〜第36話 神門会にも普通の人はいる〜

「ッ!!エルアーーーーーー」


そうシアの呼び声が聞こえた後ーーーー真っ暗で静寂に静まり返った場所に転移した


「.............」


暗い.....と言うことは暗所に特化した魔物がいると言うことだ....つまり魔法で灯りを付けようがどちらにしろ敵にバレると言うことーーー


「ーーAh kleine heilige Geister, erleuchte meinen Wegーー{聖道}」


そう詠唱すると少しした後に、今いる道が明るくなった


「えっ、聖霊?!」


一緒に転移させられたからか、すぐそばにいたティそう驚いた声を上げた


「ティア、目を瞑れ!」


「えっ?!わ、わかりましたーー」


そういうティア....初めて表情が変わった気がするーーーーって今はそんな場合じゃない

まだ目が慣れないが、おそらくここにいる魔物は「ナイトメア」別名“彷徨う悪夢”

スキル幻覚により悪夢を見させて、相手の精神に直接攻撃をする者だ


「ーーGott, zerstöre das Böseーー{閃光}」


刹那、視界が真っ白になるが魔物の位置は覚えている


「ーー{聖剣召喚}」


そうして現れるーーー白と黒を基調とした美しい剣ーーー聖剣である


最近できる様になったのだが、神位魔法でも短縮詠唱が出来るらしい


「ーーSchau, das große Reich, das von den Göttern geschaffen wurdeーー{千年帝国}」


少し....いや、かなり長い詠唱を唱え終えたあと地面に聖剣を突き刺すと、辺りに衝撃波が生まれ、ナイトメアが煙の様に消滅した

これは聖女が使っていた{浄化}を神位魔法で再現してみたのだが....



『ーーーーー今更だが強いな、一応Aランクの魔物を瞬殺なんて』



「ティア大丈夫か?」


剣を召喚させた鞘に収めて座り込んでいるティアに駆け寄った


「ーーーっーーーーないーーーーーーーー私じゃ、ない!!」


「ーーー!」


もしかして取り憑かれていたのか?もうナイトメア自体は消滅しているから、余程酷い悪夢なのか、息が荒いし震えている


「ーー{浄化}ーー!!」


一応聖女が使っていた浄化をかけてみると、息が落ち着いて来た


「ーーーっ!え、エルア....様」


「お、落ち着け.......ナイトメア、悪夢を見せる魔物だ」


「.....そうでしたか....ごめんなさい」


「いや、俺こそすまない、もっと早く倒していれば」


「いえ、私の弱さです....」


「....他に異常は?」


「いえーーーーーその、何があったのか.....聞かないのですか?」


そう、ティアが暗い顔色で聞いて来た....おそらく聞いて欲しいのだろうか


「何があったんだ?」


「ーーーーその...私、エルフ族王女様の護衛騎士だったのですが.......誰かに裏切られて、濡れ衣でーーー」


奴隷にされた.....のだろう、それ以上言わせてはいけないと思い、いつに間にか抱きしめていた.....これは不倫じゃない....


「それ以上は言わなくていい.....事情はわかったーーー俺はティアを信じる......その、エルフ領につくまでは俺が守るから」


ーーーティアの濡れ衣を解決するーーーと言えなかった、それを言ってしまうとシアを裏切ってしまうから


「やっぱり、着いたら終わりなんですね」


「........ごめん」


「いえ、大丈夫です....シアさんのこと本当にお好きなんですね」


「あぁ」


「ーーー羨ましいです」


「え?」


「今のは忘れてください....それと肩を借りていいですか?」


「か、肩?別にいいけど....」


そう許可するとティアは頭を預けて来た

うっ....これは不倫ではない!カウンセリングだ、カウンセリング!


「ーーー落ち着きます」


そう安心している声が聞こえた.....


「......ティア....その従者の関係とはいえもう赤の他人じゃない、だからもし......エルフ領までに何かあったら....何もなくても頼ってくれ」


ーーーー今の俺にはこう言うことしか出来なかった


「あ、ありがとうございますーーーーそれと...いきなり抱きつかれるのは」


「ご、ごめん急に抱きしめたりしてーー」


「いえ、その..........勘違いしてしまいますので」


ーーーー少し気が緩んで安心し、泣いているところを見られたくないのか、ティアは下を向いてポツリと呟いた


「ーーーん?」


「な、なんでもありません」


耳の先まで赤くなっている....少しは前の隷属魔法の後遺症も治って来たかな?

それにしても陰謀か....エルフ領に着いたからと言って安心できるわけではなさそうだな


「......」


「......」


「ーーーーえ、エルア様じゃないですか!!」


少し気まずい雰囲気を感じた刹那、そう走りながらこちらへ向かってくる声が聞こえた


「ーーーっ.....捜索依頼が出ていた構成員か」


「は、はい!ーーーまさか、エルア様が来てくれたとは...」


「頼まれてな....依頼書通りBランク洞窟で失踪した構成員は一人ーーーーこれで依頼達成だ.....あとは地上へ戻るだけだが」


「了解です、それとお連れの方はシア様ですか?」


「..............ティアだ」


「......ティア様でしたか、申し訳ございません」


「ーーーそういえば、なぜ神門会がわざわざBランク洞窟に?」


「実は....この洞窟先日まではBランク洞窟だったのですが...災害級になってまして」


「ーー災害級だと?」



この世界の洞窟及び迷宮の脅威度を示すランクは、最も低いのがFランクでありAランクまで続きその上にSランクがある

ここまでが魔族がマスターを務めている場合のランクだ


ーーーそう、災害級の様にSランクよりも上のランクがある

脅威が低い順に災害級、厄災級、魔王級、邪神級だ.... このランクのマスターは上位魔族である、そのため災害級でも現れると各国の騎士団が動き出すほどである。


「はい、それで援軍を本部に要請するのをエルア様にお願いしたいのですが....」


「ーーーーーあぁ、わかったいいぞ....とりあえず地上に戻るか」


「はっ、かしこまりました」


「ティアもそれで大丈夫か?」


いつのまにか後ろに隠れているティアに聞くと無言で頷いた


「それでは一応私が先陣を切りますので」


ーーーーなんというか


「神門会にも普通の人はいるんだな」


「ーーーなにか?」


「いや、なにも」


うん、ちょっと感動している



―――――――――――――――――


Q 神門会にこんな人がいるなんて....本当に神門会か?!


A 怪しいですねー笑

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