然俺らの会話に入ってきたりとか、突然説教じみたこと言ったりとかマジで意味わかんねえって思ってたけど、マジでグループLINE抜けてくれて清々したよ。今も学校来てないし、このまま学校辞めてくれた方が楽じゃね。ミサトもそう思うよな?』
俺はそいつから出る言葉の節々に感じられる悪意に満ちた言い方になんで、人を傷つける能力しか脳にないのだろうと思いながら、冷静さを保つことが出来ず思いっきり彼の顔を殴ってしまった。
彼を殴ると同時に拳には彼の痛みと俺の悲しみが合わさったような鈍い音が教室中に響き渡った。
女子は悲鳴を上げて、男子は唖然としてその場から動け無さそうだった。
痛みを受けたミサトの友達は何が起きているか分からず口元から流れ出る血で余計に混乱して、俺を見て怖がっていた。
俺は拳の痛みよりも1番の大切な友人への悪口を許すことは出来なかった。
そして、声を大きくして言った。
『誰もあいつの宇治峰和馬の気持ちをわかっちゃいない。あいつは学校へ行けない理由も分からず、1人で苦しんでる。なのに、お前はあいつのことを笑い者にして、楽しんでる。生きてて悲しくて苦しいやつにお前は自分の楽しみのオモチャにして、そんなに楽しいか?』
俺は殴った相手に何も言わずに手を差し出して言った。
『もし、また和馬の悪口言ったらその時はこんなものじゃ済まないからな。さっ、保健室行くぞ』
俺はそいつと一緒に保健室へと向かった。
周りの動きは時間が一時停止されたような感じで止まっていたが、ミサトが何事もなかったように時間は動き出した。
さっきの出来事が衝撃すぎて、教室の騒がしさはより一層大きくなり、それと同時に今まで言葉にすることもなかった【宇治峰和馬(うじみねかずま)】についても話すようになっていた。
それだけミサトの言葉は教室で一目置かれる言葉の奥に潜むトレンドのようなものだった。
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