第2話 コンサルは来ん猿ばかり

 模手内は薔薇の紳士病院にやってきた。

「黒島先生に紹介したい人がいるんだけど」

「初めまして、医療コンサルタントの矢部英太(やべえいた)です」

 矢部は自己紹介をした。

「ちっ、女性患者じゃねーじゃん」

「医療コンサルタントなら患者を集めるノウハウを持っていそうだから、連れて来たんだよ」

「コンサルか……」

 黒島は1年前のことを思い出す。

 

 黒島は医療コンサルタントからアドバイスをもらおうと電話をかけた。

「はい、医療コンサルタントの白井(しらい)です」

「黒島というものだが……」

「電波が悪い状態です」

「演技バレてるぞ」

 電話が切れた。黒島はため息をついた。違うコンサルタントに電話をかけた。

「はい、医療コンサルタントの白木(しらき)です」

「黒島というものだが……」

「ガイコクゴワカリマセン」

「嘘をつくな」

 電話が切れた。黒島は腹を立てた。次でコンサルに頼むのを最後にしてやると黒島は決意し、電話をかけた。

「はい、医療コンサルタントの白石(しらいし)です」

「黒島というものだが……」

「申し訳ありません。神様のお告げで名前に『黒』がつく方と仕事を禁止されています」

 黒島は呆然とした。黒島は暴力団組長の息子ということが 広く知れ渡っている。なので、協力してくれる医療コンサルタントはなかなか現れなかった。


 黒島は矢部に質問する。

「俺が暴力団組長の息子と知ったら、お前も逃げるのか?」

「そんなことはありません。黒島先生はラッキーなお方です」

「どうしてラッキーなんだ」

「黒島先生は私の1番目のお客様だからです」

「実績ゼロじゃねーか」

「私と契約を結ぶ場合は顧問料月額100万円をいただきます」

「相場より高すぎますね」

 本多は驚いた。本多は矢部に尋ねる。

「何が100万の価値があるのでしょうか?」

「私は彼女も友達もいませんし、趣味もないのでいつでも仕事ができます」

「それだけですか?」

「受付から掃除など全自動やってくれるロボットを導入できます」

 黒島が割り込む。

「ウチはいらん。黒島組の連中がタダで働いてくれる」

 本多がまた矢部に尋ねる。

「他に強みでもあるのでしょうか?」

「薔薇の紳士病院以外とは契約しません」

「他の医療機関と契約する自信がないだけですよね」

矢部は本多に図星をつかれた。

 黒島は提案する。

「顧問料なしで触診できた女性人数×1万円払うという契約でどうだ?」

 つまり触診できた女性が1ヶ月に100人を超えれば 、黒島が出した案の方が矢部が最初に出した案よりも矢部にとって有利になる。矢部は黒島の案を喜んで受け入れた。

 矢部は話題を変える。

 「黒島先生は、当病院をどんな病院にしたいですか?」

 「女性患者に長く過ごしてもらえる病院」

 病院の目的としておかしいと本多は思ったが、口には出さなかった。

 「それでしたら、病院名を変えましょう」

 「なぜだ?」

 黒島は怒った。

 「『薔薇の紳士病院』だと、『ばらばら死体病院』や『ばらばら死ぬし病院』と勘違いされます」

 本多が矢部の味方をする。

「鹿間がヤクザの息子と先生を紹介してしまったので、このコンサルタントの言い分もわかります」 

 黒島は矢部に対して凄む。 

「薔薇の花言葉をせっかく調べたんだから『薔薇』という文字は使え」

「承知しました。『豚バラレンチン病院』というのはどうでしょうか?」

「はあ」

「『バラ』という文字は入っていますし、個性的な名前ですし、配り終えたチラシに書いてありますし」

矢部は豚バラレンチン病院のチラシを黒島にみせた。

本多はまた矢部の味方をする。

「黒島先生の怖いイメージを払拭するには良い名前だと思います」

黒島は矢部と鹿間と本多に話す。

「とりあえず『豚バラレンチン病院』を採用する。女性患者の評判が悪ければ、すぐに『薔薇の紳士病院』に戻し……お前ら3人コンクリート詰めだ」

 矢部と鹿間と本多は、びくびくしながらコンクリートで身動き取れない状態を想像している。

「オレは薔薇じゃなくて『豚バラレンチン病院』に反対です。患者が豚バラで、電子レンジで治療している病院みたいじゃないですか」

 鹿間が訴えた。黒島が鹿間のほうを向いてキレる。

「お前が最初に『豚バラレンチン病院』って言ったんだろうが!」

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