第3話 生きるのは難しい。
引きこもりになってから朝が怖くなった。
夜は外をあまり見ないから夜の光は電灯や車のライトぐらいだろう。
だけど、朝は騒がしい。
子供たちの甲高い声に朝がはじまるように歩く足音が僕にとっては痛々しい朝の忙しさだ。
だから、僕はマンションの一室で頭から布団を被りうずくまるようにして、じっと朝が過ぎるのを待っている。
母さんはそんな僕の姿を見て、朝の景色を無理やり見させようとはせずにドアの前にいつもと変わらぬ朝ごはんのおにぎりとお茶を置いて、仕事に行く。
母親が外に出る時の靴と扉の音を聞いて、じっと外に出るのを待った後に、外に出た瞬間に扉の前のおにぎりを食べる。
きっとこの姿を母親が見たら、困り顔で悩ましいひと言で僕に引きこもりの理由を押し付けるように文句を吐くのだろうか。
最近言われた痛々しい文句は『あんたそのままでいいの?』だ。
僕にとってはそのままで良くないことすら知っている。
知っているけど、携帯で『朝 学校 苦手』で検索して出てくるのは大体病気か不登校のサイトに繋がるだけだ。
最近はこの部屋の一室で悶々と考えるのは学校への入り方の練習ばかりだ。
学校に行かなくなって3ヶ月たった頃に母親は僕に1枚の手紙を部屋の扉の1センチほどの隙間から入れてきた。
そこにはつらつらと僕への怒りと焦燥感に満ち溢れた将来への不安が書いてあった。
僕はその手紙に返事を書いた。
『お母さんへ。僕は変なんです。その変が学校に馴染めることも出来ず、将来的に考えて何かを変えなければ僕は一生孤独と共に生きることになるんです。僕はお母さんの望む人生さえ、無理なんです。理解してください』
その手紙を書いてから日が経ったある日。
お母さんは悩み抜いた末に本を買って、熟読しているようだった。
お母さんとはシャワーとトイレの時以外顔を合わせないが、リビングのテーブルには沢山の子育てについての本や発達障害についての本などが並んでいた。
お母さんは僕の手紙に何を感じていたのだろう。
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