〜第39話 吸血鬼レイナの連合王国巡り①〜

ーーーエルフと人間の二人と別れてから数ヶ月が経ち、連合王国にも慣れてきた頃。

私は魔物狩りによってかなりの資金を蓄えていた。


「ーーー自作の魔導書もかなり消耗しょうもうしたし、そろそろ魔導書を買いえ買ようかしら?」


冒険者になってから気づいたことだが、どうやら私の魔法である「天位魔法」は威力が強すぎるらしい。


魔法を発動するたびに話題になるのはめんどくさいしーーーー昔の私なら姉の仇が噂を聞きつけて会えるかもしれないと考えただろうが、今の私では勝てないため注目されるのは控えたい。


そのため、魔導書を現在は使用している。

魔導書というのは本に様々な魔法陣が描かれていて、それに魔力を流し込めば発動できるという便利な物だ。

デメリットとして同じ魔法でも直接発動する方が威力に数倍の差が出るというのがあるが、私は新たに開発した聖霊魔法と神門魔法のいいとこ取り(威力は落ちる)の「神聖魔法」を魔導書に書き威力を維持することができたのだ。


ただ、この魔法ーーー魔導書の消耗が激しい。


「ーーーっと、ここが町1番の魔導書店ね」


ギルドから教えてもらった紹介状を片手に店に入ると、魔導書独特の匂いがした。


「いらっしゃい!ーーーって、子供?」


「むっ」


また子供と言われた。

やっぱり背が小さいからだろうか?

姉さんはかなり高身長だった気がするが、おそらく私が血をあまり飲んでいなかったからだろう。


高位の吸血鬼になると血にえるなどはなくなるのだが、いかんせん栄養が足りなくなる。


「お嬢さんここは魔導書店でな、本屋ではないんだよ」


「子供じゃないわ....ほら、ギルドからの紹介状」


「ギルドから?ーーーーーって、お嬢ちゃんその年で戦略級冒険者かい」


「‥‥‥一応、あなたより年長よ?」


「はははっ!んで?何が欲しいんだい?」


「作成用の魔導書をお願い」


「あいよ、予算はどのくらいで?」


「えっと....以前使っていた魔導書より丈夫なものが欲しいわ」


鞄から誰かから貰った魔導書を取り出して、そう注文する。


「ーーーお嬢さん、これかなりの高級モンですぜ」


「そうなの?」


「あぁーーーこれは特注品だな....それもかなり凄腕の魔術師を想定して作られているし.....表紙のマーク、これは教国ブランドだ」


「ーーーー教国」


確かに今思えば、あの女性は教国魔法師団の制服を着ていた気がするが....私が吸血鬼と気づかなかったのだろうか?


「ということは、これ以上丈夫な物はないの?」


「あるにはあるが.....高いぞ?」


「いくら?」


一応手持ちには白金貨1枚あるーーーーと思っていたら店主は申し訳なさそうに5本の指を立てた。


「ご、5白金貨?!」


魔導書の平均価格は50金貨なのでおそらく白金貨での数だろう。


「嬢ちゃん、いくら持ってるんだい?」


「い、1白金貨」


「......あと4枚か」


戦略級冒険者が1白金貨を稼ぐだけでも大金なのを知っているのだろう、申し訳なさそうに頭をふさぎ込んだ


「えっと....じゃあ、もう少し安いのをーー」


「ーーーそういえば自作用....だったよな?」


「えぇ」


そう返事をすると店主は本のページを数枚めくって魔法陣を確認し始めた


「ーーーー見たことない魔法陣だな....だが、十分に発動条件は満たしている」


「そうでしょう?」


そう言われると少し嬉しい。


神聖魔法を作るのにかなり時間がかかった。

それでも数ヶ月で出来たし、多分あのシア?って子の聖霊魔法を見たからだろう。

一応私が見た中でも1番綺麗な聖霊魔法だと思う。


「ーーー連合王国は魔法技術に国力を注いでいてな、魔法論文を発表しそれが認められると数十白金貨はくだらない」


「確かそうだったわね」


まぁ私が作った魔導書は確かに発動は出来るが、尋常じゃない魔力を込めないと発動しない。


「でだ、この魔導書を魔法論文にして発表してみないか?」


「発表.....」


なるほど、いい案ーーーーだけど、一つ問題がある。

それは魔法論文とは全ての魔法師、魔術師にも伝わるように書かないといけないことだ。


その何が問題かというと、私は自分の魔法を他人に教えるのが下手なことである。

どうしても「え、これじゃ伝わらないの?」になってしまうのである。


「発表は無理ね....私、人に教えるの下手だもの」


「そうかーーーーでは、こういうのはどうだろう?この魔導書をゆずってくれるのなら最高級の魔導書を10冊あげるというのは」


「それだと、あなたが損しない?」


「いや、それだけこれに価値があるってことだ」


「ふぅん....」


商売の才能なんてないからわからないけど、美味しい話ではないだろうか?


神聖魔法は全て覚えているし売ってもこちらからは大した痛手にはならない。

いや、教国の聖職者からもらった物を売るとバチがあたりそうだけど。


「わかったわ」


「よしゃっ、交渉成立だ」


店の人は右手でサムズアップをしながら、魔導書10冊を渡してきた。


「ーーそうだ、次来るのならもっと丈夫なものを仕入れておくから来てくれよな」


「わかったわ」


食事を必要としない私にとってお金の使い道は宿代なので、かなり良い取引ではないだろうか?


(白金貨も残ってるし今日は良い宿に泊まろっと)



そんなことを考えながら吸血鬼の少女はウキウキで店をでたのであるが......


この少女が何気に売った魔導書が後に、世界三大魔導書になるとは夢にも思わなかったのであるーーー



―――――――――――――――――


Q 何回も失踪しっそうするなんて夢にも思わなかったのである。


A 反省してください。

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