第5話 友人から見た彼について。

あいつが学校に来なくなってから、3ヶ月が経った。

俺はあいつの席の後ろに座ってる三里 幸也【みさと ゆきや】だ。

あいつはいつも真面目で冗談を真っ直ぐ受け止めることもあって、どこか他のやつとは違う生き方をしているやつだと周りは思っている様だったけど、俺からしたらかっこいい生き様だと思ってた。

それをあいつも気にしていたのかよく俺に悩みを話してくれた。

彼の言う悩みは主に人間関係だったけど、あいつに言えることはそんなこと普通だろって思うことばかりで、きっと俺の回答は当てになってなかっただろうな。


『幸也、僕悩みがあるんだ。聞いてくれるか?』

俺は即座に返事をして言った。

『あぁ、なんだよ。悩みって』

『実は僕、学校辞めようと思うんだ。なんていうか学校でいじめられてるとかそういうんじゃないけど、僕は他の人のように普通に生きられないんだ。空気も読めないし、冗談も分からない』

俺は和馬が言ってることがその時は冗談だと思ってた。

だから、適当な返事をしてしまったことを今では後悔している。


『なあ、和馬。お前、それ嘘だろ。もう高校3年だし、将来のこと考えたら辞めるとかアホだろ。それに、お前のこと俺は一度も変だとは思わねえよ。むしろかっこいいやつだって思ってるよ。なあ、悩みは沢山あるかも知れねえけど、考え直せよ』

その言葉を聞いた和馬は言った。

『ごめん。やっぱり僕は変だよ』

その言葉が和馬との最後の会話になった。

俺は幾度となくあいつが休んでもプリントを届けたり、学校の勉強に遅れないように、ノートを写メしてLINEで送ったりもした。

だけど、あいつのLINEは未読スルーのままだった。

それでも、あいつとの縁が切れないように俺はあいつに毎日LINEを送り続けた。

すると、最近になってあいつから4文字のLINEが来た。


『生きてる』


それは、俺にとって和馬に届いた思いの奇跡だと思った。

まだ、学校には来れないあいつからのLINEはこれから先の縁と縁の結び目に過ぎない。

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