第6話 電話が命綱

三里から来るプリントの溜まり具合を見て思うのは、勉強への焦りと僕のことを忘れているという失望感だろうか。

僕は高3。

当たり前の感覚からしたら進路を見据えて勉強するか就職するかのどちらかだろう。

それなのに今の僕は部屋で過ごすことが最高の選択肢だと思っている。

外に出て誰かと関わるなんて何も思ってない。

母さんはきっと外に出た僕の姿を夢に見ているのかもしれない。

だけど、今の僕にできるのはノイズキャンセリングの付いたイヤホンで毎日の生活をかき消して部屋の中で生活することでしか生きれない。

そんな悩みを抱えながら部屋で過ごしていると携帯から1本の電話が鳴った。


電話の相手はミサトだった。


僕はその電話に恐る恐る『もしもし』と言った。


すると三里は電話越しに明るい声で言った。

『もしもし、三里だけど。LINEの返信ありがと。それでな、話がある。きっと、外には出られないと思うから、お前のマンションの下に今いるんだけど、降りてこれないことも知ってる。用件はない。だけど、話したかった。明日も話していいか?』

僕は彼の押しにやられて言ってしまった。

『....うん。いいよ』

なぜか分からないけど彼と話すだけで今まで苦しかった心の奥の何かが砕けるような感覚があった。

彼の用件なしの言葉が僕の何かを変えてくれる気がした。

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