第13話 全員で

見えるもの全てが透明になっていく。地面が透明に。その下の地盤が透明に。この星の内側らしきものが透明になっていく。その光景はあまりにも奇妙で目をつぶりたくなる。しかしまぶたも透明になってしまって意味がない。恐らくは催眠の類で脳をいじられているのだろう。これが奇跡…魔法の域を超えている…!…もう冷静に思考できない。…怖い…!世界が消えて…



この催眠…めっちゃ強いね。私は催眠に対する防御もかなりできる方だと思っていたけどこれはもう無理かな。ミトラちゃんたちはこれに耐えられそうにないから眠ってもらった。

「…厄介そうなのがいるな?多少は精神操作の心得があるようだ。先に殺しておくか」

バレた。ミラちゃん、ちょっと力を借りるよ。

「ドドドドドドドド!!!」

「くっ…!こんな弾幕どこから…」

「彼女らの脳を少しばかり操作してね!これならその奇跡も関係ないだろう?」

「もうほとんど見えないだろうに。この状態で魔法戦をしてやろうか?」

「望むところだよ…!」

「いいだろう。奇跡だけじゃないんだ。」

「ドシュ!」

ミラちゃんの魔力でシールドを…しまった!広くしすぎた!割れる!

「バリィィィン!!」

「………った!!!」

「使ったことのない仲間の魔法でいつまで戦えるかなぁ?」

「うるせぇ!!!」

「ドドドドドドドドドドド!!!」

当たらない…!エルちゃんの銃を使えばまだ精度は良くなるだろうけど取り回しが悪い。近距離なら弾幕のほうがいい。もう僅かな色彩の変化しか見えない。集中しろ…。

「そこ!」

「ドドドド!」

「くそ…近づけないな…」

………。距離を取ったな?一気に精神防御に力を回し、敵の位置を確認する。そして準備をする。

「銃+偉大なる神の魔力量+少しの闇…!」

火薬とは違う独特の発砲音。とんでもない量の光の魔力が銃身で圧縮され、足された闇の魔力と融合し、崩壊を携えて飛んでいく。魔法の弾丸は音速を超え、ソニックブームを起こすはずだが少しばかりの崩壊によって空気が消えて音は出なかった。

「………。」

「…今のは危なかった。死を感じたよ。当たらなかったけどね!!」

「くそ!!」

銃なんて使ったこともない!こんな集中できない状況で当てられるか!!これじゃいづれこっちが負ける!!

「ポルタさん。敵はどこですか?」

「エル!?起きたの!?」

エルちゃんが催眠を破り、重い銃を抱えてよろめいている私を支えている。

「私が撃ちます。ポルタさんはさっきの魔法をもう一度。」

「…うん!!」

ミラちゃんの魔力を…OK、まだまだ残ってるね。ミトラちゃんには崩壊で負担がかかる…許してね。銃はエルちゃんが。私がみんなを繋ぐんだ。

「頑張って見えるようにするから、その一瞬にお願い!」

「了解です。」

………。敵は…様子見してる。流石にさっきので怯んだ。今しかない。

「いくよ…!せーの!!!」

「…いた。」

再び発砲音。相変わらず飛んでいく音はないが、今回は着弾音がした。

「バリィン!!!!」

「…グハッ…!!!」

…!目が!見える!勝った!!!

エルがかっこよくボルトを操作する。

「着弾確認。ターゲットクリア。」

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