〜第28話 魔法は便利です〜



Aランク洞窟を攻略した翌日、俺とシアは馬車で侯爵領から出て子爵領へと向かっていた


「うぅ〜、始祖魔法詠唱時の言語の認識は出来ましたが...覚えるなんて無理です」


まだ1日目なのだが、そう根をあげるシア......あとどうでもいいけどエルフに英語(始祖言語)を教えるってシュールすぎて笑ってしまう


まぁ、シアが嘆いているのも仕方ないのだろう

この大陸(?)にはこの1000年間言語は一つしかなく、一部の長寿種族が扱う始祖語は別としてほとんどの国、地域で言語が共通だった

そのため、シアは初めて別の言語を学んでいるのだ。抵抗の一つや二つあるだろう


「ーーそれにしてもエルアって始祖魔法も出来たんですね」


「あぁ、神位魔法と一緒に覚えさせられたな」


覚えさせられたというか神界に無理矢理、長居させられる口実で始祖魔法を覚えさせられた気がする....


「そのシンイ魔法ってエルアがいつも使っている魔法ですよね?私も使いたいです」


「ーーーいいけど、始祖魔法とは完全に別言語だし普通に難易度上がるよ?」


そう言うとシアはこの世の終わりのような顔をし、外の景色を眺め始めた


....本当は上級の聖霊魔法の方が良いのだろうが生憎、俺は聖霊魔法についてなにも知らないし使えない.....そう言えば200年前に何年か一緒にいたハイエルフが聖霊魔法に長けていた記憶があるのだが、エルフ領に着いたら探してみるか....


「お二人さん、もうすぐで子爵領に着きますぜ」


へへへ、と笑いをこぼしながら御者の人が報告してきた

ーーー今まで馬車なんて使ってなかったからわからなかったのだが、この世界の御者は大体こんな感じなのだろうか?

衛兵に見られたら、密輸疑惑をかけられそうだからやめてほしい


「いやぁー、それにしても雲が一つもなくていいですね...晴れてて血が騒ぎます!」


ーーー上を見上げるが今にも雨が降りそうな雲だった。


ーーーーーーーーあ、神門会の人だ

そう思うとキャラ濃いな


「ーーあ、見てください...検問所の前に馬車の行列が出来ていますよ」


そうシアが指差す方向を見ると街の前にある検問所に沢山の馬車が並んでいた


「ーー何かあったのか?」


「おや、お二人さん子爵領には初めて来たんですか?」


「そうですけど....」


「子爵領はですね、奴隷商がかなりいるのですが罪人奴隷を多く扱っているのですよ....それでこれは機密情報なのですが最近、王国と教国の関係が怪しくなってきましてね、帝国も罪人奴隷を徴兵しているのだとか...」


ーーーーーえ?そんな機密情報ペラペラと喋るなよ、情報管理大丈夫か?


「それと馬車が止まっているのはなんの関係が?」


「ーーー子爵領には現在、帝国軍の上層部が集まってるみたいですぜ...それでスパイなどを警戒して厳重に検問しているんでしょうなぁ、まぁ一般人には戦争が近いことさえ知れ渡ってないのですが....」


ーーーなるほど、なんとなくわかったぞ

本来奴隷に落ちるほどの罪とは国家反逆罪とかなのだが、神への信仰が厚い帝国では人殺しが最も思い罪となっている

つまりここで言う罪人奴隷はそういう経験がある奴隷が多いのだろうーーつまり兵にするには最適なのだ


「ところでなぜ教国と王国がーーー?」


「ーーそれはですね、全ては女神様の御意志なのですよ」


チラっと俺の方を見て答える御者....宗教勧誘でもしているつもりなのかな?


「戦争...ですか、魔族による侵攻もいつ再開するかわからないのに人間同士で争うなんて...大丈夫なのでしょうか?」


そうシアが心配そうに問いかける


「まぁ戦争になってもすぐ終わるでしょう...そんなに心配することでもありませんよ」


クリスマスまでには終わりますよ、とでも言ってそうな表情だ....まぁこの世界にクリスマスなどないのだが


ーーー実際、王国と教国が戦争をするのなら王国に勝ち目はないだろう

教国の兵士が来る前に大体の主要都市は神門会構成員が陥落させて終わりそうな気がする...それほど神門会は強いのだ


元々王国に雇われていた身からすれば思うところがないと言ったら嘘だが、あまりショックは受けていない、追放された見出しね

勇者パーティーに関しても聖女とかは教国側の人間だったし





「次の馬車!荷物検査のため荷物を下ろしてもらおうか!」


検査が回って来たと思い、荷物を取り出そうとするのだが御者の人に止められた


「ーー私たちは北の国から来たのですが...」


「ーーーそうでしたか、てっきり東の平原から来たのかと」


そう話し合うのが聞こえると検査なしに街の門が開きそのまま入った

ーーーー帝国も神門会に汚染されたか

どうでもいいが、今のやり取りかっこいいな



「ーー!エルア!あれなんの食べ物です?!」


馬車から降りたシアはそう目を輝かせて屋台にある干し肉?を指差した


「多分、保存食だろうな...なにかの干し肉だろう」


「お肉を干すって...腐らないんですか?」


そう言えばエルフは基本的に肉は数日以内に食べるのが主流だったか


「塩分が5%以上....いや、多分魔法によって腐らないんだろうな」


うーん、魔法って便利

なんでも魔法だからと言えば通せる気がする、しないけど


そういえばハイエルフの奴隷を買ったのもここだったな

あの時はエルフはてっきり肉を食べないものだと思っていたのだが、普通に食べてたのに驚いたっけ?懐かしい


「エルア!これ美味しいです!」


いつのまに買ったのか何かの肉を食べながら幸せそうな顔を浮かべているシア、かわいい


「それ魔物肉か」


「はい!エルアも食べてください!」


シアから魔物肉を受け取り、俺とシアは屋台をまわり始めるのだったーーーーー




―――――――――――――――――


Q 奴隷商ーーーなんか未来が読めて来たぞ?


A ご明察です


Q なるほど、ヒロインはシアオンリーなんですね


A はい?

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