第3話 初めての美人患者

「模手内さんの紹介で来ました」

 過零子(すぐるれいこ)という美女が豚バラレンチン病院へやってきた。

「どこか悪いですか?それとも人間ドックを受けますか?」

 黒島は敏子に丁寧に応対した。

「患者は私ではなくて……」

 零子はスマホを取り出して黒島に見せた。

「患者は私の妹で、過敏子(すぐるとしこ)といいます」

 スマホ越しの敏子も姉と似て美人だ。

「私は触覚過敏と聴覚過敏に悩まされています」

 敏子は悲しい顔をする。敏子は触覚過敏のせいで、肌心地の良い物しか身につけられない状態になってしまっている。聴覚過敏のせいで、健康な人が大したことないと感じる音の種類や音量でも辛く感じてしまう。

 黒島が敏子に提案する。

「耳栓使ってみたらいかがですか?」

「耳の中が痛くなったから嫌です」

「ヘッドホンは?」

「頭が痛くなったから嫌です」

「感覚過敏を和らげる薬を処方しましょうか?」

「薬は不安だから嫌です」

「コイツ……モンスターペイうぐっ」

 鹿間が敏子のことをモンスターペイシェント言おうとしたが、黒島に口を塞がれた。

「今、モンスターペイシェントって言おうとしましたよね」

 敏子が怒った。

「いやいやモンスターペイっといってモンスターハンターに課金することですよ」

 黒島が嘘をついた。黒島が鹿間に囁く。

「余計なことを言うなよ」

 黒島は敏子に向かって言う。

「薬も既存の道具もダメなら新しい道具も作りましょう」

 鹿間が黒島に尋ねる。

「どうやって作るんですか?」

「それを考えるのがお前ら2人の仕事だろ」

 黒島は鹿間と本多に向かって言った。

 本多と鹿間はよく考えていた。鹿間はうっかり眠ってしまい、黒島に殴られた。本多は思いついた。

「ヘッドホンの耳当てをつなぐ部分の長さを調節できるようにすれば、頭痛が起きないと思います」

「それはいいですね」

 敏子は喜んだ。

 黒島は本多が思いついたヘッドホンを黒島組の若い連中に作らせた。


 1ヶ月経った。敏子はスマホ越しではなく豚バラレンチン病院に直接来た。

 黒島は敏子に尋ねた。

 「試作品のヘッドホンはいかがですか?」

 「とても快適です。でも、友達の結婚式に出たいんですけど、ヘッドホンしたままだと変に思われるし」

 「結婚式は諦うぐっ」

 鹿間が敏子に結婚式は諦めろよと言おうとしたが、黒島に口を塞がれた。

 「結婚式は諦めろよと言おうとしましたよね」

 敏子が怒った。

「いやいや、結婚式は秋が良いと言おうとしただけですよ」

 黒島が嘘をついた。黒島が鹿間に囁く。

「次、余計なことを言ったら殺す」

 耳が痛くならない耳栓を作ってみるということになった。まず3D対応のカメラで敏子の耳の中を撮った。3Dプリンターを使って、撮ったデータから耳の模型を作った。その模型の耳の穴に特殊な液体を流し込んだ。約1時間経って液体が固まったあと、型から出せば超柔らか耳栓が出来上がった。

 出来上がった耳栓を敏子は着けてみた。敏子は全く痛がらず、喜んでいた。

 黒島は笑顔で、敏子に言う。

「また何かあっても、何もなくてもこの病院に来てくださいね」

 敏子は突っ込む。

「何もなかったら病院に行かないよ」

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